125 / 386
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する
90話 四天王との死闘
しおりを挟む前回までのあらすじ……
猛虎球場での試合、大阪トラトラズ対愛知リザードズ戦。
7回裏ラッキー7、5対3で2点を追いかける大阪トラトラズの代打、漢・波乱万子が、ホームランを放ちリザードズ投手ヒュドラを、ノックアウト(物理)して降板させることに成功する。
トラトラズは1点を返し点差は1点、次の打者は同じく代打、天河紫音。
果たして大阪トラトラズは、追いつきさらに逆転することが出来るのか?
#####
アキによってヒュドラ撃破は成されたが、人類側の苦戦は未だ続いていた。
開戦時、人類側は約300人いたが、リザードとヒュドラとの連携攻撃によって、人類側の戦闘可能人数は約130人、負傷者は約120人、残りは力及ばず死に戻ってしまっている。
リザード側は200体近く居たが、今は四天王2体と副官2体、残りは80体程。
ユーウェインと紫音が四天王ナイルと戦い、タイロンがナイルの副官キューバを引きつけている間に、他の者達がリザード達と戦ったり負傷者を後方まで連れて行ったりしている。
波乱万子ことアキがMP切れで後方に下がってくると、回復役達も大忙しで回復作業を行う。
「自分で回復薬が飲めるまで回復した人は、あとは回復薬を飲んで回復してください!」
後方では、その様な声や負傷者の呻き声で満ちていた。
「これが、戦場なんだ……」
アキはその様子を見て思わずそう呟いてしまう。
ナイルは紫音が間合いのギリギリで高速で移動して、死角に移動し続けるため苛立ってきていた。
そして、ついに自ら紫音との距離を詰め武器を彼女に向けて振り降ろすが、紫音はオーラステップで跳躍力を上げて、何とか斜め前方に思い切り身体を投げ出して緊急回避して、その後受け身を取り立ち上がる所謂ローリングで回避する。
ナイルがその立ち上がりを追撃しようとすると、尻尾を避けて左斜め後ろから最高位魔法剣を溜め終わったユーウェインが斬りかかった。
紫音がローリング回避したのはユーウェインの為に、ナイルが彼に背中を向けさせるように誘導するためである。
「よくやってくれたシオン君! 魔法剣フリーズ!」
ナイルはそれを咄嗟に反応して、左盾で防ぐが無理な体勢で防いだため発動したフリーズの氷の柱から逃げられずに、盾と左腕を氷の柱に氷漬けにされてしまう。
ナイルは氷の柱を破壊しようと右腕の剣にオーラを溜め始める。
「シオン君、今だ!」
いつの間にか距離をとった紫音が、居合いの構えで攻撃せずに刀に溜めておいたオーラを更に溜めて、オーラウェイブを放とうとしていた。
ナイルはそれに気づくと、氷の柱を破壊するオーラを溜めるのが間にあわないと判断し、剣にオーラを溜めるのを辞め、そのオーラの剣で自らの左腕を切断し始める。
それを見た紫音は慌てて、居合の構えからオーラウェイブを放つ。
「オーラウェイブ!」
居合の構えから放たれたオーラウェイブは、かなりの速さでナイル目掛けて飛んでいく。
だが、少しの差でナイルは左腕を自ら切断して、紫音の居合オーラウェイブを回避する。
「自分の腕を!?」
紫音はその光景に唖然として見ていると、後ろから声を掛けられた。
「シオンさん、後ろから敵が迫っているわ!!」
エスリンの呼びかけに紫音が反応して後ろを振り向くと、両手に曲剣を持ったミシシッピが自分目掛けて接近してきている。
ヒュドラが撃破されたことにより、後方で様子見をしていたミシシッピは副官のクチビロに遠距離部隊の指揮を任せると、紫音を標的と定めて向かってきていたのだった。
紫音はミシシッピの右腕から繰り出される斬撃を刀で受け流すが、すぐさま左腕の剣の斬撃が紫音を襲う。
刀は右の攻撃を受け流し中なので、紫音は反射的に大刀に左手だけ残して、脇差を右手で素早く抜くと、その抜刀の勢いで相手の左斬撃に脇差を当てて、斬撃の起動を外に反らす事に成功させると、そのままバックステップをして距離を取る。
「スコシハ、ヤルミタイデスネ。ヤハリアナタカラ、コロスベキデスネ」
ミシシッピはそう言うと構え直す。
紫音は一度脇差を鞘に収めた。
(強引に脇差でぶつけて払ったから、その時の衝撃で右手が痺れている……)
紫音は悟られないように、左手で刀をしっかり握って右手は添えるだけで構えると、その紫音を攻撃しようとミシシッピが動き出す。すると、彼の頭を目掛けて2発の魔力の矢が飛んでくる。
ミシシッピは二刀流で切り払うと、さらに2発飛んできて、それを切り払うと更にもう2発飛んできた。
これはリズが放ったモノでミシシッピを暫く足止めするために、彼女はわざと時間差で2発ずつ放っていたのだ。紫音はその隙にミシシッピから距離を取り、右手の痺れの回復を待つ。
ミシシッピは、リズの攻撃をすべて払うと紫音に突進してくる。
紫音は先程の打ち合いで一人では厳しいと判断して、援護が来るまで更に距離を取ろうと思ったが、取りすぎてミシシッピが別の人間を襲うかも知れないと思って、一定の距離を保ちながら待つことにした。
ミシシッピも紫音が一定の距離を保っていることから、その意図に気づいて切り札を出す。
「テールステップ!」
ミシシッピは両足で地面を蹴ると同時に、尻尾でも地面を強く叩いて更に加速力を得る。
その加速力は紫音のそれを越え、彼女に追いつき右斬撃を繰り出した。
「私よりも、速い!!」
紫音は、咄嗟に刀で受け流しながら、ミシシッピの右側に体を逃して左の斬撃を受けないようにするが、ミシシッピはそのまま前に行きながら、再びテールステップで急加速して、紫音の死角に回り込もうとする。
秘眼で強化された動体視力で、紫音はミシシッピの動きを追うが体がついてこない。
彼女は右斜め後ろからのミシシッピの左の一撃目を何とか受け流すが、二撃目の右の斬撃は刀で間に合わないため、脇差を左手で逆手持ちして抜くとそのまま二撃目の剣に刃を当てて、受け流そうとするが力負けして押されてしまう。
「負けるもんか!!」
紫音は力負けして、自分の方に押された左腕を頭で支えながら、体を左に捻ってミシシッピの右斬撃を左に何とか受け流す。
受け流し終えた右手の刀で紫音はミシシッピの顔面を斬りつけるが、バックステップして回避されてしまう。
紫音の顔に、先程脇差をぶつけたときに負傷した頭の傷から血が流れてきたので、刀を握った腕で拭うとミシシッピの次の攻撃を対処する。
だが、先程のような受け流しがそうそう出来るわけもなく、だが、何とか回避を行って致命傷を避けるが、少しずつダメージを負っていく。
加速力で負けているため、逃げることも出来ず紫音は防戦一方だった。
リズは何とか援護をしようとするが、ミシシッピがそれを見込んで紫音と距離を取らないため、魔力の矢を撃てないでいる。
(私は勘違いをしていた……。新しい武器を手に入れたけど、私自身が劇的に強くなったわけじゃなかった…… )
少しずつダメージを受けながら、紫音はそのようなことを考え出していた……
0
お気に入りに追加
724
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜
藤*鳳
ファンタジー
楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...??
神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!!
冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる