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30.僕のヒーロー論
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正々堂々と人前に立って、どんな相手にも臆することなく、自分の意見を堂々と言える。これは、僕にとっての理想のヒーロー像そのものだ。僕はkaguraの仮面を被ることで、ヒーローを演じることが出来る。でも、僕はヒーローではなく、ただの人間だ。演じることは出来ても、何かを成すことは出来ない。
歌詞は書けるけど、それだってただの創作に過ぎない。そこに兄貴が曲を乗せて、僕らDISTURBが演奏する。つまり、ただの人間が演じて奏でているだけ。偽りの自分を魅せて、多くの人にそれを信じさせているだけなんだ。僕は、ヒーローでもなんでもなくて、ただの冬月神楽。ヒーローに憧れて、なりきりをしているだけの村人Bでしかない。
「冬月くん、もしかして、怒ってる?」
春川くんが心配そうに顔をのぞきこんでいた。考え出すと周りが見えなくなるのは僕の悪い癖だ。僕は慌てて今日誘ってくれて嬉しかったことや、初めてスイーツワールドに来れて感動してることを素直に伝えた。そして、夏木くんが夢中なのは、僕じゃなくて、kaguraだから、言い間違いはしないように指摘しておいた。
「んー、でもkaguraも神楽も冬月くんだから、一緒じゃないの?」
春川くんには、どうもわかって貰えないらしい。僕は、ヒーローを引き合いに出し、ヒーローは正体を隠していて、返信前と変身後は、全くの別人であること。周りもヒーローのことを、本名では決して呼ぶことは無い。そのことを春川くんに説明した。春川くんにもやっと伝わったようで、あぁ、と拳で掌をぽんっと手を叩いていた。春川くんの納得が得られた頃、ちょうど二人がドリンクを持って帰ってきた。
「今、バームクーヘンがちょうど焼けたところやったから、ついでに皆の分持ってきたで。」
よく見ると、秋瀬くんは四人分のドリンクが乗ったトレイを、夏木くんはバームクーヘンとホイップクリームの乗ったお皿のトレイを持っていた。秋瀬くんはドリンクを配り、それを追うように夏木くんがバームクーヘンの入った皿を置いていく。その皿を見て春川くんがポツリと呟く。
「チョコシロップ掛けたら美味しそう。」
それを聞いた秋瀬くんは、確かにと頷き、僕らにも必要か聞く。僕と夏木くんは、首を横に振り、「先に食べてて。」と自分の皿をそれぞれ持ち、二人は席を立った。
夏木くんは、「ほな先食べよ。」とフォークを持ち、僕にも促してくれる。僕もフォークを持ち、バームクーヘンにホイップクリームをつけて口へと運ぶ。もうけっこうお腹がいっぱいになってきてはいたが、出来たてのバームクーヘンと、軽いホイップが口の中でじゅわりと溶けて、あっという間に喉を通り過ぎていく。ほうっとため息が出た。
「冬月って、大阪にいてたことある?」
歌詞は書けるけど、それだってただの創作に過ぎない。そこに兄貴が曲を乗せて、僕らDISTURBが演奏する。つまり、ただの人間が演じて奏でているだけ。偽りの自分を魅せて、多くの人にそれを信じさせているだけなんだ。僕は、ヒーローでもなんでもなくて、ただの冬月神楽。ヒーローに憧れて、なりきりをしているだけの村人Bでしかない。
「冬月くん、もしかして、怒ってる?」
春川くんが心配そうに顔をのぞきこんでいた。考え出すと周りが見えなくなるのは僕の悪い癖だ。僕は慌てて今日誘ってくれて嬉しかったことや、初めてスイーツワールドに来れて感動してることを素直に伝えた。そして、夏木くんが夢中なのは、僕じゃなくて、kaguraだから、言い間違いはしないように指摘しておいた。
「んー、でもkaguraも神楽も冬月くんだから、一緒じゃないの?」
春川くんには、どうもわかって貰えないらしい。僕は、ヒーローを引き合いに出し、ヒーローは正体を隠していて、返信前と変身後は、全くの別人であること。周りもヒーローのことを、本名では決して呼ぶことは無い。そのことを春川くんに説明した。春川くんにもやっと伝わったようで、あぁ、と拳で掌をぽんっと手を叩いていた。春川くんの納得が得られた頃、ちょうど二人がドリンクを持って帰ってきた。
「今、バームクーヘンがちょうど焼けたところやったから、ついでに皆の分持ってきたで。」
よく見ると、秋瀬くんは四人分のドリンクが乗ったトレイを、夏木くんはバームクーヘンとホイップクリームの乗ったお皿のトレイを持っていた。秋瀬くんはドリンクを配り、それを追うように夏木くんがバームクーヘンの入った皿を置いていく。その皿を見て春川くんがポツリと呟く。
「チョコシロップ掛けたら美味しそう。」
それを聞いた秋瀬くんは、確かにと頷き、僕らにも必要か聞く。僕と夏木くんは、首を横に振り、「先に食べてて。」と自分の皿をそれぞれ持ち、二人は席を立った。
夏木くんは、「ほな先食べよ。」とフォークを持ち、僕にも促してくれる。僕もフォークを持ち、バームクーヘンにホイップクリームをつけて口へと運ぶ。もうけっこうお腹がいっぱいになってきてはいたが、出来たてのバームクーヘンと、軽いホイップが口の中でじゅわりと溶けて、あっという間に喉を通り過ぎていく。ほうっとため息が出た。
「冬月って、大阪にいてたことある?」
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