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第7章 少女新たなる力を手に入れる

番外編 『BL漫画家別荘殺人事件(解決編)』

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 最初にお詫び
 箸休めのつもりで始まったこの茶番、今回で終えるつもりでしたが、予想外に話が長くなってしまったので、今回は急遽本編無しでお送りします。

 #####

 前回のあらすじ
 リズンの推理は悉く外れ、事件は迷宮入りに近づいていく。

 ###

 なんやかんやで逮捕されたカシードを、見送ったミレーヌ警部はリズンに尋ねる。

「真犯人はわかったかね?」

 その警部の質問にリズンはもう一度推理しなおす

(部屋は密室…、アキさんは頭を強く打って死亡…、ダイイングメッセージは『ア』…)

 その時リズンの全身に稲妻が走り、大胆な推理が閃く。

「解ったッス! この事件の真実が!」
「本当かね、リズン君!」

「今度推理を外したら、今迄で一番のあざとリズちゃんで、お姉さんに“また、推理を外してごめんなさい、紫音お姉ちゃん…”って、謝ってもらうからね!」

 紫音はどさくさ紛れに、そのような注文を出す。
 もちろん、紫音の注文は無視され、リズンの推理が語られる。

「この事件は、アキさんが自分で足を滑らせて、頭を机の角で強打した不幸な事故だったッス!」

「な、なんだってー!」

 アキの推理にお約束のリアクションをした後に、ミレーヌは質問する。

「だが、リズン君。ダイイングメッセージの『ア』が残っているのだぞ? これをどう説明するのだね?」

 ミレーヌのこの当然くるこの質問に対して、リズンは推理して用意していたその答えを話す。

「それは、自分の過失で頭を強く打ったアキさんが最後の力を振り絞って、これが事故だと知らせるために書いた自分の名前『アキ』の『ア』だったッス。つまりは自分が犯人という意味ッス!」

「なるほど、確かに筋は通っているな…」

 ミレーヌ警部は、リズの新たな考察を聞いて一応は納得する。
 だが、リズの推理に今度は紫音が別の質問をする。

「じゃあ、リズンちゃんが解いた密室トリックは何だったの? 推理通りにサムターンにはセロテープを張った跡が残っていたんだよね?」

「アレは… きっと… 偶然残っていただけッス…」

 リズは自信なさそうにそう答えた。
 その時、部屋の入口の方から、このような声が聞こえてくる。

「この事件、私が解決しましょう!」
「誰だね!?」

 一同は声のした部屋の入口を見ると、そこには探偵のような服装をしたミリアといつもの服装のエレナが立っていた。

「ミリアちゃんとエレナさん!」

 紫音がそう言うと、二人は一同の近くまで近寄ってくる。

「その服装ということはミリアちゃんが、事件を解決してくれるのかい?」

 近寄ってきた二人にミレーヌが話しかけると、ミリアは首を横に振って答える。

「では、エレナさんなの?」

 紫音がエレナに尋ねると、彼女はこう答える。

「いいえ、解決するのはこの名探偵『ニャーロック・ケットさん』です」

 そう言って、ミリアの肩に乗っているホームズの帽子とインバネスコート姿のケットさんを紹介する。

「ナー」

 ケットさんは“よろしく”と、挨拶するように鳴くとさっそく自分の推理を話始める。

「ナー、ナー」

 ケットさんが、そう鳴くとミリアがうんうんといった感じで、頷きながらケットさんの推理を聞いている。

「なるほど。ケットさんの推理を、ミリアちゃんが通訳してくれるんだね? ミリアちゃんはワトソン役だね!」

 その様子を見た紫音が、設定説明じみたことを言ってくる。

「ワトソンの役柄は、ホームズの通訳じゃないけどね」

 ソフィーは一応突っ込んでおく。

 一同がケットさんの推理を聞いたミリアのその通訳に注目していると、彼女は隣のエレナの耳元でぼそぼそと何かを伝える。

「“この事件は殺人事件で、密室トリックはリズンちゃんの言う通りです。そして、犯人はアナタです”と、ケットさんは言っています!」
 エレナが一同にケットさんの推理を披露し始める。

「エレナさんが、説明するの!?」

 紫音はさっそくこのシステムに突っ込みを入れる。

「アナタ達の推理スタイル効率悪すぎでしょうが! ミリアが頑張って話しなさいよ!」

 ソフィーも続けて、突っ込みを入れる。

「それは無理だよ、ソフィーちゃん。ミリアちゃんは恥ずかしがり屋さんだから、こんなに大勢の前では話せないよ」

「甘やかしては駄目よ。そんなことだから、アナタ達のPTはグダグダなのよ!」
「それ本編の話だよね?!」

 紫音とソフィーが、本人達を置き去りにしてツッコミを応酬しあう。
 ケットさんはフラット姉妹の言い合いを無視して、ミリアに推理を話し出す。

「ナー、ナー」

 鳴き声を通訳したミリアがエレナに犯人を伝える。

「“犯人は、『ノエミさん』アナタです!”と、言っています」

 一同はノエミを見るが、彼女はジト目のまま表情を崩さずにいる。

「でも、ケットさん。ダイイングメッセージは『ア』ッスよ?」

 リズがケットさんに、この疑問をぶつける。

 すると、ケットさんからミリア、そしてエレナに推理が伝えられて、その疑問の答えが語らされる。

「“ダイイングメッセージの『ア』は、本当は『ノ』で、ノエミさんが『ノ』に『ア』の上の部分を書き足して、『ノ』から『ア』にして捜査を撹乱させたのです”と、言っています」

 その推理を聞いたノエミは動揺を隠せないと言った感じになる。

 そして、ケットさんはミリアに指示を出して、床に落ちていたある物を拾わせる。
 ミリアの手袋をはめた手には、<白猫耳カチューシャと白猫尻尾付きメイド服>が握られていた。

 そのメイドセットを見たノエミは、遂に観念して事件の真相を話す。

「アキさんは…私を部屋に呼び出すと…

『なあ、ええやろ。この<白猫耳カチューシャと白猫尻尾付きメイド服>を付けて、“御主人様、ご奉仕するにゃ”って、言って! そしたら、お姉さん好きなもの買ってあげるから!』

 と…、私にしつこく迫ってきました…」

「アキちゃん! 番外編でまで、何をやっているの!?」

 紫音がノエミの回想を中断してまで、ツッコミを入れる。

「そして私は…しつこく迫るアキさんを…、突き飛ばしてしまい…」
「それで、君に突き飛ばされたアキ君は、運悪く机の角で頭を強打したわけだな…」

 ミレーヌ警部は、同情した様子でそうノエミに質問する。

「はい…」

 ノエミは項垂れながら、ミレーヌの推察を肯定した。

「ミレーヌ警部、これ正当防衛にならないんですか!? 今回のことは完全にアキちゃんが悪いと思います! いえ、100%アキちゃんが悪いです!!」

 紫音がミレーヌにノエミの減刑を願い出ると、他の者達も次々と彼女を擁護しだす。

 ソフィーが呆れた感じで、

「まあ、最近本編でも欲望丸出しの時あるしね…」

 ミリアが小さな声で

「私も…本編で…猫のメイドさんの…セリフをお願いされました…」

 ミレーヌが可愛い姪の猫耳姿を見られなかった事を思い出して、少し怒りながら

「なるほど、前科ありか…。これは、ノエミ君の正当防衛も打倒かもしれんな」

 各々がノエミを擁護して、アキの自業自得と話は進んでいく。

(みんなひどいよ…。私は役でそうしただけなのに…)

 死体役で床に倒れているアキは、心の中でそう思っていた。
 ノエミは一応逮捕されたが、後に正当防衛が成立することになった。

 ~ BL漫画家別荘殺人事件(完)~



「みんな酷いよ。私は役を演じただけなのに…」

 アキは一同が部屋から居なくなった後に、床から起き上がる。

「ソフィーちゃん、おかわり~! むにゃ~、むにゃ~…」

 椅子に座って、まだ眠っているアフラが寝言を喋る。

「これは…、チャンス!!」

 アフラの髪色は薄いオレンジがかった色で、アキは鞄からその色の猫耳メイドカチューシャを取り出すと、気持ちよさそうに寝ている彼女が目を覚まさないように、慎重にカチューシャを頭に装着させる。

「やっぱり、アフラちゃんはトラ猫耳が似合うわ~!!」

 アキは懲りずに欲望を満たした。


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