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第1章 反乱軍討伐戦

ソンム星系の戦い 03

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 ソンム星系の戦いで、最初に砲撃を開始したのは正規軍であった。
 フランがエティエヴァンとの通信を一方的に切ったのは、そこで予定通りに敵の艦隊の三分の一が機雷原を通過した為で、その艦隊に攻撃命令を出すためであった。

 フランは席から立ち上がると、攻撃命令を出す。
「さあ、諸君! 予定通りいこうか…。攻撃を開始せよ!」
 彼女の攻撃命令を受けた艦隊の戦艦は、主砲の斉射を次々と始める。

 戦艦から放たれた強力な粒子砲は、光の速さに近い速度で反乱軍艦隊目掛けて飛んでいき、最初の標的である偵察艦のエネルギーシールドを削り、無力化させるとその船体を溶解させ引き裂き爆散させる。

 フランの艦隊の戦艦はこの日の為に2年前から用意させていた新型艦であり、その主砲の有効射程距離は2万1千キロメートルで、反乱軍艦隊の射程外から一方的に攻撃することが出来る。

 反乱軍が気づかなかったのは、新型艦の外見は間違い探し並みのマイナーチェンジだった為で、もちろんフランによる指示である。

 戦艦が砲撃を続けている中、フランは戦況を見ながらルイに先程の通信の意図を話し始める。

「先程の通信には3つの意図があった。1つ目は尊大なエティエヴァンを侮辱して怒らせ、冷静な判断を失わせること。まあ、これは常套手段であるから上手くはいかないだろうが…。2つ目はこの先制攻撃への反応を遅らせるためだ」

 1つ目は副官に宥められたことによって予測通り失敗した。
 2つ目は、エティエヴァン達はフランを捕らえる話をするのに夢中になり、彼女の艦隊の動きから目を離し対応に遅れている。

「そして3つ目だが、これが実は一番大事な事で、奴らに私の存在をアピールすることだ」
 フランの言葉を聞いたルイは、その意図にすぐさま気付く。
「フラン様は自らが餌となることで、反乱軍に撤退の選択肢を消させて、誘引するつもりですね!?」
「流石は(私の)ルイだ。奴らは逃げた父上達より私を捕らえる事に活路を見出すであろう。そして、その為に先制攻撃を受けて数を減らされても、退却せずに戦闘続行を選択するであろう。そして…」

 フランがそこまで話すと、オペレーターから敵の動きについて報告が入る。
「敵の前衛艦隊が、反撃のために前進を開始しました!」
 
 報告を受けたフランは、すぐさま次の指示を出す。
「そうか。では、作戦通り敵艦隊が2万キロメートルまで達したら、徐々に後退を開始せよ。そして、前進して突出してくる艦に砲撃を集中させ、確実に落としていけ」
 彼女の命令を受けた艦隊はゆっくりと後退をしながら、反撃してくる敵艦に砲火を浴びせ一隻ずつ確実に撃沈させていく。

 エティエヴァンと後続の全ての艦が機雷原を抜け、戦闘を続ける前衛艦隊と合流した時、反乱軍艦隊は400隻まで撃ち減らされており、正規軍は未だ損害ゼロであった。

「どういうことだ! どうして我が艦隊だけが損害を受けておるのだ!?」
 エティエヴァンの怒号混じりの質問に、副官は恐る恐る説明をする。

「それは、おそらくですが…。敵の艦隊には新型艦が数百隻は配備されているようで、そのために性能で負けており、更に数で負けておりました。ですが、これからは敵の後方の艦隊が参戦するまでは、数は我が艦隊が有利です」

 エティエヴァンは、副官の状況分析を聞くと命令をだす。
「後方の艦隊が参戦する前に、できるだけ敵を撃ち減らせ! ただし、あの白い艦は撃沈してはならんぞ!」

 両軍の艦隊は、激しい砲撃戦を繰り広げる。
フランはその砲撃戦の中、少しずつ艦隊を後退させ後方にいるヨハンセンの艦隊との距離を詰める。

 ルイは初めての実戦で正直怖くて仕方がなく、同じく初陣のフランの様子を伺うと彼女はいつもと変わらぬ感じでおり、冷静にモニターを見ながら戦況を見ている。

 その時、敵艦から放たれた粒子砲がルイ達の乗艦するブランシュに命中し、艦橋は激しい光に襲われる。
 幸い粒子砲はエネルギーシールドで弾かれて、事なきを得るがルイは肝を冷やす。
(これが、実戦か…。怖すぎるだろう……)

 ルイが内心ガクブルでそう思っていると、艦長のオーロル・ユレル大佐がフランに進言する。
「王女殿下。本艦は少し前に出すぎていると思います。目立つ艦の為に敵に狙われる可能性があり、殿下に万が一の事が起きぬとも限りません。大きく後退することを進言致します」
 ルイがその進言を聞いて、艦長ナイス進言と思っているとフランは彼の期待を裏切る返答を艦長にする。

「この艦が目立つように造らせているのは、戦う兵士達にこの艦が前線でいる事をわからせるためだ。そうすれば前線で指揮を執る私を見た兵士達の士気があがる。それに誰が後方の安全な位置でいる者の指揮で命をかけて戦うというのだ? 構わぬ、この位置を維持しながら後退せよ」

 何より実戦経験のないフランが兵士達の支持を得るには、こうして前線で自らを危険にさらして指揮を執るのが一番の策であった。

 フランの返事を聞いた艦長は、彼女の勇敢さとカリスマにすっかり心酔した表情で、命令に返答し艦長席に帰っていった。

(艦長あっさり籠絡されないで!! こうなったら僕がもう少しうまいことを言って、後退させるしかない…)
ルイはそのように考えたが、すぐさまこのようにも考える。

(だが、もしいつものあの瞳孔が開いた怖い目で説教されたら、それでなくても実戦で心が折れそうなのに、完全に折れてしまう……。こんな複数の人がいる前で、それは避けなくては……)
 彼はいつものように日和ことにした。

 フランは、反乱軍が自分を捕まえる為にこの艦を撃沈しないことを計算していたが、戦いでは何が起きるかはわからない。
それ故に、ここで死ぬようなら自分はそこまでの取るに足らない人物だと考えており、死んでも仕方がないと思っていた。

 そして、何よりも大好きなルイと一緒に死ぬのならそれでもいいかと、彼にとっては甚だ迷惑な考えを持っていた。

 そうこうしているうちにも、両艦隊の激しい砲撃戦は続き正規軍の艦隊は、徐々に反乱軍艦隊を誘引していく。
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