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第17話

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 ステージ上に向かうと戦っている音が聞こえてきた。

 その音は金属が当たるような音に聞こえた。

 黒いドラゴンが器用にアリアさんの刀を爪で受け止めていた。

「お主、人間にしてはなかなかやるではないか」

「ドラゴンに褒められても嬉しくない……」

 アリアさんは苦戦しているようだ。

「私はただ子供のドラゴンを助けにきただけじゃ」

「だったらなんで他の人間を殺す必要がある」

「人間は嫌いじゃからじゃ、特にドラゴンスレイヤーは1番嫌いじゃ」

 ドカーン

 アリアさんに向かってドラゴンの拳が振り下ろされる。

 それをギリギリで避けたアリアさん。

「そんな理由……」

「そんな理由じゃと?お主みたいなドラゴンスレイヤー達や人間の欲望のせいで今までどれだけの同胞を殺されたと思っておるんじゃ」

 黒いドラゴンは人間とドラゴンスレイヤーをすごく憎んでいるようだった。

「私を他のドラゴンスレイヤーと一緒にしないで」

「ドラゴンを殺す目的が一緒の何処が違うのじゃ」

 黒いドラゴンと互角にやり合っているアリアの強さに僕は驚いた。

 黒いドラゴンは魔力を溜め出した。

 その魔力はどんどん膨れ上がる。

「お主との戦い少し面白かったが、これ以上遊んでいる暇はないので情けで痛みも感じず消し炭にしてやろう」

 黒いドラゴンは大きすぎる黒い炎の玉を放った。

 アリアは避けようとするが黒い炎の玉が大きすぎて避けきれそうになかった。

 僕は咄嗟に2人の間に入った。

 ドッカーン

 危機一髪でアリアを助ける事はできたが防ぐために大量の魔力を防御魔法に使ってしまった。

 それだけ黒いドラゴンの攻撃は強力だった。

「ほう、人間の中にもこの攻撃を防げる者がいるのか……いや、人間ではないなこの魔力は」

「アグルさんやっぱりドラゴンだったんですね」

 あれだけの魔力を使ったのだからドラゴンとバレてもしょうがなかった。

「ほう、お主魔法で人間に変えていたのか……」

 もう後戻りはできないアリアはすごい形相で睨んでいた。

「言いたい事はわかりますが、今は大人しく避難してください。あなたではあのドラゴンには勝てません」

「今までお前は私を騙してたんだな……ドラゴンが二体もいるのに逃すわけないだろう」

 アリアは聞く耳を持ってくれなかった。

 当然だよね……理由はどうあれ隠していたのだから

 僕はアリアに背中から斬りそうな殺気を感じながら黒いドラゴンに提案した。

「ここは、ドラゴン同士話し合わないか?」

「うぬ、話し合いなど必要ないお主もドラゴンならドラゴンの味方になるのが筋ではないのか?」

 このドラゴンも自我が強かった。

「あなたに何かあったか知らないが、これ以上暴れるのを見てるだけではいかない。引いてくれないか?」

「それはドラゴンの味方にはならないと言う事で良いのだな……このドラゴンの裏切り者が」

 黒いドラゴンは尻尾で薙ぎ払ってきた。

 僕は、尻尾の薙ぎ払いを手で止めた。

「お互い引けないようなのでこちらも少し手荒になりますよ。おじいちゃん」

「若造が調子に乗るでない」

 お互いに攻撃を繰り出した。

 その戦いは凄まじいものだった。

「お主、舐めているのか?人間の姿で戦うとは見ていて腹が立つ」

 舐めているつもりはなかったが、できれば人間の姿で戦いたかった。

 でも、戦っていて気づいたが思った以上に黒いドラゴンは強かった。

 アリアが突然、僕達の前に割って入ってきた。

 ズバッ

 黒いドラゴンの腹の部分を狙ったアリアだったが、浅かった。

「私もいるのを忘れないで……」

「人間如きが、わしに傷をつけるとは」

 黒いドラゴンの怒りは頂点に立っていた。

「アリアさん助けてくれたんですか?」

「勘違いしないで、この状況であなたよりあのドラゴンの方が嫌いだから……」

 理由はどうあれここはアリアと手を組む必要がある。

「アリアさん今だけでいいので手を組みませんか?」

「だから味方になったつもりはない」

「でもこのままだと2人ともやられますよ」

 アリアは少し考え込み、すごく嫌そうな顔で僕に言った。

「今回だけですよ」

「ありがとうございます。僕に作戦があるので聞いてください。チャンスは一回です」

 僕は作戦をアリアに伝えた。

「何をごちゃごちゃと言っている。どちらにせよお主ら2人はここでわしに殺され……」

 僕は猛スピードで黒いドラゴンに突進した。

「舐められたものじゃな。そんな攻撃効かぬわ――」

「それはどうかな」

 僕は黒いドラゴンの近くで赤いドラゴンに戻ってそのまま黒いドラゴンを捕まえた。

「なっ」

 黒いドラゴンは予想外の事に驚いた。

「このまま一緒に落ちましょう」

「くっ離れろかの裏切り者が――」

 黒いドラゴンは暴れて攻撃してくるが僕はそれに耐える。

 このまま黒いドラゴンを捕まえたまま急降下で地面に叩きつけた。

 ドゴーン

 地面に当たるスレスレで人間の姿に変わって離れたが勢いが強すぎて少し地面にぶつかった。

「いまがチャンスです」

 僕はアリアに攻撃のチャンスを知らせる。

 アリアは思いっきり飛んで、仰向けで倒れている黒いドラゴンの腹を思いっきり斬った。

 ぎゃ――――

 黒いドラゴンの悲鳴が響き渡った。

 

 
 
 

 
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