138 / 386
第4章 冒険者の少女、新しい力で奮戦する
101話 山ガール様の贈り物
しおりを挟む山ガールの格好をしたミトゥースは、改めてソフィーに問いかける。
「さあ、アナタが無くしたのは、どのブレードかしら?」
「ソフィーちゃん、今度こそちゃんと答えてね!」
紫音はソフィーに、今度こそミトゥースの望む答えを返答するように念を押す。
「私が無くしたのは、鋼のブレードです」
その答えを聞いた、ミトゥースは笑顔でソフィーをこう評価する。
「アナタはツンデレで、気が強いけど正直者ですね」
<誰がツンデレよ!>
ソフィーは喉まで出かけたが、紫音とアフラが余計なことを言わないように睨んでいるので、その言葉を何とか飲み込んだ。
「そんなアナタには……、私特製のこの双剣をあげましょう!」
ミトゥースがそう言うと、今まで見せていた3つのブレードが輝き出す。
そして輝きが収まった時、一対の双剣に姿を変える。
「ミトゥースのデュアルブレード、略してミトゥデルードよ」
(ミトゥース様ってネーミングセンスないなぁ、しかも凄い略し方だし……)
紫音はそう思いながら、話を黙って聞いていた。
その思いはソフィーも一緒で、突っ込みたいのはやまやまだが、また山ガール女神様が機嫌を悪くして居なくなっても面倒なので、ツッコミ属性である彼女はその欲求を何とか押さえて我慢していた。
「さあ、ソフィー。受け取りなさい」
ソフィーはミトゥデルードを受け取ると、その軽さに驚く。
「軽いわね……、まるで女神武器みたい」
ミトゥデルードは、女神武器と同じ金属の色をしており、片方のブレードにだけ宝玉がはめ込まれていた。
「同じ二振りの剣でも、シオン・アマカワのとは違って宝玉は片方だけなのね」
「紫音というか天音の女神武器は特別なの」
「それと、アフラ。アナタのミトゥトレットの調整をやり直するわ。右手のミトゥトレットを私の方に」
「はい」
アフラはミトゥースに言われた通りに、右手に装着したミトゥトレットを彼女の前に出す。
ミトゥースは自分の前に出されたミトゥトレットに手をかざすと、その手が輝き始めそれに応じてミトゥトレットも輝き出す。
ミトゥースは調整をしながら、アフラに説明を始める。
「前回のアナタの戦いを見ていたけど、流石に反動が大きすぎたわね。自分で設定しておいて何だけど、使用後のアナタの右腕を見て軽く引いちゃったわ……。そこで、ちょっとリスク設定を軽くするわね。威力を少し引き下げる代わりに、三回使えるようにするわ。ただし、一回使うたびに腕に痛みが走るようになって、それが蓄積されていって三回使ったら右腕が暫く使えなくなるようにするから、気をつけて使いなさい」
(リスクを無くすのはしてくれないんだ……)
紫音がそう思っていると、ミトゥースが彼女を見てこう言ってくる。
「紫音、アナタ今、リスクは無くさないんだって顔をしたわね?」
紫音は自分の思考を看破されて、「す、すみません……」と思わず驚いて謝ってしまった。
「別に謝られることでもないけど、強大な力にはリスクを付けておくべきなのよ。でないと、人というものはその力を考えなしに使ってしまうの。それは、この世界のバランスを崩すことになってしまうわ」
「でも、私達は魔物を倒すためにその力を使っています。それでも、ダメなんですか?」
”紫音、ここからはアナタにだけ直接頭の中に話します。いいですか? 私達神からすれば人間も魔物も動物もこの世界の同じ生き物なのです。私達は心正しい者たちの為に、人間が魔物に一方的に負けないように、少しだけ贔屓しているのです。なので、リスクのない強大な力を、与えるわけにはいかないのです”
ミトゥースはそう言ったが、客観的に見れば女神達はかなり人間側に加担している。
「あのー、山ガ―ミ様。私のこのミトゥデルードも特殊能力を発動させれば、当然リスクはあるんですよね?」
「山の女神です。紫音、アナタが山ガール様なんて呼んだから、名前が混じってしまっているではないですか!」
「すみません……」
(何か、今日は謝ってばっかりだなぁ……)
紫音はそう思いながら、ミトゥースに謝った。
「もちろんです、ソフィー。ミトゥデルードの特殊能力とリスクは……」
ミトゥースがそこまで言うと、彼女の腕時計がピッピッピッとアラームを鳴らし、時間を知らせる。
「あら、もうこんな時間……。明日仕事で早いのよね、今夜はここまでということで」
腕時計で時間を確認したOL山ガ―ミ様は、そう言うと光のゲートを創り出しその中に消えていった。
「…………」
残された三人は暫くの沈黙の後
「取り敢えず、私達も寝ようか?」
「そうね、私達も明日早いしもう寝ましょう」
「私もすごく眠いよ、おやすみー」
三人は装備を外すと、何事も無かったかのようにテントの中に入っていき就寝した。
次の日―
辺りが明るくなりテント内も明るくなった為、目の覚めたソフィーは自分の足元に置いてあるミトゥデルードを見て、昨日の夜中の出来事が夢でなかったことを確認する。
「夢じゃなかったんだ……」
ソフィーがひとりそう呟くと、紫音が目を覚まして体を起こし挨拶してくる。
「おはよー、ソフィーちゃん」
「おはよう、シオン・アマカワ」
お互い朝の挨拶を交わすと
「髪がぐちゃぐちゃだよ―」
紫音が寝ていて乱れた髪や、寝癖を治しながらそう言った。
「私も髪がグチャグチャだわ……」
ソフィーもそう言いながら、鞄からヘアーブラシを取り出して髪を梳かし始める。
お嬢様らしく身だしなみを整えたソフィーは満を持してツッコミを始める。
「昨日の夜中のアレは何だったのよ! 私のブレードを盗んだと思えばそれで小芝居して、ソレを突っ込んだらへそ曲げてどこかに消えて、それで何故か私が謝罪させられて!」
ソフィーのツッコミと愚痴の混ざったツッコミはまだ続く。
「まあ、新しい武器に交換してくれたからそれには感謝しているけど……、でも、時間だからといって説明せずに急に帰っちゃったから、肝心の特殊能力の内容とリスクが解らないじゃない!」
「ソフィーちゃんは、朝から元気だね―。大丈夫だよ、そのうち説明しに来てくれるよ」
「来なかったら、どうするのよ?」
「その時は、実際使ってみるしかないと思うよ……。何がリスクかは決め打ちで考えて、覚悟するしか……」
「他人事だと思って、いいかげんな事を言わないでよ!」
ソフィーはそう言いながら紫音の両肩を掴んで、激しく前後に揺さぶる。
「頭がフラフラするよ~」
紫音がソフィーに頭を揺らされフラフラさせていると、アフラが騒がしいこの状況に目を覚ます。
「うるさいな~。もう、朝ご飯なの~?」
アフラがまだ眠そうな顔でソフィーに尋ねる。
「アンタは、それしか言えないの!? 能天気キャラもいい加減にしなさいよ!」
ソフィーはそう言いながらアフラの両肩を掴んで、半分八つ当たりで激しく前後に揺さぶった。
「ふぇ~、頭がフラフラするよ~」
アフラは何故自分がこんな目に合わされたのか解らずに、頭を揺らされフラフラさせている。
「流石にそれは駄目だよ。只の八つ当たりだよ、少し冷静になってソフィーちゃん」
「そうね……。悪かったわね、アフラ……」
紫音の言葉にソフィーは少し冷静になってアフラに謝った。
「お腹が減っているから、おこりんぼ―になっているんだよ。とりあえず、朝ご飯を食べようよ」
「そうね……、そのとおりかも知れないわね……」
「じゃあ、朝ご飯にしようか。まあ、朝ご飯と言っても非常食だけど……」
アフラの意見に残りの二人も賛成して、朝食を食べるために三人はテントから出ると朝ご飯の非常食を食べた。
0
お気に入りに追加
724
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
おまけ娘の異世界チート生活〜君がいるこの世界を愛し続ける〜
蓮条緋月
ファンタジー
ファンタジーオタクな芹原緋夜はある日異世界に召喚された。しかし緋夜と共に召喚された少女の方が聖女だと判明。自分は魔力なしスキルなしの一般人だった。訳の分からないうちに納屋のような場所で生活することに。しかも、変な噂のせいで食事も満足に与えてくれない。すれ違えば蔑みの眼差ししか向けられず、自分の護衛さんにも被害が及ぶ始末。気を紛らわすために魔力なしにも関わらず魔法を使えないかといろいろやっていたら次々といろんな属性に加えてスキルも使えるようになっていた。そして勝手に召喚して虐げる連中への怒りと護衛さんへの申し訳なさが頂点に達し国を飛び出した。
行き着いた国で出会ったのは最強と呼ばれるソロ冒険者だった。彼とパーティを組んだ後獣人やエルフも加わり賑やかに。しかも全員美形というおいしい設定付き。そんな人達に愛されながら緋夜は冒険者として仲間と覚醒したチートで無双するー!
※他サイトにて重複掲載しています
異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜
藤*鳳
ファンタジー
楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...??
神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!!
冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる