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第3章 北ロマリア戦役

マントバ要塞攻略戦 03

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<私と仕事どっちが大事なの!?>

 前回フランに彼氏でもないのに、こう質問されてしまったルイ。
 果たしてどう答えれば、この難局を無事乗り切れるのか?

 因みに巷ではこうらしい。

「もちろん、君が大事だよ」だと「だったら、何故いつも仕事を優先させて、私のことを放っておくのよ! 絶対に嘘よ!」となり不正解

「君も仕事も大事だよ」だと「どっちも大事なのは、分かっているわよ! でも、アナタはいつも仕事のことしか考えてないじゃない! 仕事と同じくらい私のことを、考えていると本当に言えるの?!」となり不正解

「仕事が大事だよ」は論外

「寂しい思いをさせて、そんなことを君に言わせてごめんね」だと「ごめんね。仕事が大変なのは分かっていたけど、寂しくて…。でも、私のことを思ってくれているなら大丈夫だよ」で、正解らしい。

 ルイは頭の中で、シミュレーションしてみる。

「もちろん、フラン様が大事です」だと「だったら、何故任務の話をしたのだ! この場を乗り切ろうとして、口先だけの出任せを言っているのであろう!」となって包丁でグサー

「フラン様も任務も大事です」だと「どっちも大事だと?! 私はルイが一番なのに! 私の事を一番に考え無いなんて許せない!」となって包丁でグサー

「寂しい思いをさせて、そんなことをフラン様に言わせてごめんね」だと「どこで、そんな歯の浮くような言葉を覚えたのだ…。女だな! 他の女を相手に覚えたのだな!? この裏切り者~!!」となって包丁でグサグサー

 もしかして、案外「任務が大事です」はどうだろうか…

「そうか…」となって、包丁で逃げられないようにまず足を刺されてから、その後に「まずは、私の事を見なくなったその右目からだな…」となり、体中刺されて部屋中血の海となるので、もちろん論外

(アレ…全部詰んでいるぞ…)

(※あくまでルイの脳内フラン相手に行われたシミュレーション結果です)

「もちろん、フラン様のことは大事だと思っています。ですが、今回の要塞攻略任務の成否は、この後の戦いに大きく関わるものです。そうなれば、我々が目指す未来の子孫達の為の国を創るという目的に支障をきたすかもしれません」

 ルイは考え抜いた末に、自分達の目的を答えにして、フランへの回答をぼかして逃げることにした。

「そうだな…。そのために、今まで多くの血を流してきたのだからな…」
 自分達の戦う為の大義名分を理由にされては、フランは納得せざるを得なかった。

 フランは彼の太股から立ち上がると、キッチンの方に歩いていく。

「今回はシチューではなく、カレーを作ったのだ。準備をするから、椅子にでも座って待っていてくれ」

 ルイは一瞬包丁を取りに行ったのかと警戒したが、キッチンに向かうフランが彼にこう言ってきたので、安心することが出来た。

「僕も手伝います」

 ルイはそう言って、食事の準備を手伝うことにした。

 食事の後、フランとルイは今回の要塞攻略任務の話を始める。

「今回のマントバ要塞攻略任務は、先程オマエが言った通り次の作戦に大きく関わる」

 ボローナ・マントバ両駐留艦隊が撃滅された事により、補給船団を護衛する余分な艦隊がドナウリアには無くなった。

 その為にロマリア侵攻艦隊は補給が断たれる事になり、恐らく近日中に撤退を開始する事になる。

 マントバ要塞はその侵攻艦隊の補給中継施設である為に、大量に物資の貯蔵がされており、艦隊が撤退に際して要塞に向いそのまま立て籠もる可能性もある。

 侵攻艦隊がボローナを経由して、マントバへ向かうのか。
 それとも東のウェネテ星系惑星ヴェネーシアに向かって本国に帰還するのか。

「今のままでは、二つの選択肢があることになる。そして、その両方に艦隊を配置できるほど、我が艦隊には余力がない。そのために、マントバを攻略して敵の選択肢を一つにしたいのだ」

 マントバ要塞が攻略された事を知った敵艦隊は、補給が乏しい中で要塞を取り戻す選択よりも、最短の東の航路を突き進んで本国への帰還を選ぶだろうと考えるフランであった。

「私はその航路であるウェネテ星系惑星ヴェネーシアのある宙域で、奴らを迎撃する準備をする」

 フランの話を聞いたルイは、フランにクレールから聞かされた要塞攻略の条件の事について尋ねてみる。

「ヴェルノン大佐から、要塞をなるべく壊さないで欲しいと聞いたのですが、要塞を再利用するおつもりですか?」

「ああ…その事か…。そのとおりだ」

 フランは戦後におこなわれる講和条約の内容に、マントバ・ボローナ以西の宙域を割譲させるつもりでいて、次の戦いで侵攻部隊を壊滅させることができれば、艦隊に余力のないドナウリアは恐らくその条件を飲んでくるであろう。

 その時に要塞の破損の程度で、駐留させる艦隊の規模が変わってくる。

 艦隊数に余力がなく更に経済的にも余力のないガリアルムにとって、駐留艦隊の数が少なく済めば維持費も人件費も削ることができ、そのリソースを他に使うことができる。

「それでクレールと作戦を計画していた時に、要塞をできるだけ破壊しないようにしようとしたのだ。まあ、あの時は『童の者』か、ヨハンセンに任せるつもりだったから、そんなお気楽な事を考えでいたのだ…」

 フランはそこまで話すとルイに向かって、少し身を乗り出して心配そうな表情でこのように言葉を続ける。

「だから、無理に要塞の損傷率にこだわる必要はない。後のことは私が必ず何とかする。だから、戦況次第では全壊させても構わない。何故なら、一番はオマエが…兵士達が生きて帰ってくることなのだから…」

「そこは戦況を見ながら、臨機応変でやってみます」
「そうか…」

 ルイの返事にフランは少し経切れの悪い感じで返事を返す。
 それは、本心ではやはり彼に戦いに行って欲しくないからであった。



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