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OFF 〜voluptuousness H
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助けてと叫んだときに助けが来るなんて幸運は現実には滅多に起こらない。
「ユリカちゃん、怖かったね。ごめんねー」
聖さんが子供にするように優しく頭を撫でて、あたしを内診台に縛り付けているベルトを外していく。
あたしはまだ、震えが止まらない。躰の内側からビクンビクンと痙攣が伝わってくる。
「おい聖、どういうつもりだよ。せっかく開発してたのによォー」
「伊勢崎さん、この子はね、もっと優しくしてあげたほうがいいんですよ。まぁしばらく貸してみてくださいよ、僕に。ちゃんと仕込んでお返ししますから」
なんてことを話しているんだろう、この人たちは。
あたしはいつからこの人たちの物になったんだろう。
「あーあ、びっしゃびしゃだな。ねぇちょっと――ほなみちゃん、何か拭くものある?」
「はぁい」
ほなみさんが蒸しタオルであたしの身体を清拭する。その手際の良さに、やっぱり看護師さんなんだな、と思う。
「忘れんなよ。こいつは俺が龍二から買ったんだからな」
「重々わかってますよ、伊勢崎さん」
「……え?」
買っ……た?
あたしを?龍二って?龍二ってまさか。
「佐伯さん……が……?」
聖さんがあたしを振り返る。
「……聖さん、それ、どういうこと……?」
「どういうことって、言葉通りだけど?」
聖さんは、にっこり笑って言った。
「佐伯は伊勢崎さんへの借金を棒引きする代わりに、君を差し出したってこと。残念だったね、自分で移籍していれば稼げたのに、借金のカタじゃ数年はタダ働きだ」
うそ。
どうして。
「ひと晩十万稼いでもらったとして、休み無しで三年で一億の計算だ。頼むからそれまで壊れるなよォー?」
「伊勢崎さんが無茶な扱いするから、みんな早々に使い物にならなくなるんじゃないですか」
あたしはぞっとした。
さっきみたいなことをされ続けたら、三年どころか一年ももたない。
でも、そんなことより。
「……うそだ……」
佐伯があたしを売るなんて。
指先がつめたくなっていく。
「言ったでしょ、ユリカちゃん。佐伯と深く関わると危険だよって」
うそだ。
仕事は辞めるなよ、って言ってた。
『金じゃねぇんだよ。こっちの世界にどっぷり浸かっちまうと、戻れなくなるから』
佐伯のセリフが蘇る。
「佐伯さんは……そんな人じゃ……」
だけど、と心の奥から声がした。
あたしは知ってる。
(どうして……?)
人間というのは、ふとしたきっかけで変わってしまうものだということを。
(どうして?ママ……)
(どうしてこっちを見てくれないの?)
(ママ……ママ……)
あたしは知ってる。多分、ずっと小さな小さな頃から。
もう何も考えたくなくて、あたしはされるがままになっていた。
気がつくと、ほなみさんがあたしをお風呂に入れていた。
さっきまでの殺風景な部屋とはうってかわって、猫脚のバスタブと真鍮のシャワーヘッドがかわいらしいバスルームだ。
「ふふ、まるでレズプレイしてるみたいね、ユリカちゃん」
バスミルクの溶けた湯船の中で、ほなみさんのやわらかなおっぱいがふわんふわん揺れる。
「ユリカちゃん、ちょっとごめんね」
促されて湯船から出ると、ほなみさんがあたしのお尻に、つぷ、と何かを挿れた。
「……え?あ、ああっ」
そこから生ぬるい水が放たれて、あたしの直腸に注ぎ込まれる。
「やあぁ……」
「だいじょうぶよ。ちょっと洗うだけだから」
水はすぐに流れ出て、ほなみさんはあたしをよく泡立てた石鹸でふわふわと洗った。
お風呂から上がると、ほなみさんはナース服ではなく私服を着た。
あたしには洋服の代わりに、首輪と手枷が付けられた。さすがに素っ裸では逃げられない。身体を拭いたのもバスタオルじゃなくてフェイスタオルだった。
バスルームを出ると、ガウン姿の聖さんがいた。
「ほなみちゃん、お疲れさま」
「お待たせしましたぁ。ユリカちゃん、きれいになりましたよぉー」
「ありがと。わ、いい匂い」
聖さんはあたしを受け取ると、くんくんと匂いを嗅いで言った。
「じゃ、失礼しまーす」
ほなみさんはそのまま部屋を出ていった。家に帰るのかもしれない。私服だったし。
コンクリート打ちっぱなしの部屋の中央にはキングサイズのベッドが置かれている。広い窓の前には大きな葉を茂らせた観葉植物が置かれ、床には毛足の長いラグが敷いてある。
窓の外は夜だった。
「お腹すいたでしょ。何か食べる?」
あたしは首を横に振った。たぶん丸一日以上なにも食べてない。お腹はすいているのかも知れないけれど、何も食べたくない。
「じゃ、紅茶でも飲む?」
聖さんはマグカップに入った温かい紅茶とクッキーをくれた。
紅茶はおいしかった。紅茶をひとくち飲むと、クッキーも食べられそうな気がして、一枚齧った。
なんでこの人は優しいんだろう。その本性はとてつもなく冷酷なのに。
きっと彼の優しさは、女を支配するための道具でしかない。そうと分かっていても、その甘さに抗えない。
(もう、どうでもいい――)
聖さんは、クッキーを食べ終わったあたしを抱きかかえるようにして、ベッドに転がした。
コンクリートの壁に鉄の輪が打ち付けられていて、そこにあたしの首輪の鎖を繋ぐ。
「ねぇ、初めてここに触った時、覚えてる?」
そう言って聖さんは、あたしの肛門に触れる。ぴくり、とそこが反応する。
「おかしいなぁと思ったんだよねー。俺の指を呑み込みたくてすっごいヒクヒクしてるのに、アナルNGだなんて。ユリカちゃん、君さ、前にここに挿れたこと、あるんでしょ?」
聖さんの手には、ぽこぽことピンポン玉大のビーズが連なったシリコン製のアナルビーズが握られていた。
「ねぇ、何を挿れたの?教えてよ」
そう言いながら聖さんはベッドに座ると、あたしを自分の膝の上にうつ伏せて、一番端のビーズをあたしの肛門にぽこんと挿れる。
「あっ……」
どんなに思考を切り離しても、体内に挿入されると否応なしに反応してしまう。
「ねぇ、ユリカちゃん、ここに、」
ふたつめのビーズが、あたしの中に埋め込まれた。ビーズは最初こそ括約筋の抵抗に合うけれど、球の最大経を超えると素直に中に呑み込んでゆく。
「んっ……」
「なにを挿れられたの?おもちゃ?」
聖さんが耳元で囁く。あたしは首を振った。
「じゃ、なに?」
みっつめ。
「んっ……」
「ねぇ」
よっつめ。
ビーズを呑み込む感覚が、しまいこんでいた記憶を呼び覚ます。
「っく……で……電池……を」
「電池?乾電池のこと?」
あたしは頷いた。
「コンドームに、入れて、お尻に」
思い出した。ずっと忘れていた。
「それは、君がいくつの時?」
いつつめ。
「はっ、あ……な、7……さいか、8さ……いっ」
「誰に挿れられたの?」
むっつめ。
「あああっ……」
「誰に!」
ななつめ。もうぎゅうぎゅうにきつい。
「ああ、あ……パパ……に」
その瞬間、聖さんがアナルビーズを引き抜いた。ずぼずぼっとビーズがふたつほど出てくる。
「きゃあぁっ!」
痺れるような感覚が広がって、あたしは思わず腰を浮かせる。
「よく言えたね、ユリカちゃん」
聖さんはベッドに座ったまま、あたしを自分の上に座らせた。そして肛門にアナルビーズを挿れたまま、膣に挿入した。
「や、あ、あ、ああ」
膣の中のペニスが内壁越しにアナルビーズをこすり上げる。あたしは反射的にのけ反った。
「ほんとヤバい。ユリカちゃんの、その顔」
聖さんがあたしの背中を支えて突き上げる。あたしの中がとぷとぷと濡れて溢れてくる。
「あっ、あん、やあっ、あっ……」
「言ったでしょ、俺がかわいがってあげるって。ユリカちゃんのパパのかわりに、いくらでも蕩かしてあげる。君は、嫌なことなんか全部忘れて、ただ気持ちよくなっていればいいんだよ」
微睡みと覚醒を繰り返しながら、あたしは朝まで聖さんに抱かれ続けた。
「ああ、あっ……」
躰の一番奥を突かれて、絶頂する。
意識を失いかけてシーツに突っ伏すと、アナルビーズを引き抜かれて目覚めさせられる。
「やあぁぁ……っ!」
肛門の異物感は、ぞくぞくとした快感に変わってあたしを貫く。
再び、聖さんが優しくそれを体内にうずめてゆく。ひとつずつ、丁寧に。
「あ……やぁ……あぁぁ……」
あたしはシーツに爪を立てて、ビーズを呑み込むたびに生まれる小さな波をやり過ごす。
ビーズを根本まですべて埋め込むと、またペニスで膣を蹂躙する。
「ああ、あーっ……!」
「すごい、ユリカちゃんの膣内が吸い付いてくる……」
やわらかくほぐれきったそこは、まるで意思を持った生物のようにペニスを歓喜して受け入れ、しっとりと吸い付いてはきゅうっと締め上げる。なんて淫猥な場所だろう。
そうしてまたあたしは、何度目かの絶頂を迎える。
聖さんはあたしの中に何度も射精した。あたしの子宮は聖さんの精液に満たされていった。
聖さんは、根気強く、丁寧に、時間をかけて、あたしを征服していった。
意識が官能にとろとろと溶けてゆく。
*****
最初は単4電池。
それが入るようになると、次は単3電池。
さすがに単2電池は入らなくて、その頃から指になった。
十歳にもなっていないあたしの膣は、まだ固くて、なにも受け付けなかった。パパは時々そこに触れたけれど、固く閉じているのを確認すると、無理に押し拡げることはしなかった。あの人なりに、娘の躰を大事にしていたのだろう。
春の昼下がりの畳の上で、冬のこたつの中で、夏の夕暮れ、秋は果物を齧りながら、パパはあたしを愛した。
月に一度。躰のすみずみまで、愛撫して、撮影した。
日々成長していく身体の、刻一刻と失われていく幼さを惜しむように、膨らみゆく乳房の、消えてゆく一瞬の形態を記憶に留めるように、あたしに触れ、観察した。
パパは優しかった。
家族として過ごした記憶のないパパを、あたしは父親というよりも男性として見ていたのかもしれない。
中学になって初潮を迎えたと告げた時、パパは初めてそこに指を挿れた。
それからクリトリスの場所をあたしに教えた。
パパとの行為は気持ちよすぎて、年齢差から来る少しの嫌悪感と圧倒的な背徳感は却って快感を助長し、あたしは秘密に酔った。あたしにそんなふうに触れられるひとは、他にいなかった。
そんな関係が打ち砕かれたのは、それから間もなくのことだった。
氷水をかけられたように、あたしたちは長い夢から醒めた。
誰が通報したのか、あたしは知らない。パパの近所のひとが見咎めたのか、あるいはママが気付いていたのか。
もう知るすべはない。ママは海で溺れて、あたしのことすらもわからなくなったから。
あたしのカウンセリングには検事が立ち会って、話したことは証言になった。
幼い頃から撮り溜めたたくさんの撮影画像や映像は証拠品として押収されて、あたしが見ることはできなくなった。
裁判でパパは言った。「ちょっとした悪戯のつもりで……娘には申し訳ないことをしました」
あたしはそれをテレビのワイドショーで聞いた。だから嘘だと思った。パパがそんなこと言うわけない。あたしに謝ったりなんかしない。謝ってほしがってるのはあたしじゃなくて世間だ。
悪戯だなんて。それこそたちの悪いジョークだ。
あれは。
あの日々は。
悪戯なんかじゃない。
とろりと濃密なあの時間は、あたしの記憶の底に、躰の奥に、まだ疼いているのに。
「ユリカちゃん、怖かったね。ごめんねー」
聖さんが子供にするように優しく頭を撫でて、あたしを内診台に縛り付けているベルトを外していく。
あたしはまだ、震えが止まらない。躰の内側からビクンビクンと痙攣が伝わってくる。
「おい聖、どういうつもりだよ。せっかく開発してたのによォー」
「伊勢崎さん、この子はね、もっと優しくしてあげたほうがいいんですよ。まぁしばらく貸してみてくださいよ、僕に。ちゃんと仕込んでお返ししますから」
なんてことを話しているんだろう、この人たちは。
あたしはいつからこの人たちの物になったんだろう。
「あーあ、びっしゃびしゃだな。ねぇちょっと――ほなみちゃん、何か拭くものある?」
「はぁい」
ほなみさんが蒸しタオルであたしの身体を清拭する。その手際の良さに、やっぱり看護師さんなんだな、と思う。
「忘れんなよ。こいつは俺が龍二から買ったんだからな」
「重々わかってますよ、伊勢崎さん」
「……え?」
買っ……た?
あたしを?龍二って?龍二ってまさか。
「佐伯さん……が……?」
聖さんがあたしを振り返る。
「……聖さん、それ、どういうこと……?」
「どういうことって、言葉通りだけど?」
聖さんは、にっこり笑って言った。
「佐伯は伊勢崎さんへの借金を棒引きする代わりに、君を差し出したってこと。残念だったね、自分で移籍していれば稼げたのに、借金のカタじゃ数年はタダ働きだ」
うそ。
どうして。
「ひと晩十万稼いでもらったとして、休み無しで三年で一億の計算だ。頼むからそれまで壊れるなよォー?」
「伊勢崎さんが無茶な扱いするから、みんな早々に使い物にならなくなるんじゃないですか」
あたしはぞっとした。
さっきみたいなことをされ続けたら、三年どころか一年ももたない。
でも、そんなことより。
「……うそだ……」
佐伯があたしを売るなんて。
指先がつめたくなっていく。
「言ったでしょ、ユリカちゃん。佐伯と深く関わると危険だよって」
うそだ。
仕事は辞めるなよ、って言ってた。
『金じゃねぇんだよ。こっちの世界にどっぷり浸かっちまうと、戻れなくなるから』
佐伯のセリフが蘇る。
「佐伯さんは……そんな人じゃ……」
だけど、と心の奥から声がした。
あたしは知ってる。
(どうして……?)
人間というのは、ふとしたきっかけで変わってしまうものだということを。
(どうして?ママ……)
(どうしてこっちを見てくれないの?)
(ママ……ママ……)
あたしは知ってる。多分、ずっと小さな小さな頃から。
もう何も考えたくなくて、あたしはされるがままになっていた。
気がつくと、ほなみさんがあたしをお風呂に入れていた。
さっきまでの殺風景な部屋とはうってかわって、猫脚のバスタブと真鍮のシャワーヘッドがかわいらしいバスルームだ。
「ふふ、まるでレズプレイしてるみたいね、ユリカちゃん」
バスミルクの溶けた湯船の中で、ほなみさんのやわらかなおっぱいがふわんふわん揺れる。
「ユリカちゃん、ちょっとごめんね」
促されて湯船から出ると、ほなみさんがあたしのお尻に、つぷ、と何かを挿れた。
「……え?あ、ああっ」
そこから生ぬるい水が放たれて、あたしの直腸に注ぎ込まれる。
「やあぁ……」
「だいじょうぶよ。ちょっと洗うだけだから」
水はすぐに流れ出て、ほなみさんはあたしをよく泡立てた石鹸でふわふわと洗った。
お風呂から上がると、ほなみさんはナース服ではなく私服を着た。
あたしには洋服の代わりに、首輪と手枷が付けられた。さすがに素っ裸では逃げられない。身体を拭いたのもバスタオルじゃなくてフェイスタオルだった。
バスルームを出ると、ガウン姿の聖さんがいた。
「ほなみちゃん、お疲れさま」
「お待たせしましたぁ。ユリカちゃん、きれいになりましたよぉー」
「ありがと。わ、いい匂い」
聖さんはあたしを受け取ると、くんくんと匂いを嗅いで言った。
「じゃ、失礼しまーす」
ほなみさんはそのまま部屋を出ていった。家に帰るのかもしれない。私服だったし。
コンクリート打ちっぱなしの部屋の中央にはキングサイズのベッドが置かれている。広い窓の前には大きな葉を茂らせた観葉植物が置かれ、床には毛足の長いラグが敷いてある。
窓の外は夜だった。
「お腹すいたでしょ。何か食べる?」
あたしは首を横に振った。たぶん丸一日以上なにも食べてない。お腹はすいているのかも知れないけれど、何も食べたくない。
「じゃ、紅茶でも飲む?」
聖さんはマグカップに入った温かい紅茶とクッキーをくれた。
紅茶はおいしかった。紅茶をひとくち飲むと、クッキーも食べられそうな気がして、一枚齧った。
なんでこの人は優しいんだろう。その本性はとてつもなく冷酷なのに。
きっと彼の優しさは、女を支配するための道具でしかない。そうと分かっていても、その甘さに抗えない。
(もう、どうでもいい――)
聖さんは、クッキーを食べ終わったあたしを抱きかかえるようにして、ベッドに転がした。
コンクリートの壁に鉄の輪が打ち付けられていて、そこにあたしの首輪の鎖を繋ぐ。
「ねぇ、初めてここに触った時、覚えてる?」
そう言って聖さんは、あたしの肛門に触れる。ぴくり、とそこが反応する。
「おかしいなぁと思ったんだよねー。俺の指を呑み込みたくてすっごいヒクヒクしてるのに、アナルNGだなんて。ユリカちゃん、君さ、前にここに挿れたこと、あるんでしょ?」
聖さんの手には、ぽこぽことピンポン玉大のビーズが連なったシリコン製のアナルビーズが握られていた。
「ねぇ、何を挿れたの?教えてよ」
そう言いながら聖さんはベッドに座ると、あたしを自分の膝の上にうつ伏せて、一番端のビーズをあたしの肛門にぽこんと挿れる。
「あっ……」
どんなに思考を切り離しても、体内に挿入されると否応なしに反応してしまう。
「ねぇ、ユリカちゃん、ここに、」
ふたつめのビーズが、あたしの中に埋め込まれた。ビーズは最初こそ括約筋の抵抗に合うけれど、球の最大経を超えると素直に中に呑み込んでゆく。
「んっ……」
「なにを挿れられたの?おもちゃ?」
聖さんが耳元で囁く。あたしは首を振った。
「じゃ、なに?」
みっつめ。
「んっ……」
「ねぇ」
よっつめ。
ビーズを呑み込む感覚が、しまいこんでいた記憶を呼び覚ます。
「っく……で……電池……を」
「電池?乾電池のこと?」
あたしは頷いた。
「コンドームに、入れて、お尻に」
思い出した。ずっと忘れていた。
「それは、君がいくつの時?」
いつつめ。
「はっ、あ……な、7……さいか、8さ……いっ」
「誰に挿れられたの?」
むっつめ。
「あああっ……」
「誰に!」
ななつめ。もうぎゅうぎゅうにきつい。
「ああ、あ……パパ……に」
その瞬間、聖さんがアナルビーズを引き抜いた。ずぼずぼっとビーズがふたつほど出てくる。
「きゃあぁっ!」
痺れるような感覚が広がって、あたしは思わず腰を浮かせる。
「よく言えたね、ユリカちゃん」
聖さんはベッドに座ったまま、あたしを自分の上に座らせた。そして肛門にアナルビーズを挿れたまま、膣に挿入した。
「や、あ、あ、ああ」
膣の中のペニスが内壁越しにアナルビーズをこすり上げる。あたしは反射的にのけ反った。
「ほんとヤバい。ユリカちゃんの、その顔」
聖さんがあたしの背中を支えて突き上げる。あたしの中がとぷとぷと濡れて溢れてくる。
「あっ、あん、やあっ、あっ……」
「言ったでしょ、俺がかわいがってあげるって。ユリカちゃんのパパのかわりに、いくらでも蕩かしてあげる。君は、嫌なことなんか全部忘れて、ただ気持ちよくなっていればいいんだよ」
微睡みと覚醒を繰り返しながら、あたしは朝まで聖さんに抱かれ続けた。
「ああ、あっ……」
躰の一番奥を突かれて、絶頂する。
意識を失いかけてシーツに突っ伏すと、アナルビーズを引き抜かれて目覚めさせられる。
「やあぁぁ……っ!」
肛門の異物感は、ぞくぞくとした快感に変わってあたしを貫く。
再び、聖さんが優しくそれを体内にうずめてゆく。ひとつずつ、丁寧に。
「あ……やぁ……あぁぁ……」
あたしはシーツに爪を立てて、ビーズを呑み込むたびに生まれる小さな波をやり過ごす。
ビーズを根本まですべて埋め込むと、またペニスで膣を蹂躙する。
「ああ、あーっ……!」
「すごい、ユリカちゃんの膣内が吸い付いてくる……」
やわらかくほぐれきったそこは、まるで意思を持った生物のようにペニスを歓喜して受け入れ、しっとりと吸い付いてはきゅうっと締め上げる。なんて淫猥な場所だろう。
そうしてまたあたしは、何度目かの絶頂を迎える。
聖さんはあたしの中に何度も射精した。あたしの子宮は聖さんの精液に満たされていった。
聖さんは、根気強く、丁寧に、時間をかけて、あたしを征服していった。
意識が官能にとろとろと溶けてゆく。
*****
最初は単4電池。
それが入るようになると、次は単3電池。
さすがに単2電池は入らなくて、その頃から指になった。
十歳にもなっていないあたしの膣は、まだ固くて、なにも受け付けなかった。パパは時々そこに触れたけれど、固く閉じているのを確認すると、無理に押し拡げることはしなかった。あの人なりに、娘の躰を大事にしていたのだろう。
春の昼下がりの畳の上で、冬のこたつの中で、夏の夕暮れ、秋は果物を齧りながら、パパはあたしを愛した。
月に一度。躰のすみずみまで、愛撫して、撮影した。
日々成長していく身体の、刻一刻と失われていく幼さを惜しむように、膨らみゆく乳房の、消えてゆく一瞬の形態を記憶に留めるように、あたしに触れ、観察した。
パパは優しかった。
家族として過ごした記憶のないパパを、あたしは父親というよりも男性として見ていたのかもしれない。
中学になって初潮を迎えたと告げた時、パパは初めてそこに指を挿れた。
それからクリトリスの場所をあたしに教えた。
パパとの行為は気持ちよすぎて、年齢差から来る少しの嫌悪感と圧倒的な背徳感は却って快感を助長し、あたしは秘密に酔った。あたしにそんなふうに触れられるひとは、他にいなかった。
そんな関係が打ち砕かれたのは、それから間もなくのことだった。
氷水をかけられたように、あたしたちは長い夢から醒めた。
誰が通報したのか、あたしは知らない。パパの近所のひとが見咎めたのか、あるいはママが気付いていたのか。
もう知るすべはない。ママは海で溺れて、あたしのことすらもわからなくなったから。
あたしのカウンセリングには検事が立ち会って、話したことは証言になった。
幼い頃から撮り溜めたたくさんの撮影画像や映像は証拠品として押収されて、あたしが見ることはできなくなった。
裁判でパパは言った。「ちょっとした悪戯のつもりで……娘には申し訳ないことをしました」
あたしはそれをテレビのワイドショーで聞いた。だから嘘だと思った。パパがそんなこと言うわけない。あたしに謝ったりなんかしない。謝ってほしがってるのはあたしじゃなくて世間だ。
悪戯だなんて。それこそたちの悪いジョークだ。
あれは。
あの日々は。
悪戯なんかじゃない。
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