109 / 154
第5章 Vive L'Empereur(皇帝万歳)
ベーブンゲンの戦い 01
しおりを挟む宇宙暦1799年7月1日―
バーデ=ヴィルテンベルク星系惑星ベーブンゲン宙域
ガリアルム・エゲレスティア同盟艦隊(仏英艦隊)15700隻と、オソロシーヤ・ドナウリア領ネイデルラント同盟艦隊(露墺艦隊)16500隻は、お互い偵察艦の索敵情報によって、相手が迫っていることを知る。
「いよいよですな。それでは、左翼はお任せする」
「了解しました。閣下もご武運を」
エリソン中将とヨハンセンは、通信で互いの健闘を祈ると陣形を組み始める。
仏英艦隊は、左翼ヨハンセン艦隊4900隻、中央にエリソン艦隊8000隻、右翼にロイク艦隊2800隻とそれぞれ横陣で布陣し横長の横陣を組む。
その陣形内容を偵察艦で知らされたコルスノフ大将は、仏英艦隊の陣形に合わせて同じく横長の陣形を組む。
その陣容はコルスノフ艦隊12000隻が、左翼から中央にかけて布陣し右翼をプロヴェラ艦隊3000隻が担う。
両軍は陣形を保ったまま堂々と進軍して、その距離を縮めていく。
両艦隊の距離が30万キロにまで迫った時、近づく会戦に双方の将兵には緊張感が漂い始め、25万キロまで近づいた時にはその緊張感はピークに達する。
そして、その25万キロで中央のエリソン艦隊4000隻が、急に進軍を停めてその場で待機する。
「どういうことだ!?」
「おそらく予備戦力だと思います」
コルスノフ大将の疑問に、参謀のマトヴェーエフ少将はすぐさま自分の推察を答える。
「ならば、我が艦隊も中央の4000隻を予備戦力とする。急いで減速して停止せよ!」
コルスノフは慌てて、自分の旗艦を含めて中央部の4000隻を停止させると、23万キロの地点で予備戦力として陣取る。
予備戦力は戦闘において、とても重要である。
不利になった戦列に送り込んで押し返したり、迂回させて背後を取ったり、有利な戦場に送り込んで一気に敵戦列を突き崩したりと用途は様々であり、勝敗に直結する働きをすることが多い。
そのため敵が予備戦力を作った以上、こちらも作っておかねば対応できず、コルスノフ大将が慌てて、予備戦力を作ったのも仕方がない。
だが、そのおかげで中央4000隻意外のオソロシーヤ艦隊は、最高指揮官が後方で停まってしまったために、指揮系統で少し混乱してしまい、その隙を当然ヨハンセンは見逃さなかった。
オソロシーヤ艦隊が、混乱を収束させられずに21万キロまで到達した時、ヨハンセンとロイクはそれぞれ右手を上げてそれぞれ攻撃命令を下す。
「主砲、一斉射! 撃てー!」
ロイクは士気の鼓舞も兼ねて、少し大仰に攻撃命令を出す。
「撃て!」
それとは対称的に、ヨハンセンはいつもどおり冷静に端的に攻撃命令を下す。
露墺艦隊は、ガリアルム艦隊から21万キロから一方的にビームを浴びせられ、次々に爆散していく。
指揮系統の混乱が収まっていないオソロシーヤ艦隊は、ドナウリア艦隊より多くの被害を出してしまう。
そして、20万キロになった時点でようやく指揮を前線の司令官に任せることで、指揮系統の混乱を収めたオソロシーヤ艦隊も反撃を開始する。
こうして、両軍の司令官から攻撃命令が発せられ、本格的な砲撃戦が繰り広げられる。
開戦当初こそ指揮の混乱で被害を出したオソロシーヤ艦隊ではあったが、数の有利が覆るほどの被害は出ておらず、前線での兵力は英仏艦隊が約11700隻、露墺艦隊約12400隻で英仏艦隊が不利である。
現在の仏英艦隊の布陣状況は、左翼ヨハンセン艦隊4900隻、中央のエリソン艦隊4000隻は4万キロ後方で予備戦力として控えており、右翼に前線指揮を任された副艦隊司令官アーネスト・コルトハード少将率いる約4000隻、最右翼にロイク艦隊約2800隻となっている。
対する露墺艦隊の陣容は、左翼は指揮を任された副司令官のセルゲーエフ少将率いる約5400隻、中央では3万キロ後方でコルスノフの予備戦力4000隻、右翼は同じく指揮を任されたネヴゾロフ准将率いる約4000隻、最右翼はドナウリア艦隊約3000隻となる。
開戦から約15分後―
数で不利な仏英艦隊の前線は、少しずつ苦戦を強いられ徐々に押され始める。
旗艦ヴァンガードの戦術モニターで戦況を見ていたエリソン中将は、味方が押されていると見るや否や予備戦力から増援の指示を出す。
「右翼のコルトハード艦隊が押されているな…。予備戦力から500隻を向かわせろ」
「はっ」
エリソンの増援指示を受けた副官のパッカー准将は、すぐさま予備戦力から500隻を向かわせる手筈を整える。
5分後、500隻の増援を受けたコルトハード艦隊は約4500隻となり、対面するネヴゾロフ准将率いる約4000隻より、数的有利を得て今度は逆に押し始める。
だが、それを戦術モニターで見ていたコルスノフ大将も、すぐさま増援指示を出す。
「こちらも予備戦力から、500隻をネヴゾロフ艦隊に向かわせろ!」
「はっ」
6分後、ネヴゾロフ准将率いる艦隊は約4500隻となり、対峙するコルトハード艦隊と同数となったので、再び押し返し戦況は拮抗する。
「左翼のヨハンセン艦隊が苦戦しているようだな。500隻を彼の艦隊の右翼に付けて援護させろ」
「はっ」
5分後、500隻がヨハンセン艦隊の右翼について援護を始める。
500隻の援軍を得たヨハンセン艦隊は、実質約4900隻から5600隻となって、前面のセルゲーエフ艦隊約5400隻に数的有利となって反撃を始める。
7分後にセルゲーエフ艦隊に、500隻の増援がやって来て約5900隻となり、ここも戦況は元に戻ってしまう。
こうして、両艦隊は激しいビームの応酬を行い、まさしく一進一退の戦闘を続けることになる。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
DEADNIGHT
CrazyLight Novels
SF
総合 900 PV 達成!ありがとうございます!
Season 2 Ground 執筆中 全章執筆終了次第順次公開予定
1396年、5歳の主人公は村で「自由のために戦う」という言葉を耳にする。当時は意味を理解できなかった、16年後、その言葉の重みを知ることになる。
21歳で帝国軍事組織CTIQAに入隊した主人公は、すぐさまDeadNight(DN)という反乱組織との戦いに巻き込まれた。戦場で自身がDN支配地域の出身だと知り、衝撃を受けた。激しい戦闘の中で意識を失った主人公は、目覚めると2063年の未来世界にいた。
そこで主人公は、CTIQAが敗北し、新たな組織CREWが立ち上がったことを知る。DNはさらに強大化しており、CREWの隊長は主人公に協力を求めた。主人公は躊躇しながらも同意し、10年間新しい戦闘技術を学ぶ。
2073年、第21回DVC戦争が勃発。主人公は過去の経験と新しい技術を駆使して戦い、敵陣に単身で乗り込み、敵軍大将軍の代理者を倒した。この勝利により、両軍に退避命令が出された。主人公がCREW本部の総括官に呼び出され、主人公は自分の役割や、この終わりなき戦いの行方について考えを巡らせながら、総括官室へ向かう。それがはじまりだった。
【新作】読切超短編集 1分で読める!!!
Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。
1分で読める!読切超短編小説
新作短編小説は全てこちらに投稿。
⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。
空のない世界(裏)
石田氏
SF
働きながら書いてるので更新は不定期です。
〈8月の作者のどうでもいいコメント〉
『本格的な夏になりました。学校では夏休み、部活に励む学生、夏の催し夏祭り……ですが、楽しいことばかりではない夏でもある。山のようにある宿題、熱中症等健康悪化、夏休みのない大人。何が楽しくて、こんな暑い中祭りに行くんだと言いながら、祭りに行く自分。まぁ、色々あると思いますが、特に脱水には気をつけましょう。水分不足で、血液がどろどろになると、脳梗塞の原因になります。皆、熱中症だけじゃないんだよ。ってことで、今月も仕事しながら執筆頑張ります』
完全に趣味で書いてる小説です。
随時、概要の登場人物更新します。
※すいません、途中字数オーバーがありますが、御承知ください。(アルファポリス様更新前の上限一万字の時のことです)
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる