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二十話 犬神の家
しおりを挟む犬神さんはテンダロスで時間の妖怪。
だとしても野ざらしというのは気分が良くない。
何故か教師までひきつれて皆で家を買いに。
「令和にはこうして皆でクラスメイト家を選ぶのですか?」
「クラスメイトが野ざらしなことがまず無いっちゅーねん」
「私も虐待されているわけでもないのに生徒が野ざらしはちょっと――」
「先生も災難じゃったの」
「私が決めたことです」
今日の授業は先生の身の上話。
先生は元から現代の小学校の教員だった。
昔、子供が産めない身体と分かった日に前を向いた。なら子供たちにしてあげられることをしたい、だから教師の道。
『お父さんね、ずっとお酒のんでて――夜は家に入れなくて』
1人の生徒が両親に虐待されていたのが分かった、でも証拠がない。
ついに火をつけて両親と共に天国に行くと話すまだ幼い子。
未来を護る覚悟をきめて生徒の両親を殺害し、その時に反撃され先生は死亡した。
「ま、でも今日は悪い奴がいるってことでもないし、ちょっと家を借りようってだけだし!」
「ニエの言う通りやな」
「家はいっぱい借りておけば潜伏便利だよー」
「ライトの感覚だけは参考にしたらあかんで!?」
殺し屋をしていたライトさんはどうにも『普通』とはズレているらしい。
「ワシのおすすめは爆弾でも燃えない家じゃな」
「まずは当人の希望ですね」
「俺は本当に何でも……シノガタのいう通りにするだけだ」
そして私では今の家など分からないので相談したところ全員がきた。
先生も地獄いきの原因が原因なだけに生徒が野ざらしなのは嫌らしい。
家を売っている店では写真を色々。
『昔風の建物という規定があるオールドエデンですので、和風建築に絞られますね』
こうしてオールドエデンの家を見学に。
とても安い家があったが中が血の染みで汚れていた。
元々は拷問していた小屋らしい。
『人間であればおすすめしません――』
「人間やのーても嫌やないか?」
「俺は血ぐらい平気だ」
「生徒が野ざらしなのも嫌ですが、生徒の家が血の汚れでまみれているのも――嫌ですね」
「次じゃの」
こうして次に見学した家は、いわゆる現代風。
外見は古めかしいが中はベッドやガス、水道、水洗トイレ。
風呂にはないがお湯が上空から出せる物(シャワー)はある。
「ええやん、でも値段はちょっとするねんな――」
「お金は持っていたようですが」
「シノガタが困ることがないように集めておいた」
大金がふってきた、犬神の正体テンダロスは亜空間に物をしまえるらしい。
鬼もまたどこからともなく金棒を取り出すことができる。そのためテンダロスに限ったものでもなく誰も驚きはしなかったが金額には驚いた。
桁が違う、よくここまで集めた。
「何じゃ、そんなに持っとるんなら高級な家に住めるじゃろ!!」
「シノガタがこの家に住んでほしいというならこの家にする」
「どうするんじゃ!?」
「学校からも近いですし、ここは良さそうかなと」
「先生もここであれば安心です」
皆が帰ったあと、犬神はベッドではなく床で寝ていた。
眠るという表現はただしくない。
テンダロスに睡眠などという概念はそもそもない、人間のふりをしているだけだ。
「……もうじき、終わるのに」
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