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第6章 三帝激突
第二次対仏大同盟 その2
しおりを挟むインゲルマンラント星系にあるオソロシーヤ帝国首都星ザンクト・ペーテルスブルクにある宮殿で御前会議がおこなわれていた。
「この時期に首都星系を手薄にするのは、我らを誘っているのは明白でありますが、いずれ開戦せねばならないなら、誘いに乗るのも良いと考えます」
「それに、奴らが引き返してくる間に、【バイエアン王国】への侵攻と奴らの領土に攻め入って、国境付近を荒らせば敵国民の戦争協力への意思が下がり、厭戦気分が高まるかもしれません」
「陛下、聖断を」
オソロシーヤ帝国皇帝アリスタルフ1世・オソロシーヤは、それまで黙って臣下達の討論を聞いていたが、決断を促されると黙って暫く考え込む。
だが、彼の中では既に結論は出ていた。
「敵の罠に嵌ったと見せかけて、そのまま罠を噛み砕く! 至急侵攻準備を開始せよ!」
「はっ!!」
開戦の決断を聞いた軍人達は、歓喜の声をあげる。
そして、その歓声は皇帝の次の言葉で、更に大きくなる。
「今回の戦いは、余も貴官達と出陣して、総司令官として前線で共に戦う!」
「おおーーーー!!」
アリスタルフ1世が出陣を決めたのは、もちろんフランの例の演説の影響で、あの演説依頼臣下や国民の中に、彼の出陣を願う声が日に日に高まっていた。
それに加え、彼自身も彼女の無礼な演説に対して、戦場で返答せねばならないという思いもあった。
こうして、御前会議は皇帝出陣の宣言によって、士気が高揚し熱気に包まれたまま終わったが、その様子を今回の侵攻の実質的総司令官であるミハイル・クリューコフ大将は、冷ややかな目で見ていた。
ミハイル・クリューコフ大将は3代に仕える宿老であり、今年で60歳の老練な将帥である。
彼は平行宇宙で、フランのオソロシーヤ遠征をその広大な領土を利用した焦土作戦と、それと連動した補給線の妨害で、ガリアルム軍を消耗させた後、撤退するガリアルム艦隊を追撃して大損害を与えた人物であり、アーサリンに次ぐ宿敵と言えるだろう。
彼が会議室から出て廊下を歩いていると、同じく会議に参加していたエゴール・バラチオン中将が近づいてきて、彼に話しかけてくる。
「閣下は今回の陛下の参加をどう思われますか?」
「若い者達は喜んでおるが、その物言いだと貴官はそうではないということかな?」
バラチオン中将は、ここから彼にだけ聞こえるように声を潜めて、自分の意見を老将に語る。
「閣下もおわかりのはずです。実戦に参加した事のない陛下が、総司令官となれば指揮系統に余計な混乱をもたらすだけです」
「おそらく、それがあの小娘の演説の真の狙いであろうな」
クリューコフは飄々とした感じで、バラチオンにそう言葉を返す。
「そこまでご考察されているなら、閣下から陛下にこの度の出陣を取りやめるか、後方で督戦するように進言してください」
「バラチオン中将。この策の恐ろしい所は、そうと解っていても乗らなければならないところにある。今回の戦い小娘は宣言通り今まで通り前線で指揮を執るであろう。それに対して、陛下が安全な後方で陣取れば、我軍の将兵達は陛下を臆病者と称して、士気は大きく下がる。そうなれば、戦いどころでは無くなってしまう」
「そうかも知れませんが…」
「それに恐らくドナウリアも、フリッツ2世陛下が同じ理由で出陣してくるだろう。そうなれば、陛下だけ督戦するわけにもいかんしな」
「そうですね…」
「なに、我らが上手く陛下をコントロールすれば、良いことだ。 ……それに多くの人間は、経験からしか学ばないのだから…」
「閣下… それは― 」
クリューコフは目を瞑りながら、首を横に振ってバラチオンにそれ以上の言葉を言わせなかった。
だが、彼は後に自分のこの考えの甘さを後悔すると共に、小娘の恐ろしさを知ることになる。
こうして、出陣したオソロシーヤ艦隊の報告を、諜報部を通してフランに齎されたのであった。
その頃、そのフランとルイは…
「ルイ、オマエも本当に懲りないやつだな?」
「うぅ… すみません… 」
ルイは懲りずにアーサリンの実況動画を見て、<アーサリンたん、きゃわわ>と書き込んでしまい監視していたフランに速攻でバレて、例のお仕置きを旗艦ブランシュにある彼女の部屋で受けていた。
「まったく困ったものだ」
正座するルイの太腿に座るフランは、顔を赤らめ髪を触りながら話し掛けるが、内心ではお仕置きを理由に彼と密接できるため満更でもないと思っている。
しかし、精神はともかく体は成長して大人の女性に近づいているので、フランが14歳だった頃より体重が増えている、そのため彼の足への負担はきつくなっており、ルイには昔のように女の子が上に乗っていることを楽しむ余力はない。
(うう… 足がかなりきつい… どうしたものか… そうだ、ここはあの作戦を試してみるか!)
ルイはこの時のために、フランの恋愛中学生を利用した打開策を用意しており、それを実行することにする。
「実はフラン様に、このお仕置きをして貰おうと思い態としました。理由は、もちろん太腿に座るフラン様を堪能するためです」
「にゃっ!? にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!? にゃにゃにゃにゃー!!」
フランは驚きのあまり語彙が全て”にゃ”になってしまい、白猫フランになってしまう。
※白ニャンコのフランは「なっ!? 何を言っているんだ!? オマエはー!!」と言っております。
恋愛中学生のフランにはこの冗談は強烈過ぎて、耳まで真っ赤にして太腿から立ち上がるが、かなり慌ててしまったために、上手く立ち上がれずに四つん這いで移動して彼から距離を取る。
そして、床にぺたんと座り、厭らしい事を言った彼に向かって警戒しているため、その姿が更に猫を連想させる。
(フラン様、なんか猫みたいで可愛いな)
ルイはそんなフランを見て、そのような不逞な感情を持ってしまう。
当然ネタばらしした後に、フランからヤンデレ責めを受けましたが、諸事情により割愛させていただきます。
「うおぉぉぉぉ! リア充死ねーーー!!!」
その頃、自分の旗艦にある自室にいたロイクは、不意にこのように叫びたくなったので、叫ぶことにした。気分がスッキリした
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