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第6章 逆襲の魔王軍(仮)
224話 オーラの刀
しおりを挟むオーク本拠点侵攻作戦を僅かな懸念を残しながら終わった次の日、参加者達はアルトンの街に向けて帰還を始める。紫音はリディアに修理のためにミスリル装備を預けると、馬車に乗って家路についた。
夕方頃にミレーヌの屋敷に帰ってくると、ミレーヌとアリシアが待っていた。
アリシアはいつもなら紫音に安否を訪ねつつ手を握ってきて、振り解こうとしても離さないのに、今回はお姫様らしく手を前で組んで言葉だけで済まして、残念そうなレイチェルと共に帰って行く。
グイグイ来ずにお淑やかにしているアリシアは、とても可愛らしいお姫様であった。
その二人のやり取りを見ていた、リズがアキに質問する。
「アリシア様、どうしたッスかね。いつもなら、紫音さんにもっとベタベタしたがるのに…」
その質問にこのような考察を披露するアキ。
「これはアレだね…。<押しても駄目なら引いてみな! 太陽と北風作戦>だね…」
「おおー。で、どんな策なんスか?」
リズはアキにどのような作戦なのか続けて質問する。
「力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとする北風のようにグイグイ行けば、紫音ちゃんはコートを脱がされないようにする旅人と同じで、若干ひいてしまう。だが、太陽のように暖かく照らせば、旅人が暑くなってコートを脱いでしまうように、紫音ちゃんも“あれ? アリシアが距離をとってくる、寂しい、こっちから近づこう“と、なるんだよ!」
「<駆け引き>というやつッスね!」
アキに作戦内容を聞いたリズは、大人の人間関係を垣間見た気がした。
その当の紫音はこのように思っている。
(あんなお姫様しているアリシア、初めて会った時依頼だ。どうやら、ようやく距離感というものを知ってくれたようだね)
彼女はアキを失った悲しみから、友達をつくらずに他人と距離をとって深く関わってこなかった。そのために紫音自身も他人との距離感を間違えて、グイグイ行ってしまう時があり逆にグイグイ来られると、どのように対処していいかわからないので、正直今回のアリシアの態度はありがたい。
それに紫音には、アリシアの態度の変化より考えねばならないことがあった。
それは、折れた女神武器の事で街についた時に、フィオナに連絡して自分の新しい女神武器が授けられてないか尋ねたが、授かっていないと答えが返ってくる。
そのため彼女は、折れた女神武器で戦うか別の武器を入手するかとなり、今の彼女の資金では彼女の力を発揮できる武器は買えない為に、前者を選ぶことにした。
折れた武器で戦うには、オーラで刀身を作るかオーラウェイブで攻撃をしなければダメージを与えるのは難しいであろう。
オーラウェイブを連発するより刀身にして、斬撃を繰り出すほうがオーラの消費を抑えることが出来るのだ。問題は通常サイズの刀身なら、<女神の秘眼>発動時のオーラスキル強化で今の紫音でも作り出すことが出来るが、それを長時間維持出来るかどうかである。
その頃、黒野☆魔子ことリーベは完成させた原稿を渡しに出版社まで来ていた。
三日三晩徹夜したために、昨日の夜から今までぐっすり寝ってしまったので、こんな時間になってしまった。
「すみません、ノーマさん。こんな時間になってしまって…」
「いえ、先生。こちらこそ、無理を言ってしまってすみませんでした。これで、月刊OTOME COMICに勝負を挑むことが出来ます! 本当にありがとうございました!」
リーベが遅くなったことを編集長のノーマ・シュリアーに謝罪すると、彼女はそう言って逆に感謝を述べてきた。
「それでは、私はこれで失礼します。徹夜が続いたので、まだ眠くて…」
リーベはまだ少し眠そうな顔でそう言うと、ノーマは労いの言葉を掛けてくる。
「はい、お疲れ様です、魔子先生。ゆっくり休んでください」
電池が切れそうなリーベとは逆に、ノーマはエンジンが掛かってやる気モードに入る。
だが、そんなノーマのやる気を無視して、部下のシェリル・ジレットがこのようなことを言ってくる。
「編集長~、私も帰りますね」
「何を言っているの?! これから入稿して製版するんだから!」
「ええ~。でも、もう7時ですし…」
「残業に決まっているでしょうが!」
「ええ~」
シェリルがノーマにブーブーと文句を言って、ノーマが彼女を説教しているやり取りを見て、リーベは元の世界にいた時の職場の光景を思い出して、懐かしさに浸りながら隠れ家へと帰ることにした。
次の日の早朝、紫音はさっそく折れた刀を持ってオーラの刀身を作り出す訓練を行う。
(刀身をイメージして、集中…、集中……)
紫音はオーラブレードの要領で、刀にオーラを送り込み刀に宿ったオーラを、刀身をイメージしながら折れたところから伸ばしていく。
そして、伸ばしたオーラを刀身の形に成形させオーラの刀身(オーラの刀)を完成させる。
「何とか出来た」
サタナエル戦で<女神の秘眼>によるオーラスキル強化で、オーラの刀を使っていた紫音はそのコツを覚えており、本来なら難易度の高いこの技を時間は掛かったが成功することが出来た。
「はっ!」
紫音は、そのオーラの刀で近くにある地面にさした藁の束を斬ると、問題なく斬ることが出来た。作り出すのに時間も掛かかり、切れ味も少し悪いが練習すればスキルに磨きが掛かり、改善されるであろうと紫音は思い少し満足な顔をする。
その時どこからともなく声が聞こえてきた。
「その程度の出来で満足な顔をするとは、先が思いやられるな、シオンよ!」
「この可愛い幼女ちゃん声は、マオちゃん!」
紫音は、その年下声を聞き分ける無駄な特殊能力を発動させて、声の持ち主を当てる。
「だれが、幼女だ! 我を子供扱いするなと言っておろうが!」
マオが怒りながら着ているフードマントへの魔力を中断し、ステルス機能を止めて姿を表し頭に被ったフードを脱ぐと白銀色の綺麗な髪が顕になる。
マオはコホンと咳払いをして、仕切り直すと紫音を窘め始めた。
「よいか、シオンよ。今の貴様のその貧弱なオーラの刀では、魔王どころかオーガすら倒すことは出来ぬ!」
「それは酷いよ、マオちゃん。オーガぐらいは倒せるよ」
紫音がマオの厳しい言葉に反論する。
「ならば、そのオーラの刀であの岩を見事に斬ってみよ!」
彼女は、高さ2メートル幅2メートルぐらいある岩を指差して、紫音に斬るように命じた。
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