78 / 154
第4章 第一次対大同盟戦
大同盟の足音 02
しおりを挟む「今日は、少し機嫌がいいではないか。何か良いことがあったのか?」
大本営のフランの執務室に来てからというもの、従姉妹のシャーリィが終始機嫌がいいことにフランは気付き、紅茶を入れている彼女にそう質問するが「なんでもありませんわ~」と明らかに機嫌のいい返事が返ってくる。
シャーリィは機嫌のいい感じの声で、このような質問をしてくる。
「ところで、ロドリーグ様は、今日はご一緒ではないのですね?」
「ルイならあそこだ」
フランはシャーリィの入れてくれた紅茶を飲みながら、窓から見える大本営の入り口近くにある広場を閉じた洋扇で指す。
そこには、仮設の舞台が設置されており、その舞台にはクリスと『プーレちゃん』、それと新マスコット『マンショちゃん』が、子供たちと触れ合っていた。
これは、子供と触れ合うことで軍のイメージをアップするための戦略の一環である。
まあ、結果はあまり出ないと思われるが…
「ルイはプーレちゃんの中の人になっている。ちなみにマンショちゃんの中の人はヨハンセンだ」
「まあ、ヨハンセン閣下があの中に?」
新マスコット『マンショちゃん』は、ヨハンセンがデザインした可愛いペンギンのマスコットである。
ルイがプーレちゃんの中の人になっているのは、戦術を指南してくれているヨハンセンへの恩返しからであるが、それはシャーリィと会わせたくないフランの巧みな誘導によるものであった。
各司令官は、来るべき戦いに備えて訓練を行い艦隊の練度を上げるが、毎日というわけではない。
訓練のない日は、このような雑務をこなすこともある。
「大変ですわね~。そうですわ! 私も閣下やクリスさんにはお世話になっている身。何かお手伝いしましょう」
「まっ、待て! シャーリィ!」
「大丈夫ですわ、フラン様。私は以前にも一度、お手伝いしたことがありますから。それでは、フラン様。私行って参りますわ」
シャーリィはそう言うとご機嫌な感じで、フランの制止も耳に届かず執務室を出ていった。
「まずいぞ! ルイとシャーリィを近づける訳にはいかない! だが、私があの舞台に立つのは色々問題がある…」
子供達相手のイベントに宰相級の彼女が出ていくのは、警護の問題もあるし子供達を驚かす事になってしまうであろう。
「そして、何より子供向けイベントに乱入した事があの鉄仮面女(クレール)の耳に入れば、後でここぞとばかりに嫌味を散々言われるに違いない。それは、腹が立つ…」
「男取られると思って、子供イベントに乱入するなんて、この黒ゴスロリ、マジうけるんですけど~」
フランの想像の中のクレールは、何故かギャル語であったが、それはフランがそこまで焦っていた事を意味しており、おそらくこれに近い嫌味を聞かされるであろう。
フランはそのチート頭脳をフル回転させて、ある策を思いつき実行する。
「よいこのみんな~! マンショちゃんとプーレちゃんと一緒に写真を撮りたい子は、一列に並んでね~。ああ、ダメ~! マンショちゃんとプーレちゃんを殴るのはダメ~」
舞台の上では、一部の元気な子供にボスボスと殴られるマンショちゃんとプーレちゃんの姿があった。
ようやく撮影会が始まった頃に、舞台の袖にシャーリィがやってきて、撮影の協力を申し出ると、彼女は子供達を整列させる係を任されることになる。
そして、シャーリィが子供達を整列させようと舞台に出てくると、急にカメラのフラッシュがいくつも彼女に浴びせられる。
「なっ? 何ですの!?」
「白ロリタン、キターーーー!!」
カメラを構えた大きなお友達が、そう言いながら一斉にシャーリィの写真を撮り始める。
大きなお友達は、シャーリィの可愛らしすぎる容姿から、軍人とは思わず彼女の事を白いゴスロリを着たイベント参加のコスプレイヤーだと思ったと後に供述している。
彼らがそう思ったのも無理はない、シャーリィは小柄で可愛らしいため、およそ軍人には見えない。
ルイやヨハンセン、ロイク、そしてフランもおよそ軍人には見えないが、軍服を着用しているため軍人だと認識できる。
だが、シャーリィはその軍服がゴスロリ風に改造されており、更にその色が同じゴスロリ軍服のフランのモノが正式の軍服と同じ黒であるので軍服だと認識できるが、シャーリィのモノは白色であるためにコスプレ衣装にしか見えない。
そのため、軍人ではなく広報所属の軍服風ゴスロリを着用したコスプレイヤーと間違われても仕方がなかった。
シャーリィが以前手伝いをした時に、可愛らしい白ゴスロリを着た少女がいたと話題になり、その話が広がりその話を聞いた大きなお友達が、彼女を写真に撮ろうとカメラを持って待っていたのであった。
だが、シャーリィの写真は彼女の安全上の問題もあり、大きなお友達は警護に付いていた憲兵隊と護衛兵にすぐさま確保される。
プーレちゃんの中の人ルイは、大量のカメラのフラッシュに驚いて怯えるシャーリィを心配して、彼女に近づこうとするがその前に新たなプーレちゃんが現れ、彼をシャーリィに近づけさせないように行く手を遮ってくる。
(何だ、このプーレちゃんは? どうして、僕の邪魔を…)
ルイが目の前のもう一体のプーレちゃんの行動に疑問を抱くと、その答えはすぐに最悪な形で知ることになる。
「おい、どうして、シャーリィに近づこうとしているんだ?」
目の前のプーレちゃんのクチバシが開くとその中には、お約束のヤンデレ目をしたフランの顔が現れ、そう言ってルイがシャーリィに近づこうとする理由を尋ね(尋問し)てくる。
プーレちゃんは鶏のキグルミで、クチバシが開いた部分には外が目視できる強化ガラス製の覗き窓が付いており、フランはそこからルイをヤンデレ目で威嚇してくる。
(こわい!! でも、こんな怖い目をしたプーレちゃんを良い子に見せては駄目だ! 夢や希望を与えないどころか、トラウマを与えてしまう!!)
ルイプーレちゃんはそう素早く判断すると、子供達と自分の精神衛生の為にフランプーレちゃんの開いたクチバシをすぐさま手で閉じて、ヤンデレ目を隠すことに成功する。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる