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第1章 反乱軍討伐戦

反乱勃発 03

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 マリヴェル博士のKY発言に、艦橋の空気が一瞬凍ったのを感じたフランは、少しドヤ顔の表情から不安そうな顔になってルイを見る。

「シンプルイズベストで、合理的な殿下らしい艦名だと思います」
 彼は褒めているのかどうか微妙なフォローを入れるが、フランはルイが肯定したと思ったのでドヤ顔に戻った。

 マリヴェル博士は、手に持った鞄を開けると中から元帥杖と肩章を取り出す。
「殿下、国王陛下より預かってきたものです」
 博士はそう言って、フランにその杖と彼女の着ている黒を基調とした軍服の肩に肩章を取り付ける。

 その杖と肩章を見た者達は驚きの声を一斉にあげる。
 何故ならばそれは元帥ではなく、この国では一人しか与えられない階級である【大元帥】であったからである。
【大元帥】とは全軍の総司令官に与えられる称号で、この国の全軍への指揮権を持つ階級であり、もちろん現在その位にあるものは国王である。

 それは大元帥が全軍の指揮権が緊急事態下で王女とはいえ、国王から弱冠17歳の少女に与えられた事を意味するものであり、彼女の才幹次第ではこの艦隊は全滅するかもしれないということである。

 彼女は艦隊に出撃命令を出すと、各守備艦隊の司令官を旗艦に呼びだして、作戦会議を行なうが、作戦は既にフランの頭の中で決まっており、それを伝えるだけであった。
 
「ロイク・アングレーム代将、貴官は一年前から預けている艦隊を率いて、右翼から反乱軍の後方に回り込み本体と挟み撃ちにせよ」
「はっ」
 ロイク・アングレームは敬礼をしながら、命令に対して了解の返事をする。

 彼は常にサングラスを掛けており、その理由は士官学校一年の訓練中に事故に遭い、その時に目の近くに負った怪我により光に弱くなり、それ以来サングラスを着用するようになった。

 だが、それは表向きで実は怪我は完治しており、勿論光にも弱くはない。
 彼がサングラスを掛け続けている理由は、相手の視線が気にならなくなり、尚且自分の視線を隠せるからである。

 更に彼はサングラスを掛けることで、<実際の自分ではない自分になれる>ことに気づき、着用するようになってから自分に自信が持てるようになり、成績も首席を取るまでになった、3年になるまでは……

「本隊は私が直接指揮を執る。貴官達には、その責務を全うすることを期待する。以上解散!」
「はっ!」
フランの命令を受けた各守備艦隊の司令官は、敬礼をすると各艦に戻っていった。

 各守備艦隊の司令官が素直にフランの命令に従ったのは、彼女が王女だからということもあるが、この司令官達がフランとクレールによって、この二年間の内に異動して来ていた彼女の息のかかった者達であったからである。

 ルイは、自分の艦隊に戻ろうとするロイクに廊下で声をかける。
「大尉…、今は代将でしたね。お久しぶりです、ロイクさん」
「ルイ君か…、久しぶりだな。相変わらず我儘お姫様に、振り回されているみたいだな。気の毒なことだ」
「いや…、そのようなことは……」
ルイはロイクのフランへの的を射た毒舌に対して、苦笑いをしながらそう答えるしかなかった。

 ルイがロイクと出会ったのは一年前で、彼がクレールに連れられてフランに会いに大使館に来た時であった。
「あの女性士官は確か…、参謀本部所属クレール・ヴェルノン中尉…。一緒にいるサングラスを着用した男性士官の方は初めて見る人だ…」
 ルイが大使館の待合室で、誰かを待っている二人を見てそう呟くと、後ろからフランに声を掛けられる。

 フランに声を掛けられてルイが、彼女のいる後ろに振り向くと、そこには瞳孔が開いてハイライトが消えたヤンデレ目のフランが立っていて、ルイに顔を近づけると続けてこう話しかけてきた。

「それ程クレールの事が、気になるのかルイ…? そう言えば、初めて会った時も見惚れていたな…」
(近い! そして、相変わらず目が怖い!)
 
 ルイは怯えながら、頑張って言葉を発する。
「ぼっ、僕が気になるのは…、彼女が何故ここにいるかという事です」
「それは、私に会いに来たからだ。正しくは”横にいる者を引き会わせに来た”だがな…」
 フランはクレールの横にいる男性士官を、閉じた洋扇で指しながらそう答えた。

「あの方は?」
「何だ、ルイ? あの男が気になるのか? 私が他の男と会うのが、そ・れ・ほ・ど・気になるのか? 安心しろ。彼奴と会うのは、あの者が私の役に立つかどうか見極めるためだ」
「そうなのですか…」
「まあ、クレールが選んだ者だから、問題ないとは思うがな」
そう言って、フランは自分を待っている二人の元に歩いて行くが、すぐに歩みを止めてルイの方に振り向き、チラチラと彼を見てくる。

 どうやら、自分が他の男と会う事をルイが気にしているのか、様子を見ているようであったが、鈍感スキル持ちの彼はそんな気持ちを察する訳もなく、このように解釈した。
(わかったぞ。さっきから僕を見てくるのは、きっと一人で会うのが心細いのだな。まだまだ子供だな!)

「フラン様、僕もご一緒してよろしいでしょうか?」
 ルイはフランの矜持を考えて、あくまで自分から願い出たように同行の許しを求める。
 そして、フランの方はルイが自分と他の男が会うのが嫌だから、同行を申し出てきたと頭お花畑で解釈して嬉しそうに許可を出す。
「仕方のない奴め…。許可しよう」
 こうして、ルイはフランに付き従って、二人と会うことになる。

 フランが二人に近づくと、クレールとロイクは敬礼しフランとルイが答礼すると、クレールが話を切り出してくる。
「殿下、彼がロイク・アングレーム大尉です」
「フランソワーズ王女殿下、お初にお目にかかります。ロイク・アングレームであります」
 クレールに紹介されたロイクは、続けて自己紹介をおこなう。

 それに対してフランはこのように返事をする。
「まあ、まずは場所を変えようではないか。会議室を取ってあるから、そこでゆっくり話をしようではないか」
 そして、四人は会議室へ向かうことになる。
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