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第七章 愛執編
鎖☆
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(わたしはなんのために、ここにいるのだろう……)
荒れ狂う嵐のようなマルスの行為に喘ぎながら、ファーリアは思った。
マルスに首を締められて、殺されるかと思った。実際、殺されても仕方ないのかもしれない、とも思った。
(でも、ここで死ぬなら――今までなんのために生きてきたの?)
他人の生命を奪ってまで、生きてきたのは。
(なんのために、生まれてきたの……?)
気がついたら、奴隷だった。自分は鎖に繋がれて生まれてきたんだと思った。幼い頃、自分は、鎖に繋がれていない人間たちとは違う生き物なのだと思っていた。
キャラバンから逃げて、口枷を外してもらい、はじめて自分の意思で喋った。自分も人間なのだと思った。
(――そうだ……わたしは)
ずっとずっと、ユーリに逢いたかったのだ。たぶん、出逢う前から。
自分を人間だと思わせてくれる存在に。
「――――あ!」
ひときわ深く、マルスがファーリアを突いて、ファーリアは声を上げた。
「その男が恋しいか?」
意地悪く言いながら、マルスは再び奥を突き上げる。
「あぅ!」
「残念だな。どんなに想っても、もう二度と逢うことは叶うまいに」
マルスの冷たすぎる声が、残酷にファーリアを打ちのめす。
「い……や……」
「いくらでも思い出すがいい。この先一生、私に抱かれながら」
「いや……あああ!」
マルスの怒張がファーリアの中を荒々しく掻き回す。
憎くて憎くて、許せなくて。
それでもどうしても殺せなくて。
憎しみと同じだけ、愛しくて。
「裸で塔に閉じ込めて、鍵をかけ、毎夜毎夜、償わせてやろう。一生かけて、その過ちを」
「いや……」
ファーリアは繰り返した。
「わたしは――わたしは、あなたの所有物ではない」
マルスはかっと頭に血が上った。
「貴様……恩義も忘れ、生意気に!」
バシン、と、マルスはファーリアの頬を張った。
「私が助けなければ、とっくに辺境伯に犯し殺されていたんだろうが!」
鎖に繋がれ、毎日からだを弄ばれて。
「あのときから、お前の生命は、私のものだ!二度と自由になどさせてやらぬ!」
「……あなたも同じだ、旦那様と」
ファーリアは静かに言った。頭の芯が、不思議なほど冷たく冴えていった。
「あなたは生まれながらに選ばれて玉座にいる。生まれながらに奴隷だったわたしの上に」
「なん……だと……?」
「王宮に来て、知った――奴隷も、兵士も、後宮の姫君も、この国の人間はみんなあなたの持ち物だ。あなたの隣にいたら、わたしもあなたの持ち物になってしまう。それが――怖くて」
「それで下賤の男を選んだとでも言うのか?そんな権利があるのか?そなたに?」
ファーリアは首を振った。
「その男がそなたに何を与えてやれるというのだ?私以上の、何を持っていると?」
ファーリアは再び首を振った。
「何も」
何も持っていないから、対等でいさせてくれる。だがそれを言ったとて、マルスには到底理解できないだろうと思えた。
「……わたしがアルヴィラからここに帰ってきたのは、死なないでほしいと思ったからだ。わたしはあなたにも、ユーリにも、死んでほしくない。戦ってほしくない。それだけ、あなたに言いたかった」
「――は!これは傑作だな!そなた、他人の生命の心配をしている場合か?」
マルスはガウンを羽織ると、寝所の扉を開け放った。
「ユーリ・アトゥイーを生け捕りにせよ!どれだけ兵を割いても構わん!私の前に引きずり出せ!!」
荒れ狂う嵐のようなマルスの行為に喘ぎながら、ファーリアは思った。
マルスに首を締められて、殺されるかと思った。実際、殺されても仕方ないのかもしれない、とも思った。
(でも、ここで死ぬなら――今までなんのために生きてきたの?)
他人の生命を奪ってまで、生きてきたのは。
(なんのために、生まれてきたの……?)
気がついたら、奴隷だった。自分は鎖に繋がれて生まれてきたんだと思った。幼い頃、自分は、鎖に繋がれていない人間たちとは違う生き物なのだと思っていた。
キャラバンから逃げて、口枷を外してもらい、はじめて自分の意思で喋った。自分も人間なのだと思った。
(――そうだ……わたしは)
ずっとずっと、ユーリに逢いたかったのだ。たぶん、出逢う前から。
自分を人間だと思わせてくれる存在に。
「――――あ!」
ひときわ深く、マルスがファーリアを突いて、ファーリアは声を上げた。
「その男が恋しいか?」
意地悪く言いながら、マルスは再び奥を突き上げる。
「あぅ!」
「残念だな。どんなに想っても、もう二度と逢うことは叶うまいに」
マルスの冷たすぎる声が、残酷にファーリアを打ちのめす。
「い……や……」
「いくらでも思い出すがいい。この先一生、私に抱かれながら」
「いや……あああ!」
マルスの怒張がファーリアの中を荒々しく掻き回す。
憎くて憎くて、許せなくて。
それでもどうしても殺せなくて。
憎しみと同じだけ、愛しくて。
「裸で塔に閉じ込めて、鍵をかけ、毎夜毎夜、償わせてやろう。一生かけて、その過ちを」
「いや……」
ファーリアは繰り返した。
「わたしは――わたしは、あなたの所有物ではない」
マルスはかっと頭に血が上った。
「貴様……恩義も忘れ、生意気に!」
バシン、と、マルスはファーリアの頬を張った。
「私が助けなければ、とっくに辺境伯に犯し殺されていたんだろうが!」
鎖に繋がれ、毎日からだを弄ばれて。
「あのときから、お前の生命は、私のものだ!二度と自由になどさせてやらぬ!」
「……あなたも同じだ、旦那様と」
ファーリアは静かに言った。頭の芯が、不思議なほど冷たく冴えていった。
「あなたは生まれながらに選ばれて玉座にいる。生まれながらに奴隷だったわたしの上に」
「なん……だと……?」
「王宮に来て、知った――奴隷も、兵士も、後宮の姫君も、この国の人間はみんなあなたの持ち物だ。あなたの隣にいたら、わたしもあなたの持ち物になってしまう。それが――怖くて」
「それで下賤の男を選んだとでも言うのか?そんな権利があるのか?そなたに?」
ファーリアは首を振った。
「その男がそなたに何を与えてやれるというのだ?私以上の、何を持っていると?」
ファーリアは再び首を振った。
「何も」
何も持っていないから、対等でいさせてくれる。だがそれを言ったとて、マルスには到底理解できないだろうと思えた。
「……わたしがアルヴィラからここに帰ってきたのは、死なないでほしいと思ったからだ。わたしはあなたにも、ユーリにも、死んでほしくない。戦ってほしくない。それだけ、あなたに言いたかった」
「――は!これは傑作だな!そなた、他人の生命の心配をしている場合か?」
マルスはガウンを羽織ると、寝所の扉を開け放った。
「ユーリ・アトゥイーを生け捕りにせよ!どれだけ兵を割いても構わん!私の前に引きずり出せ!!」
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