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第三章 王宮編
傭兵隊長の劣情☆
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温かい大きな掌が、優しく身体を撫でている。
「アトゥイー……ライラ……」
微睡みの向こう側で繰り返し名を呼ぶ者がいる。
アトゥイーはうっすらと目を開けた。矢を受けて、落馬しそうになった。誰かが――助けてくれた、馬から落ちないようにずっと支えてくれていた。――そこまでは、覚えている。
「……隊長……?あ……わたし、矢を受けて……」
火がたかれているのだろう。ほんのりと温かい部屋にランプが灯り、ウラジーミルがいる。
身動きすると痛みが襲った。傷を見ようとすると、身体に包帯が巻かれていた。
(誰が手当したんだろう)
と、ぼんやり思う。
「ライラ……俺はずっとお前を想っていた……お前が娼館から消えてからもずっと」
アトゥイーは怪訝に思った。ウラジーミルの様子がおかしい。何故こんな話をしているのだろう。
「……隊長……?」
ウラジーミルがアトゥイーを見下ろしている。その身体はアトゥイーを覆い尽くすように大きい。
「それが、どうだ。お前は男の姿で、名まで変えて、俺の前に現れた」
ウラジーミルが、掛けてあった毛布を剥ぎ取った。下に穿いていた軍服に手を掛け、一気に引き下ろす。
「やっ、だめ……隊ちょ……だめ……あっ」
下着を剥ぎ取り、剥き出しになったアトゥイーの下腹に顔をうずめて叫ぶ。
「何故俺のものにならない……?ライラ……ライラ……!」
「いや、あ、隊長、やめて……どうして」
「俺は……俺は狂いそうだ――」
ウラジーミルがアトゥイーの陰核を啜り上げる。じゅるじゅるという音が部屋に響いて、アトゥイーは羞恥で泣きたくなった。
「あ……だ……め……」
くちゅり、と指がそこに這入った。びくんと腰が跳ねる。数カ月ぶりの刺激に、思わず躰をくねらせて反応してしまう。
「動くな。傷が開く」
そんなことを言いながら、無事な方の乳首を舌で転がす。手は執拗に股の間を弄っている。引き抜いた指に絡みついた粘液を陰核になすりつけ、そこがぷっくりと膨らむまで撫で回し、再び穴に沈める。二本、三本と増やしながら。
大きな掌が、優しく残酷にアトゥイーを濡らしていく。
「――――っ…………」
抵抗したくても、できない。上半身は少し動かすだけで激痛が走った。そもそも力ではウラジーミルに敵わない。
助けて、誰か。
誰か。エディ。
酷い、と思う。どんなに戦っても、強くなっても、こうして組み敷かれてしまう。
嫌なのに。もうこんなふうに抱かれたくないのに。こんなふうに――娼婦みたいに――奴隷みたいに。
なのに。
どうしてどこまでも逃れられないのだろう。
「……兵士なんかやめて、俺のものになれ――」
ウラジーミルが自身のベルトに手を掛けた。戦闘の後で興奮していたし、酒も入っていたし、かつて身請けを断られたことへの許せない気持ちもあった。彼の陰茎は服の下ではちきれんばかりに勃起していた。ここでアトゥイーを抱けば全部清算できる気がした。ウラジーミルには、相手が怪我人だろうが、気持ちよくしてやる自信はあった。
その時だった。ウラジーミルの背後で勢いよくドアが開いた。
「取り込み中だ。ドアを閉めて出ていけ」
ウラジーミルは相手を見もせずに言った。だが、ドアの閉まる音の代わりに部屋に響いたのは、スカイの声だった。
「ベルトから手を放せ、ウラジーミル・ザハロフ。僕はあんたの尻なんか見たくない」
走ってきたのだろうか、わずかに息が切れている。
「それ以上やっていたら軍法会議にかけて銃殺にしていた。命拾いしたな」
「スカイ殿、何故ここに……」
「国王陛下の命令で来た。辞令だ。たった今、午前零時、今日付で、アトゥイーは近衛兵に正式配属とする」
スカイはつかつかと室内に入ると、裸に剥かれて震えているアトゥイーに毛布をかけた。
「言っておくけど、ウラジーミル・ザハロフ。兵は一兵たりともお前のものなんかじゃない。イシュラヴァール国王陛下のものだ。僕も、あんたも、アトゥイーもね」
「アトゥイーは女だ。兵士をやめさせて妻にする」
ウラジーミルの口から、咄嗟にそんな言葉が出る。
「じゃあ、なおさらだ――あんたまさか陛下と張り合う気――?」
スカイは顔と顔を突き合わせるようにして、ウラジーミルにだけ聞こえるように言った。金髪に縁取られた美しい顔には、酷薄な薄笑いが浮かんでいる。ウラジーミルの顔に驚愕の色が浮かび、そして敗北の表情へと変わっていった。
「身の程知らずなんだよ。傭兵風情が」
スカイは毛布ごとアトゥイーを抱き上げると、悄然と立ち尽くすウラジーミルをその場に残し、去っていった。
国軍強しと言えど、常勝軍団の傭兵隊に向かって傭兵風情と言い切れるのは、国王直属の近衛兵くらいである。それほどまでに近衛兵は最強の部隊だった。
「アトゥイー……ライラ……」
微睡みの向こう側で繰り返し名を呼ぶ者がいる。
アトゥイーはうっすらと目を開けた。矢を受けて、落馬しそうになった。誰かが――助けてくれた、馬から落ちないようにずっと支えてくれていた。――そこまでは、覚えている。
「……隊長……?あ……わたし、矢を受けて……」
火がたかれているのだろう。ほんのりと温かい部屋にランプが灯り、ウラジーミルがいる。
身動きすると痛みが襲った。傷を見ようとすると、身体に包帯が巻かれていた。
(誰が手当したんだろう)
と、ぼんやり思う。
「ライラ……俺はずっとお前を想っていた……お前が娼館から消えてからもずっと」
アトゥイーは怪訝に思った。ウラジーミルの様子がおかしい。何故こんな話をしているのだろう。
「……隊長……?」
ウラジーミルがアトゥイーを見下ろしている。その身体はアトゥイーを覆い尽くすように大きい。
「それが、どうだ。お前は男の姿で、名まで変えて、俺の前に現れた」
ウラジーミルが、掛けてあった毛布を剥ぎ取った。下に穿いていた軍服に手を掛け、一気に引き下ろす。
「やっ、だめ……隊ちょ……だめ……あっ」
下着を剥ぎ取り、剥き出しになったアトゥイーの下腹に顔をうずめて叫ぶ。
「何故俺のものにならない……?ライラ……ライラ……!」
「いや、あ、隊長、やめて……どうして」
「俺は……俺は狂いそうだ――」
ウラジーミルがアトゥイーの陰核を啜り上げる。じゅるじゅるという音が部屋に響いて、アトゥイーは羞恥で泣きたくなった。
「あ……だ……め……」
くちゅり、と指がそこに這入った。びくんと腰が跳ねる。数カ月ぶりの刺激に、思わず躰をくねらせて反応してしまう。
「動くな。傷が開く」
そんなことを言いながら、無事な方の乳首を舌で転がす。手は執拗に股の間を弄っている。引き抜いた指に絡みついた粘液を陰核になすりつけ、そこがぷっくりと膨らむまで撫で回し、再び穴に沈める。二本、三本と増やしながら。
大きな掌が、優しく残酷にアトゥイーを濡らしていく。
「――――っ…………」
抵抗したくても、できない。上半身は少し動かすだけで激痛が走った。そもそも力ではウラジーミルに敵わない。
助けて、誰か。
誰か。エディ。
酷い、と思う。どんなに戦っても、強くなっても、こうして組み敷かれてしまう。
嫌なのに。もうこんなふうに抱かれたくないのに。こんなふうに――娼婦みたいに――奴隷みたいに。
なのに。
どうしてどこまでも逃れられないのだろう。
「……兵士なんかやめて、俺のものになれ――」
ウラジーミルが自身のベルトに手を掛けた。戦闘の後で興奮していたし、酒も入っていたし、かつて身請けを断られたことへの許せない気持ちもあった。彼の陰茎は服の下ではちきれんばかりに勃起していた。ここでアトゥイーを抱けば全部清算できる気がした。ウラジーミルには、相手が怪我人だろうが、気持ちよくしてやる自信はあった。
その時だった。ウラジーミルの背後で勢いよくドアが開いた。
「取り込み中だ。ドアを閉めて出ていけ」
ウラジーミルは相手を見もせずに言った。だが、ドアの閉まる音の代わりに部屋に響いたのは、スカイの声だった。
「ベルトから手を放せ、ウラジーミル・ザハロフ。僕はあんたの尻なんか見たくない」
走ってきたのだろうか、わずかに息が切れている。
「それ以上やっていたら軍法会議にかけて銃殺にしていた。命拾いしたな」
「スカイ殿、何故ここに……」
「国王陛下の命令で来た。辞令だ。たった今、午前零時、今日付で、アトゥイーは近衛兵に正式配属とする」
スカイはつかつかと室内に入ると、裸に剥かれて震えているアトゥイーに毛布をかけた。
「言っておくけど、ウラジーミル・ザハロフ。兵は一兵たりともお前のものなんかじゃない。イシュラヴァール国王陛下のものだ。僕も、あんたも、アトゥイーもね」
「アトゥイーは女だ。兵士をやめさせて妻にする」
ウラジーミルの口から、咄嗟にそんな言葉が出る。
「じゃあ、なおさらだ――あんたまさか陛下と張り合う気――?」
スカイは顔と顔を突き合わせるようにして、ウラジーミルにだけ聞こえるように言った。金髪に縁取られた美しい顔には、酷薄な薄笑いが浮かんでいる。ウラジーミルの顔に驚愕の色が浮かび、そして敗北の表情へと変わっていった。
「身の程知らずなんだよ。傭兵風情が」
スカイは毛布ごとアトゥイーを抱き上げると、悄然と立ち尽くすウラジーミルをその場に残し、去っていった。
国軍強しと言えど、常勝軍団の傭兵隊に向かって傭兵風情と言い切れるのは、国王直属の近衛兵くらいである。それほどまでに近衛兵は最強の部隊だった。
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