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第六章 アルナハブ編
バラドの姦計2
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「おい、あまり無茶するなよ。俺は気絶した女は抱けねぇんだ」
横から声がした。こちらも聞き覚えのある声だ。
「贅沢言うな。まあせいぜい殺しちまわないよう気をつけるよ」
「俺はてめぇの汁まみれの穴に突っ込むのも御免だぜ。外に出しやがれ」
また別の男が言う。
(四、……いや、六人だ)
アトゥイーは冷めきった頭で声を数えた。さっき一瞬気絶してる間に人が増えたらしい。男たちの中に、先程の兵士の声も確認する。
「うるせぇ。てめぇは口にでも突っ込んで待ってろ」
そう言われた男は、口笛をひとつ吹いて、アトゥイーの口の中の布を取り出した。
「……くはっ……」
むせ返ったアトゥイーの口が、男の唇で塞がれる。
「んっ……」
嫌悪感と共に、激しい怒りが湧いてくる。
(なんで、こんなやつに)
「――痛ってえ!噛みやがった!」
「気の強い女だ。魔羅も噛み切られるんじゃねぇのか!?」
ぎゃはははは、と、下品な笑いが起こる。
最初の男がアトゥイーのスボンを引き下ろそうと手を掛けた。
アトゥイーはその首に脚を絡ませ、ひと思いに捻った。
「ぐぶっ」
顔面から床に突っ込んだ男は、だが気絶はしなかった。
「……この女、舐めやがって――!」
縛られたままのアトゥイーは、床を転がって態勢を立て直し、立ち上がった。訓練で鍛えた体幹が、両手を封じられたままでも次々と蹴りを繰り出していく。
「足を縛られなくて助かった」
アトゥイーはさらりと言った。
「てめぇ!」
男が飛びかかるより早く、アトゥイーが叫んだ。
「エディ!」
「ぐふっ……」
部屋の外からくぐもった声が聞こえたかと思うと、バン!と扉が開き、エディ以下近衛兵たちが飛び込んでくる。数分前から隣室で様子を伺っていたのだ。扉の前には見張りの男が倒れていた。
賊は慌てて剣を構えたが、王国軍随一の精鋭の敵ではない。あっという間に全員拘束された。
「アトゥイー」
エディがアトゥイーに駆け寄り、マントを被せて縛っていた縄を切る。胸を見ないように顔を背けている。
「……もっと早く呼んでよ……なんで、こんな」
「ごめん、こいつらの仲間が全員揃うのを待っていたら、口を塞がれてしまった」
「こいつらはどうする?」
近衛兵の一人が言った。賊は既に全員拘束されている。
「僕らが王都に連れて帰るほどの手間はかけられない。ここの管轄の警備兵に引き渡して、王都へ送り返す」
エディが答えた。
「あーあ、可哀想に。ここで死んでおけばよかったと思うだろうね」
近衛兵たちは、マルスがどれだけアトゥイーを溺愛しているか知っている。
「くそっ……俺たちは、命令されてやっただけだ!」
陸軍の男の一人が咆えた。
「ああそうだろうさ。その命令したやつの名も、ゆっくり喋るといいよ。拷問官にね」
エディは夜の内に、市場に駐在している警備兵に賊を引き渡した。その中には共に来た陸軍兵士が三名含まれていた。残りはバラドの街で雇ったごろつきだった。
翌朝、馬を替え、残った二十九人でエクバターナを目指す。
「スカイ隊長に三十人は多いと言ったんだけど、まさかこういう減り方をするとはね」
エディが溜息をつく。
「ごめん、わたしのせいで」
「アトゥイーのせいじゃないだろ。変な気を遣うな」
横から声がした。こちらも聞き覚えのある声だ。
「贅沢言うな。まあせいぜい殺しちまわないよう気をつけるよ」
「俺はてめぇの汁まみれの穴に突っ込むのも御免だぜ。外に出しやがれ」
また別の男が言う。
(四、……いや、六人だ)
アトゥイーは冷めきった頭で声を数えた。さっき一瞬気絶してる間に人が増えたらしい。男たちの中に、先程の兵士の声も確認する。
「うるせぇ。てめぇは口にでも突っ込んで待ってろ」
そう言われた男は、口笛をひとつ吹いて、アトゥイーの口の中の布を取り出した。
「……くはっ……」
むせ返ったアトゥイーの口が、男の唇で塞がれる。
「んっ……」
嫌悪感と共に、激しい怒りが湧いてくる。
(なんで、こんなやつに)
「――痛ってえ!噛みやがった!」
「気の強い女だ。魔羅も噛み切られるんじゃねぇのか!?」
ぎゃはははは、と、下品な笑いが起こる。
最初の男がアトゥイーのスボンを引き下ろそうと手を掛けた。
アトゥイーはその首に脚を絡ませ、ひと思いに捻った。
「ぐぶっ」
顔面から床に突っ込んだ男は、だが気絶はしなかった。
「……この女、舐めやがって――!」
縛られたままのアトゥイーは、床を転がって態勢を立て直し、立ち上がった。訓練で鍛えた体幹が、両手を封じられたままでも次々と蹴りを繰り出していく。
「足を縛られなくて助かった」
アトゥイーはさらりと言った。
「てめぇ!」
男が飛びかかるより早く、アトゥイーが叫んだ。
「エディ!」
「ぐふっ……」
部屋の外からくぐもった声が聞こえたかと思うと、バン!と扉が開き、エディ以下近衛兵たちが飛び込んでくる。数分前から隣室で様子を伺っていたのだ。扉の前には見張りの男が倒れていた。
賊は慌てて剣を構えたが、王国軍随一の精鋭の敵ではない。あっという間に全員拘束された。
「アトゥイー」
エディがアトゥイーに駆け寄り、マントを被せて縛っていた縄を切る。胸を見ないように顔を背けている。
「……もっと早く呼んでよ……なんで、こんな」
「ごめん、こいつらの仲間が全員揃うのを待っていたら、口を塞がれてしまった」
「こいつらはどうする?」
近衛兵の一人が言った。賊は既に全員拘束されている。
「僕らが王都に連れて帰るほどの手間はかけられない。ここの管轄の警備兵に引き渡して、王都へ送り返す」
エディが答えた。
「あーあ、可哀想に。ここで死んでおけばよかったと思うだろうね」
近衛兵たちは、マルスがどれだけアトゥイーを溺愛しているか知っている。
「くそっ……俺たちは、命令されてやっただけだ!」
陸軍の男の一人が咆えた。
「ああそうだろうさ。その命令したやつの名も、ゆっくり喋るといいよ。拷問官にね」
エディは夜の内に、市場に駐在している警備兵に賊を引き渡した。その中には共に来た陸軍兵士が三名含まれていた。残りはバラドの街で雇ったごろつきだった。
翌朝、馬を替え、残った二十九人でエクバターナを目指す。
「スカイ隊長に三十人は多いと言ったんだけど、まさかこういう減り方をするとはね」
エディが溜息をつく。
「ごめん、わたしのせいで」
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