41 / 65
38.痛いのも苦しいのも嫌
しおりを挟む
「叫ばれる前に口塞いどいて。」
1人がそう言って、後ろから口を塞がれる。何これ?なにがどうなってこんなことになったの?冬月くんは???
訳がわからないままなんとか拘束から抜け出そうともがいていると、お腹の辺りでガチャカチャと音が鳴る。やがてシュルッという音とともに、お腹の圧迫感から開放される。
目の前の男は今しがた引き抜いたそれを僕の顔の近くまで持ってくる。半分に折り畳み、1度弛ませたと思った瞬間、
──バチンッ!!!
大きな音がなり目の前で破裂する。僕は恐怖で全身が硬直した。
「痛いの、嫌だよね?」
そう言われて、僕は何度も頭を縦に降った。「暴れないし騒がないって約束出来る?」顔を覗かれて訊ねられる。痛いのも辛いのも勘弁して欲しい。僕はまた頭を数回縦に振った。
「もう解放していいよ。なーんでも言うこときいてくれるらしいから。」
その言葉を聞いて、後ろの男は「なんだよ、無理やりの方が燃えるのに…」とか言いながら舌打ちをして、目の前の男の命令に素直に従って僕の拘束を解く。体の自由を得た僕は、大きくため息をついた。
「今から何があっても全部君の同意があったってことになるけど、それでいいよね?」
僕の前に立つ男が言う。冗談じゃない。痛いのも苦しいのも嫌なのに、僕がそんなことに同意するわけないだろ。
「嫌だ。」
僕は相手の顔をはっきり見てそう答えた。相手の眉間がピクっと動く。「痛い目見たいの?」そう言ってまた僕のベルトで脅そうとしてくる。
「痛いのも苦しいのも嫌。僕が嫌だと思うものは全部嫌だって言ってんの。」
僕は臆することなく、目の前の男にそう言ってのける。前の男は面倒くさそうな顔をして、後ろの男に顎で指示を出す。後ろの男は嬉しそうに僕の体をまた拘束しようとしてきた。
僕はサッと身を交して入口のドアの方に逃げる。最初は突然の事で避けられなかったけど、体の小さな僕はその分身軽だ。僕を欺いている相手の隙だらけの動きから逃げるなんて簡単だ。
ただ相手は二人。ドアまでまだ距離がある。ここからは、心理勝負になる。
「僕は、暴れない、騒がない。と約束したはずだよ。逃げないとは言ってない。」
そう言いながら少しづつドアの方へ後ずさる。見苦しい言い訳だが、ここは、こっちのペースに引き込む方が勝ちだ。僕は毎日秋瀬とこの勝負をしているんだ。負けないぞ。もうすぐ鍵のところに手が触れる。これを回せば逃げられる…
「おい東雲!早くしろ!」
……え、
一瞬の油断が僕の負けを確定させてしまった。手をぐいっと引っ張られ、今度は様式トイレの上に座らせられてしまう。そんな現実を置き去りに僕は頭を項垂れ、先程の言葉を頭の中で何度も反芻しようとしてた。あいつ今なんて?思い出そうとしても、肝心なところが聞こえなかった。
僕が何も言わずに黙っているのを見て、命令をしている方の男は拘束する男に僕のベルトを渡す。僕は後ろ手にベルトでしっかり締められてしまった。
命令していた男は、僕の前髪を引き上げると、「せっかく優しくしてやろうと思ったのに。もうお前いらねぇわ。」と僕の顔に唾を吐いてきた。なんて不潔で下品なやつなんだろう。目の中に入りそうになって、僕は不快な顔をした。
「東雲、好きにしていいよ。」
今度はちゃんと聴こえた。嘘だ。なんで今あいつの名前をここで聞くことになってるの?僕は、あいつから逃げてここにいるはずなのに。逃げて…?僕はなんで逃げてるの?東雲は、僕の担任で、担任は……
急に胸の奥から酸っぱいものがあがってくる感覚に襲われた。お昼に食べすぎたこともあって、そのまま僕は前方に不消化のものをぶちまけた。
二人はそれに驚き、一瞬たじろいだ。この隙に逃げられたかもしれないが、僕はまだ気持ち悪くて、腹の中のものを全て吐き出してしまいたい衝動に駆られた。
僕が嗚咽を繰り返していると二人は唖然としていたが、ドンドンと扉を叩く音が聴こえた。
1人がそう言って、後ろから口を塞がれる。何これ?なにがどうなってこんなことになったの?冬月くんは???
訳がわからないままなんとか拘束から抜け出そうともがいていると、お腹の辺りでガチャカチャと音が鳴る。やがてシュルッという音とともに、お腹の圧迫感から開放される。
目の前の男は今しがた引き抜いたそれを僕の顔の近くまで持ってくる。半分に折り畳み、1度弛ませたと思った瞬間、
──バチンッ!!!
大きな音がなり目の前で破裂する。僕は恐怖で全身が硬直した。
「痛いの、嫌だよね?」
そう言われて、僕は何度も頭を縦に降った。「暴れないし騒がないって約束出来る?」顔を覗かれて訊ねられる。痛いのも辛いのも勘弁して欲しい。僕はまた頭を数回縦に振った。
「もう解放していいよ。なーんでも言うこときいてくれるらしいから。」
その言葉を聞いて、後ろの男は「なんだよ、無理やりの方が燃えるのに…」とか言いながら舌打ちをして、目の前の男の命令に素直に従って僕の拘束を解く。体の自由を得た僕は、大きくため息をついた。
「今から何があっても全部君の同意があったってことになるけど、それでいいよね?」
僕の前に立つ男が言う。冗談じゃない。痛いのも苦しいのも嫌なのに、僕がそんなことに同意するわけないだろ。
「嫌だ。」
僕は相手の顔をはっきり見てそう答えた。相手の眉間がピクっと動く。「痛い目見たいの?」そう言ってまた僕のベルトで脅そうとしてくる。
「痛いのも苦しいのも嫌。僕が嫌だと思うものは全部嫌だって言ってんの。」
僕は臆することなく、目の前の男にそう言ってのける。前の男は面倒くさそうな顔をして、後ろの男に顎で指示を出す。後ろの男は嬉しそうに僕の体をまた拘束しようとしてきた。
僕はサッと身を交して入口のドアの方に逃げる。最初は突然の事で避けられなかったけど、体の小さな僕はその分身軽だ。僕を欺いている相手の隙だらけの動きから逃げるなんて簡単だ。
ただ相手は二人。ドアまでまだ距離がある。ここからは、心理勝負になる。
「僕は、暴れない、騒がない。と約束したはずだよ。逃げないとは言ってない。」
そう言いながら少しづつドアの方へ後ずさる。見苦しい言い訳だが、ここは、こっちのペースに引き込む方が勝ちだ。僕は毎日秋瀬とこの勝負をしているんだ。負けないぞ。もうすぐ鍵のところに手が触れる。これを回せば逃げられる…
「おい東雲!早くしろ!」
……え、
一瞬の油断が僕の負けを確定させてしまった。手をぐいっと引っ張られ、今度は様式トイレの上に座らせられてしまう。そんな現実を置き去りに僕は頭を項垂れ、先程の言葉を頭の中で何度も反芻しようとしてた。あいつ今なんて?思い出そうとしても、肝心なところが聞こえなかった。
僕が何も言わずに黙っているのを見て、命令をしている方の男は拘束する男に僕のベルトを渡す。僕は後ろ手にベルトでしっかり締められてしまった。
命令していた男は、僕の前髪を引き上げると、「せっかく優しくしてやろうと思ったのに。もうお前いらねぇわ。」と僕の顔に唾を吐いてきた。なんて不潔で下品なやつなんだろう。目の中に入りそうになって、僕は不快な顔をした。
「東雲、好きにしていいよ。」
今度はちゃんと聴こえた。嘘だ。なんで今あいつの名前をここで聞くことになってるの?僕は、あいつから逃げてここにいるはずなのに。逃げて…?僕はなんで逃げてるの?東雲は、僕の担任で、担任は……
急に胸の奥から酸っぱいものがあがってくる感覚に襲われた。お昼に食べすぎたこともあって、そのまま僕は前方に不消化のものをぶちまけた。
二人はそれに驚き、一瞬たじろいだ。この隙に逃げられたかもしれないが、僕はまだ気持ち悪くて、腹の中のものを全て吐き出してしまいたい衝動に駆られた。
僕が嗚咽を繰り返していると二人は唖然としていたが、ドンドンと扉を叩く音が聴こえた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します
Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。
女性は従姉、男性は私の婚約者だった。
私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる