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二十四話 異世界の絶望

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 応接室という部屋で閻魔、赤鬼、子鬼、犬神、ニエとシノガタが座る。
 パイプ椅子という種類の椅子と長机だけの簡素な部屋だ。
 子鬼たちが全員分のお茶を入れる。

「アタシはこの世界で死んだ、これはアタシの間違いが原因なの」
「間違い?」
「順を追って説明するわね」

 奈良時代、隣村で監禁されていた彼女。
ヘンリー・フィッシャーがタイムマシンでこの世界にやってきた。
ニエはこのタイムマシンで彼が元々いた異世界へと転送されたのだ。

 (ちょっときみ!? マスクも付けずにこんなところにいたら死んじゃうよ!!)
 
 異世界で女性に助けられた。彼女はロボットに乗って世界を旅していた。

「そこでアタシが見たのは――もう人間はほとんど生きてない世界」

 人がいなくなった跡は道路が整備されていない。
 元々道があった場所は激しく崩れて、ただの4輪をつけた車では通れない。
 そこで彼らは、狭い道やわずかな隙間であれば渡れるロボットを造ったのだ。

「異世界でロボットに乗って旅をした私たちは世界の真相を知ったの」

 毒の空気が蔓延してしまい世界の人口はあっという間に減ってしまった。
 治療薬を作ろうにも毒で犯され過ぎたこの世界。
 病気に気付いた時にはもう人類は3割しか生き残っていなかったのだ。

「で、アタシがいた時代へ帰るためのタイムマシンを探したわ」

 今の世界にいれば死んでしまう。そこで過去に行くことに決めたのだ。
 タイムマシンの研究所には、奈良時代の記録が大量に。
 そこには結婚して幸せそうなシノガタとニエの写真。

だが、世界を滅ぼした原因として記録が残っていたのだ。

「えっと、私の家族が世界を滅ぼすなんてことを?」
「……世界を滅ぼしたのは『病気』だよ、あの世界の家族はただ生きていただけ」
「でも病気って!! 母も治りましたよ!?」
「治ったと思っていた時に病気は虫がサナギになるように身を潜めただけだった」

 子孫へと受け疲れた病気の元は未来でついに羽化。
 テンダロスとも協力して過去へ戻り治療する薬を作ったりしようとした。
1年や2年どころか100年さかのぼっても、病気に対する特効薬が作れなかった。

 己の身体にも、この病気の元があったことに気付いたヘンリー・フィッシャー。
 さらには親や兄弟にも同じように存在している。
 これは長きに渡って引き継がれたものだ。


 過去を見る技術で奈良時代の日本にいた先祖が大元の病原体の発生源だと特定。
 人類が、いや生き物がすべて消えかけた世界を救うために、彼は過去へ。
 村で神様を名乗り二つの村を焼き払った。

「アタシはタイムマシンで過去に帰ろうとした、実際に帰れたんだけどね……」
「問題でも?」
「帰った時間と場所が支柱の崩れて潰れた洞窟でさ、壁の中に埋まったアタシは窒息死」

 すべて話を聞いて、彼に抱いていた愛情の正体が分かった。

「遠い孫を、私は愛していたのですね」
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