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第3章 北ロマリア戦役
補給遮断作戦 03
しおりを挟むロイクは艦隊に残った大型輸送船を容赦なく破壊させる。
戦況モニターに映し出される敵補給艦隊を表す簡略CGモデルが、自艦隊の攻撃で撃ち減らされる度に小さくなっていくのを見ながら彼はこう思っていた。
「このCGモデルが小さくなっていくにつれて、実際に人が死んでいる…。初陣の時はその考えが頭をちらつき心がざわついたというのに、今では冷静に戦況を確認しているだけになっている。人とは慣れるものだな…」
ロイクは、旗艦の艦橋に設置されている指揮官席に座って、戦術モニターを眺めながらそう呟いた。
「閣下、何かおっしゃいましたか?」
側に控えていたゲンズブール大佐が、上官の呟きに反応して指示かどうか確認する。
「いや、なんでもない。それより、敵の輸送船は一隻だけ、残すように艦隊に厳命せよ」
「はっ!」
この指示の意図は単純で、敵の占領地域を単独で行動しているロイク艦隊は、物資の補給ができないために、この補給艦から奪うためである。
大型補給艦が残り一隻になった時に、ロイクは降伏勧告を出して、相手はそれを受け入れる。
相手も補給物資目的とは解っていたが、自分達の命と天秤にかければ仕方がなかった。
ロイク艦隊は、物資を奪うとその大型補給艦をその宙域に残して、何処かへと立ち去った。
ロイクの戦術の基本は機動と速攻であるが、レーダーの発達した現代に置いては、折角の機動と速攻もその価値は半減されてしまう。
そこでフランは彼の艦隊の全ての艦を、ステルス性を有する高速艦にして、機動と速攻に奇襲を加わることにした。
そのステルス性は優秀で、例えレーダーに反応したとしても流星群と誤認される程である。
護送船団のレーダーにロイク艦隊が、2万キロまで映らなかったのはその為である。
但しステルス艦は、通常の艦よりコストと建造工程に掛かる時間が増加しており、そのため配備が間に合わずに彼の指揮する艦隊数は、1800隻とヨハンセン艦隊3000隻比べれば約半分となっている。
ロイクが士官学校に入った理由は、ずばり死にたくないからである。
彼はヨハンセンほどではないが、戦史や軍記に興味を持ちそれを学んだ。
そして、彼は学んでいる内にある事に気付く。
「戦争は階級が上であればある程後方の安全な所で指示を出して、下になればなるほど使い捨てのような危険な場所に送られ、消耗品のように死んでしまう。死にたくなければ、士官学校に入って出世するしか無い!」
ガリアルムでは彼が幼い頃から、徴兵制が採用されており男女問わずに、兵役の義務
が課せられている。
当時、ガリアルムでは国王シャルルの方針によって、戦争は行われていなかったが周辺国では、度々領地を巡る戦いがおこなわれていた。
そのため彼は、いつこの国でも戦争になるかわからないと考え、士官学校に入り出世することを目指す。
入学当初『童の者』で『陰の者』だった彼は、自分に自信を持てずに成績が振るわなかったが、一年の時に訓練で目の近くを怪我して、サングラスを掛けるようになってからは、サングラスによって『陽の者』になったような気がして、本来の才能を発揮できるようになり成績も上位になる。
その時に成績首位を争ったのが、クレールであった。
だが、彼は三年の初めにある事に気付く。
それは、ルイが気付いた事と同じで、<成績が優秀な者は、前線に配属される事になる>ということで、そんな危険地帯に配属されれば元も子もないことから、彼はルイと同じく<脳ある鷹は爪を隠す>で成績を程々に押さえ後方の基地勤務になるようにする。
ルイと馬が合うのはそういう考え方が似ているからかも知れない。
彼は計画通り卒業してから後方基地勤務をしていた。
彼の計算通りなら、この後方基地で安全に順調に階級を上げていくはずであった。
だが、彼の誤算は<爪を隠さずブイブイ飛んでいた>頃を知っているクレールが、フランの側近になったことであった。
護送船団が襲撃されて壊滅したことは、すぐさま生き残った補給艦からボローナに報告され、更にドナウリア本国にも報告され、もちろんロイク艦隊からフランにも報告が送られ、彼女も知る所となる。
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「フフフ…」
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「殿下、何を一人笑っているのですか、気持ち悪いですよ」
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「それは深読みしすぎです殿下。私はあくまで作戦の成功を喜んだだけです」
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「フフフ…。殿下は私の心は洞察できても、ロドリーグ提督の心は無理なのですね。きっと、恋愛脳お花畑がフィルターとなってしまっているのでしょうね」
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