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プロローグ 魔王転生する! 

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 異世界【リブルーズ】、魔物とそれを統べる魔王と人間達が戦う世界。

 その<魔王デスヘルダーク>が、居城である魔王城で激闘の末、勇者パーティーに引導を渡されようとしていた。

「くっ! 我が貴様ら人間如きにここまで追い詰められるとは…」
「確かに俺達人間は弱い! だからこそ、力を合わせれば、無限の力が出せるんだ!!」

 魔王の言葉に、勇者は信頼する仲間を一瞥しながら力強く返す。
 確かに相手が勇者一人なら、勝てたであろう。

 だが、勇者とそれに次ぐ実力を持つ仲間達の合わさった力は、魔王デスヘルダークを越えており、魔王はこのまま戦い続けても負けるであろうと自らの敗北を悟り覚悟を決める。

 しかし、それはこのまま討伐されて、消滅するのを受け入れるということではない!

 魔王心の声以下㋮:(やはり、勝てないか… ならば、予定通りに残りの魔力を使って、転生して捲土重来を期す!)

 魔王は負けた時の事を考えて、高難易度の転生魔法を習得していた。
 この魔王意外と努力家である。

「みんな! この聖剣ブランシュナールに、皆の残った力を全て注いでくれ!」
「ならば、こちらも全ての力を使って、貴様達を無にしてやろう!!」

 ㋮:(くっ 明らかにヤバそうな攻撃の準備を始めたな! 急がねば!!)

「おう! 勇者! 俺のありったけを、持っていけっ!」
「サンキュー、バルガス!」

 戦士は勇者の持つ聖剣に、残りの力を注ぎ込む。

「ぐははは…! 友情の力とやらどこまで通用するかな!?」

 ㋮:(全員でこのやり取りをするつもりか? それなりに時間掛かるぞ? だが、今の我には好都合だ!)

 魔王は勇者パーティーが、絶体絶命の状態で残る力を合わせて魔王を倒すという燃えるイベントを展開している間に、こちらも凄い魔法を撃つ準備をすると見せかけながら、転生魔法の準備を続ける。

「勇者! これが私の残りの力よ!」
「ありがとう、レイチェル!」

 魔法使いも力を注ぎ込む。

「ぐははは…! 仲間の絆とやら見せてみよ!」
 ㋮:(よーし、我は手を出さないから、もっと時間をかけろ!)

 魔王は魔王らしく信頼や友情を煽りながら、勇者パーティーのイベントを盛り上げ続行させる。

「勇者よ! 儂らの命、お主に託す!」
「ソフィオン老師、後は任せてください!」

 老武闘家も若い勇者に未来を託す。

 ㋮:(やばい! あと一人だ! 間に合うか!?)

 魔王は減らず口を叩かく余裕がないため、無口になってしまう。

「勇者様。未来を、世界を救ってください!」
「ああ、任せてくれソフィア!」

 最後に聖女から聖剣に力が注がれ、最終奥義の発動準備が整う。

 勇者はパーティーの皆の力が注がれ、刀身が力強く輝く聖剣を高く掲げると人類の未来を懸けた最後の攻撃をおこなう。

「いくぞ、魔王! これが、俺達の最後の力だ!! くらえっ! 最終奥義ギガホーリーブレイクーーー!!」

 ㋮:(うおおおおー、間にあえぇーーーー!!!)

 勇者は聖剣を上段の位置から振り下ろすと、刀身から仲間と自身の力が込められた、当たれば勝確の最終奥義を放つ!

 刀身から放たれたギガホーリーブレイクの極太ビームのようなエネルギー波は、地面を消し飛ばしながら近寄って来ており、最終奥義の名に恥じないその威力は当たれば、今の弱った<魔王デスヘルダークならば確実に消滅するであろう。

 ㋮:(うおおおおー、間にあえぇーーーー!!! あっ 痛い! 痛い!!)

 極太ビームが遂に魔王デスヘルダークのその巨体に接触し、触れた部分から消滅させていく。

 ㋮:(嗚呼…… 我… おわった…)

 エネルギー波の光に包まれ、最早痛みすら感じなくなった消滅する体で、魔王デスヘルダークは自分の最後を悟る。

 ㋮:(こんなことなら、先代魔王様が破れた時、田舎に帰ればよかった…)

 後悔先に立たずとはよく言うが、魔王が消滅しながら後悔していると魂が体から抜ける感覚に襲われる。

 上空に上がったと感じた瞬間、物凄い勢いで光の中を移動し始める。

(おっ!? おおっ!? やった… やったぞ! 転生が間に合った!!)

 この光が何なのか解らないが、物凄い勢いでその中を進んでいることは解る。

(フハハハ! 勇者とその仲間め、覚えていろ! 我が転生して、力を蓄えたその暁には、まずは貴様らを纏めて八つ裂きに… 一人ずつ八つ裂きにしてくれる!)

 魔王は心の中の誓いで日和った。

 光の中を進んでいると、突然その光の中で、ピタリと止まってしまい、魔王はそこから長いこと待たされることになる。

(そうか… 急いで、転生魔法を使ったから、転生先もその時間も場所も指定しなかったから、転生の順番待ちかもしれん)

 転生に順番待ちがあるのか解らないが、今の自分ではどうしようもないので、根気よく待つことにする。

 どれだけ待ったであろう…

(こんなに何もせずにのんびりとするのは、いつ以来であろうか…… そうだ、先代魔王様に辺境の魔物の塔の番人を任された時以来だな~)

 魔王デスヘルダークは、すっかり緊張感が無くなり、まったり気分になってしまったため、睡魔に襲われてしまう。

(まあ、順番が来るまで、眠るのもいいだろう…)

 そこで、魔王の意識は途切れてしまう。

 ―そして、次に目を覚ました時、魔王が見た光景は自分を覗き込む男女の顔であったが、ぼんやりとしか見えていない。

「この子の名前は、決めました?」
「先程、突然思いついた名前がある。” アルス”というのはどうだ?」

「” アルス”… とてもいい名前ですね」

 母親はその名を聞くと優しい笑顔を浮かべる。
 会話の様子からすると男女は夫婦のようだ。

(何か言っているようだが、よく聞こえんな…)

 すると、体が宙に浮く。
 どうやら、持ち上げられたらしい。

 これらの事から、導き出される答えは―

「ばぶー(赤ちゃんからの再スタートなのか)!?」

 魔王は思わず声にだしてしまうが、赤ちゃんなのでもちろん喋ることは出来ない。

(転移先を決めなかったとはいえ、まさか人間の赤ん坊からとは!?)

 こうして、魔王デスヘルダークは、アルスとして文字通り第二の人生を送ることになった。







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