122 / 386
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する
87話 ヒュドラの脅威
しおりを挟むヒュドラがウォーターブレスで猛威を振るい始めたその時、ヒュドラの首にオーラのビーム砲ともいうべき攻撃が当たり、首が一つ千切れて地面に落ち黒い煙となって消滅する。
「フェイタルアロー!」
それはリディアがガーンサルンヴァの特殊の力を発動させ、大量のオーラを消費して放ったフェイタルアローであった。
「あと2発、必ず当てる!」
「私も負けてられないッス! ミー、GCファミリアあの首に一点集中ッス!」
GCファミリアから放たれた6つの矢は首に全弾命中するが、首を落とすまでのダメージは与えられていない。
そのため、リズがもう一斉射しようとすると、ヒュドラの首の一つがこちらを向いてウォーターブレスを吐こうとしている。
それを見たリズは咄嗟にミリアの後ろに逃げて、みんなにも声をかけた。
「みんなも、早くこっちッス!」
皆はリズに言われるがまま、ミリアの後ろに移動する。
「えっ!? えっ!?」
ミリアがこの状況に驚いていると、ヒュドラのウォーターブレスが飛んできた。
「あわわわ……」
ミリアがその恐怖ですくんで動けなくなっていると、肩にいるケットさんが両前脚を前に出して、肉球からマジックバリアを展開する。
「ナーー!」
ミリアの前に展開されたマジックバリアが、ウォーターブレスを防ぎきった。
「えぅ、えぅ……」
ミリアはマジックバリアに守られていたとはいえ、目の前でウォーターブレスが迫ってきたことの恐怖で泣きそうになっている。
それを見たソフィーが、ミリアの頭を撫でながら慰めた。
「怖かったわね。でも、アナタも冒険者ならすぐに泣きそうになては駄目よ」
リズは泣きそうになっている親友を横目にケットさんに話しかける。
「流石はケットさんッス! 必ず防いでくれると思ったッス!」
ケットさんはリズに向かってジャンプすると尻尾で頭を叩く。
「ナー(怒)」
「あう、ごめんッス。ミリアちゃんもごめんッス」
ケットさんに怒られたリズも、ミリアの頭を撫でながら謝る。
「でも、おかげで助かったわ!」
リディアはそう言ってガーンサルンヴァを構え直すと、予告通り残り2発を見事に命中させ、首をさらに2つ落とすことに成功した。
そして、リズも先程自分がダメージを与えた首にさらに2度一斉射し、合計18発魔法の矢を命中させ一つ首を落とすことが出来る。
リズ自身も弓で攻撃すればよかったのだが、初めての大規模戦でアイギスシャルウルと弓を併用しながら、更に自分の周囲に注意を割く余裕がなかった。
クリスはウォーターブレスを回避し着地しようとした時、ぬかるんだ地面で足を滑らせ体制を崩す。
ウォーターブレスの水によって、地面がぬかるみ状態になっていたためであった。
「しまった!?」
体勢を何とか立て直した時、ナイルがその隙きを見逃すわけはなく彼女に攻撃を仕掛けてくる。
「!!」
クリスは回避が間に合わない。
「やらせるか、縮地!!」
間一髪のところをスギハラが縮地で加速してクリスを助けるが、彼女を庇った彼自身は深手を負ってしまった。
「ぐっ!!」
だが、彼が庇っていなければクリスは、死に戻りとなっていただろう。
「団長!? しっかりしてください!」
クリスはスギハラの深い傷を見ると、急いで彼を回復役のいる所まで連れて行こうとするが、ナイルがそれを黙ってみているわけがなく二人に攻撃を仕掛けてくる。
ナイルの死角にオーラステップで、急加速したユーウェインが現れ魔法剣を放つ。
「魔法剣アイスストーム!」
ナイルはその攻撃に反応して剣で受け止めるが、剣が衝突した金属音と共にその場で冷気の竜巻が発生する。
ナイルは冷気が苦手なため、急いでバックステップして距離を取った。
「これ以上、貴様の好きにはさせん! クリス君、こいつの相手は私に任せて、スギハラを早く!」
「お願いします」
クリスはスギハラを引きずって、急いで回復役のいる所まで連れて行く。
「隊長、一人では無茶だ!」
タイロンはリザードと戦いながら、一人でナイルに対峙するユーウェインに、無謀であることを伝える。
「そのような無茶は、私の無理でこじ開ける!!」
それに対しユーウェインはこう答えるのであった。
要塞戦は一進一退の戦いから、ヒュドラの攻撃で徐々に人間側の負傷者による離脱が増えてきている。
エレナも他の回復役達に混じって、負傷者回復に追われていた。
そこに深手を負ったスギハラが連れ込まれてくる。
「エレナさん、早く回復を!」
「はい、わかりました」
珍しく焦っているクリスを見て、エレナは急いで回復魔法をかけた。
ヒュドラは残った5つの首で、ウォーターブレスによる攻撃を続けている。
リディア達弓部隊も何とか残りの首を落とそうと攻撃するが、火力が乏しくようやく首を一つ落とせたと思ったら、一つが再生するというイタチごっこになっていた。
まだ幼いリズとミリアは要塞近くの安全地帯まで下がって、そこで高級魔法回復薬を飲みながら、消費したMPと戦闘から来る精神的疲れを回復させる。
すると、要塞の後方の空から、雷のような音がかすかに聞こえてきた。
「何の音ッスか?」
「雷?」
「少しずつこちら側に、近づいてきているッス」
二人が雷と勘違いした音は、近づいてくるラッキー7号のジェット音で、そのコクピットの前に座るアキが、要塞とその先にいるヒュドラを発見する。
「デカイのがいるね……。アレは首の数が減っているけど、たぶんヒュドラだよ!」
「アキちゃん、戦局はどう?」
「うーん。まだ、遠くてよく見えないけどああいう化け物がいる時は、苦戦している事が多いね、ゲームや漫画だと……。よってプランBで行くよ!」
戦場に近づくにつれて見えてくる戦況を見た二人は、人類側が苦戦しているというアキの予測は見事に的中していることを確認した。
「りょ、了解!」
要塞に来る道中、紫音とアキは外に手を出して、Dカップの重さを楽しんでいただけではない!
ちゃんと、要塞についた時のプランを、いくつか事前に話し合っていたのだ。
0
お気に入りに追加
724
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
ある化学者転生 記憶を駆使した錬成品は、規格外の良品です
黄舞
ファンタジー
祝書籍化ヾ(●´∇`●)ノ
3月25日発売日です!!
「嫌なら辞めろ。ただし、お前みたいな無能を使ってくれるところなんて他にない」
何回聞いたか分からないその言葉を聞いた俺の心は、ある日ポッキリ折れてしまった。
「分かりました。辞めます」
そう言って文字通り育ててもらった最大手ギルドを辞めた俺に、突然前世の記憶が襲う。
前世の俺は異世界で化学者《ケミスト》と呼ばれていた。
「なるほど。俺の独自の錬成方法は、無意識に前世の記憶を使っていたのか」
通常とは異なる手法で、普通の錬金術師《アルケミスト》では到底及ばぬ技能を身に付けていた俺。
さらに鮮明となった知識を駆使して様々な規格外の良品を作り上げていく。
ついでに『ホワイト』なギルドの経営者となり、これまで虐げられた鬱憤を晴らすことを決めた。
これはある化学者が錬金術師に転生して、前世の知識を使い絶品を作り出し、その高待遇から様々な優秀なメンバーが集うギルドを成り上がらせるお話。
お気に入り5000です!!
ありがとうございますヾ(●´∇`●)ノ
よろしければお気に入り登録お願いします!!
他のサイトでも掲載しています
※2月末にアルファポリスオンリーになります
2章まで完結済みです
3章からは不定期更新になります。
引き続きよろしくお願いします。
4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~
TOYA
ファンタジー
~完結済み~
「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」
この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。
その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。
生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、
生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。
だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。
それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく
帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。
いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。
※あらすじは第一章の内容です。
―――
本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜
藤*鳳
ファンタジー
楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...??
神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!!
冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる