イシュラヴァール放浪記

道化の桃

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第三章 王宮編

後宮の夜☆

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「ん……っ、あ……ああ………」
 濃密な空気の室内に、潤んだ声が響く。
 なめらかな肌の上を、絹糸のような銀髪が撫でてゆく。舌先でねぶられた乳首が固く凝り、両脚が快感の逃げ場を探すようにわなないている。
「くぅ……んっ……」
 すかさず股の間に手を差し挟む。膝を使って、閉じようとする両脚を広げさせる。
「力を抜け、姫」
「あ……陛下……お許しを……」
 懇願の声には耳を貸さず、まだ固く閉じた花弁を指先で丹念になぞる。ぷくりと顔を出した小さな芯を摘むと、細い腰が弾かれたように浮いた。その瞬間を見逃さず、つぷり、と狭い穴に指先を挿れると、全身が硬直して侵入者を締め出そうとする。
 抱かれているのは後宮の姫の一人だ。処女で後宮に入ったばかり、まだ十五~六か。
「力を抜け」
 再び王が言う。
「悪いようにはせん。身を委ねてみよ」
 姫は恐る恐る、丁寧な愛撫に身を任せ、ゆっくりと身体を弛緩させていった。
 やがて指を挿し入れられた膣が、じゅぷじゅぷと淫猥な音を立て始める。
「ああ……陛下、陛下……こんな、やあぁ……」
 王の彫刻のような筋肉の下で、柔肌がくねくねと悶えている。美しく結い上げられた髪は寝台の上に乱れ広がり、爪の先まで手入れされた細い指が真っ白な敷布を引っ掻いて、間断なく押し寄せる波に呑まれてゆく。頬を上気させ、濡れた瞳が快楽を受け止めきれずに瞬く。
「あ、んっ……そこは……っ……はぁっ!」
 王が乳首に軽く歯を立てる。と、びくんと姫の身体が跳ねた。膣口が長い指を締め上げ食らいつく。王は眉ひとつ動かさず、その温かい胎内を責め立てる。
「はぁああっ!や、あああっ!はぁんっ、陛下、お許しを、陛下、あぁあ」
 罠にかかった獲物が空しく暴れるように、白い肢体が王の身体の下で跳ね回る。
「お許しを……もう……わたくし、もう……もう……耐えきれ……っ」
「許す、いっていいぞ」
 王は姫に口づけすると同時に、指で中の一点をくいと押した。
「あああ……っ!」
 姫は腰をくねらせ、びくびくと内壁を締め付けた。そして小さく潮を吹いた後、潤みきった表情かおで言った。
「陛下……わたくしにも、お仕えさせてくださいませ……」
 そう言うと、姫は王の陰茎を口に含んだ。
「嬉しゅうございます……今宵、わたくしを選んでくださって……」
 艷やかな桜色の唇に咥えられたそれは、みるみる固く屹立した。
 小さな舌が、そそり立ったそれを拙さの残る所作で舐め上げる。王はしばらくその懸命な表情を見下ろしていたが、やがてそっと口から抜くと、傍らの敷布を丸めてその中に射精した。
「湯を使ってくる。そなたもゆるりとせよ」
 王はそう言うと、寝室に備えられた浴室へ入っていった。
 下女が姫を別の浴室へと導いて、身体を洗い清める。その間に、数人の下女たちによって敷布が取り替えられ、新しい香が焚かれた。
 寝室に戻ってきた姫は、一人、冷たい寝台に滑り込む。
「……陛下は?」
「すぐお戻りになられますよ。姫さまにおかれましては、気にせず先にお休みなさるようにと」
「そう……」
 姫はそう呟くと、寝台に横になって瞳を閉じた。先程までの狂おしい火照りは、もうどこかへ消え去っていた。
 身体を流した王は、長いガウンを羽織ると、浴室から続く中庭に出た。
 どこからか花の香が漂ってくる。月光が静けさを強調するように感じるのは、草木の輪郭を青白く浮かび上がらせるせいか。
「――そこにいるのか」
 庭の闇の中に問いかけると、建物の影がゆらりと動いた。
「遅くに大義だな。少し付き合え」
 返事はない。が、目立たぬように付き従う影がある。その影に、まるで独り言のように語りかける。
「あれは辺境の地主が送ってきた姫だ」
 服従のしるしに差し出される姫たち。あわよくば王の子を身籠って、一族の出世の端緒となる希望を抱いて。
 だが、王には既に、正妃と側室が産んだ三人の王子と一人の王女がいる。末の子が生まれて十年、王の子を身籠った者はいない。
 ――身籠らせるつもりも、ない。
「側室は間に合っていると送り返すわけにもいかぬ。人質同然――哀れな娘たちよ――」
 王はそう言って、白いジャスミンの花を手折る。暗い地面に舞い散った花びらが、女たちの哀れさを象徴しているよう。
 芳香を放つ花を姫の寝顔の横に置き、その隣で王もまた眠りについた。

 中庭の闇の中、アトゥイーは一人、月を見ていた。
 しきたりでねやに宦官は入れない。が、暗殺の危険はいつもつきまとっている。
 アトゥイーが拝命した役目は、後宮全般における王の身辺警護だった。
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