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第6章 三帝激突

嵐の前 その2

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 ガリアルム帝国軍には5人の大将がおり、ルイ・ロドリーグ、ユーリ・ヨハンセン、ロイク・アングレーム、リュシエンヌ・レステンクール、アンドレ・バスティーヌの5名である。

 ルイはマントバ要塞攻略戦とマレンの戦いでの功績により、まだ若いが名将として認知されつつある。

 アンドレ・バスティーヌは、前国王の頃から軍を支える重鎮であり、熟練した用兵手腕を持つためフランからも信頼を得ており、年齢もあり現在は本国の防衛を主に任されている。

 リュシエンヌ・レステンクールは、前衛を率いての攻勢を得意とするだけでなく、多数の敵を引き受けての粘り強い防御も巧みにこなし、フランの指示を独自に解釈して行動することができる数少ない指揮官の一人でもあり、フランからの信頼も厚い。

 その豪胆な性格から、後に<ガリアルム軍のローラン>と女性には似つかわしくない異名で呼ばれる事になる。余談ではあるが独身である。

 ロイク・アングレームは、暇な時は仕事中にエロ動画を見たりする性格に難がある人物であり、エロ動画を2枠3枠で観るのは当たり前で、それで3P4P経験者と言い張る変態紳士でもある。

 しかし、フラン、ヨハンセンに匹敵する戦術家であり、機動力を活かした艦隊戦術行動で右に出る者はいない鬼才でもある。

 なお、クレールとは士官学校の同期であり、彼をフランに推薦したのも彼女である。

 だが、彼は戦死の恐れのある前線に出たがらず、当初フランの元で艦隊司令官を要請された時は断った。

 だが、クレールのある提案が、命をかけた前線での艦隊司令官任務承諾の決断を、彼にさせる事になる。

 それは、フランに会いに彼がクレールに連れられて、エゲレスティアの在仏大使館に来た時の会談の席での事であった。

「小官のような若輩者に、艦隊司令官の任は重すぎます。どうか他の経験と才能のある者にお命じなってください」

(危ない前線になんて、出てたまるか。俺はこのまま後方基地でのんびり過ごすんだ)

 ロイクが心の中で、本音を吐露しているとクレールがこのような事を質問してくる。

「アングレーム、あなた彼女はいますか?」
「いっ いるに、きっ 決まっているだろう」

(サングラスで目を隠していなければ、嘘だとバレていたな…)

 ロイクはそう思っていたが、周囲には言い方と態度でいないとすぐに察知した。
 もちろん、彼女いない歴=年齢であるが、この場にいる者全てに当てはまる事でもある。

「そうですか… せっかく、私の知り合いの<お嬢様育ちの美人で巨乳の女性>を紹介してあげようと思ったのですが…」

「わたくし、嘘をついておりました!」

 クレールの言葉を聞いたロイクは、秒で嘘だったことを白状する。

「その紹介を条件に、司令官になれと?」

「いえ、そうではありません。因みに今のアナタに紹介して、そのようなランクの高い女性を、口説き落とす自信はありますか?」

「無い!!」

 ロイクは即答する。

「私もそう思います」

 クレールも即答する。

「何だ、俺を馬鹿にしたいだけか!?」

 このやり取りでロイクが苛立つのも無理はないが、クレールの本題はここからである。

「違います。ここからが本題です。では、そのようなランクの高い女性を落とすにはどうすればいいかということです。一つの方法としてですが、自分も釣り合うだけのランクの高い男性になればいいのです」

「なるほど… 艦隊司令官となり功績をあげて、出世することで自分のランクをあげろということだな。確かに、それが一番早い方法かもしれないな…」

 変態紳士とは言え、後に<黒い稲妻>と厨二臭い異名で呼ばれる名将である。
 彼はすぐさまクレールの言わんとする所を理解する。

「そういうことです。流石に理解が早くて助かります」
「それで、俺はどれぐらい階級が上がれば、その女性を口説けるんだ? 」

「さあ、彼女がどれくらいで<妥協>するかわかりませんが― 」
「おい、今<妥協>って言わなかったか?」

 ロイクは<妥協>という言葉に引っ掛かるが、クレールは無視して自分の見解を口にする。

「私なら中将でデートぐらいしてあげましょう。付き合うなら元帥でしょうか」
「オマエの見解なんて聞いていないぞ。俺はその巨乳ちゃんの事を聞いているんだ」

 クレールは一瞬イラッとした表情を見せるが、すぐに冷静な表情に戻ると今度は、自分の推察というより、世間の一般的な声というべきものであった。

「そうですね。大将もしくは元帥ではないでしょうか? そのステータスがあれば、高い確率で口説けると思います」

「まあ、私は元帥でもデートする気は微塵も無いがな!」

(ゴスロリ姫は黙っていろ!)

 ロイクは心の中で、目の前もゴスロリ姫に突っ込む。

 フランが、隣に座っている好青年の彼にしか興味がないことは、事前に聞かされていたので、返ってきた答えは彼の予想の範疇であった。

「つまり会うのは、大将になってからのほうが良いということで、そのためには艦隊司令官になって、功績をあげろというわけか…」

 ロイクは1分程考え込む振りをした後に、席を立ち上がると背筋を伸ばして敬礼すると艦隊司令官の受領を表明する。

「了解しました! ロイク・アングレーム大尉、国家と国民の未来と平和のために、艦隊司令官の任を拝命して微力を尽くして、国家のために戦います!」

「いや、<童の者>よ。今更そんな取り繕っても、オマエの本心はミエミエだからな?」

 そして、そんなロイクをフランは呆れた表情で突っ込む。

「だっ 誰が<童の者>だ! この黒ロリ姫!」
「誰が黒ロリ姫だ!」

 二人は言い争いをはじめ、ルイとクレールが仲裁に入る。



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