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(琉弥視点) 

「光はあんな態度で接されて平気なのかよ?」

「嫌だけど...何回もあったことだし俺も慣れちゃった。」

そんなの....

「ちょっ、琉弥! 前!」

え? 何を言っているのか分からず顔をあげると、真正面に人がいた。

「「うわっ!!!」」

「すみません!」

「ううん、大丈夫。こっちもよそ見してたから...」

身長差があったから、顔どうしでぶつからなくて済んだ。

ネクタイの色からぶつかった相手は1年生だと分かった。

彼が顔を上げた瞬間、なぜか光がハッと息をのんだ。

「..主人公.....ごめん琉弥! 俺用事思い出したわ!!」

は?

光は何かを呟いたかと思えば、走ってどこかへ行ってしまった。

「琉弥さん、っていうんですね。僕は1年の小栗 真佑と言います。」

小栗と聞いて、今結構有名になっている特待生の子だと思い出す。

「俺は2年の神谷 琉弥だよ。」

一応自己紹介はしとく。


すると彼はものすごく心配そうな目で俺を見つめた。

「あの、大丈夫ですか? 」

「え?」

「その、、、すごく顔色が悪いから...保健室へ行ったほうがいいですよ?」

そんなに?!

「大丈夫大丈夫!ちょっと悩み事があるだけだから。」

「...まだ時間ありますし、良ければ話聞きます。」

彼は時計をちらっと見て言った。

「......ありがとう。じゃあ聞いて欲しいな。」

俺は人に自分のことを話すのはあんまり好きじゃないけど、何故だかこの子には話したいと思ってしまった。
 
それから俺たち2人は裏庭のベンチに座って、俺は今悩んでいることを小栗くんに話した。





光と俺が出会ったのは、小学5年の時。
俺が神谷家の跡取りとして本家に引き取られたときだ。

突然入ってきた俺のことを良家の子供らは誰も相手にしてくれなかった。

俺が何か間違いをしても周りはただ嘲笑うだけ。

でもそんな中、俺のおかしいところを指摘して教えてくれたのが光だった。
俺たちはすぐに仲良くなり、今では親友の仲だ。

光の兄は有名なグループの会長なのに、おかしなことに光は何故か周りから出来損ないだと言われ下に見られていた。

その理由は、光の兄達が凄すぎるからだった。光には上に3人兄がいて、彼らは毎年成績が学年トップで運動神経抜群、そして美術などの才能もあったらしい。

そんな有名な家の四男の光ももちろん期待されたが、光の名が学年の成績トップ5に現れることは無かった。

それだけで、別に頭が悪いわけでもないのに光は周りから出来損ないとみなされ、仲良くなったってほとんど意味がない香川家の四男の息子、というレッテルが貼られてしまった。

そのせいで、光はだいぶグレていた。

俺はと言うと、強制的に稽古や習い事などをさせられてこの世界での常識などが叩き込まれ、中学に上がってからは学年1位をキープできるようになっていた。

この時からだ、周りが手のひら返しのように俺に取り入ろうとしてきたのは。

正直気持ち悪かった。

俺が光と離れようとしないからって、光のありもしない噂を俺に囁いてきたり、光を使って俺と話そうとしてきたり。

中には光に嫉妬していじめをしたヤツらもいた。
小林のような、光を無視して2人だけで話そうとする奴も稀にいた。

俺が今までいた世界の周りのみんなは、決して裕福ではなかったが温かく、自分がどんなに辛い状況にいようと他人のことを考えられる人ばかりだった。

けどこの世界では自己中心的で自分の利益しか考えられないやつらばっか。

自分も人間のはずなのに、人間が怖くなったことだってあった。

でも友達は欲しい、ひとりぼっちは嫌だ。

その時から、光は俺を束縛し始めた。

俺のことを離さなくなり、俺を守るように周りを警戒しながら歩いて、誰かがちょっとでも俺に話しかけたら睨みつけて怒鳴るほどだった。

そんな光に周りは引き、光に関わろうとするやつはいなくなり、俺と話そうとしてくるやつも減った。

次第に俺は光以外のやつらと話すことが嫌になっていき、心のどこかで光が俺のことを束縛することを喜んでいた。

光がいれば俺は1人にならない。


光は俺だけの親友だ。光がいなくなったら俺は1人になってしまう。

だから、光が急に小林に話しかけているところを見た時すごく危機感を感じてしまった。

光は俺といるのが嫌になったのかもしれない、だから小林に話しかけたんだろう、と。

けど結果的に小林は俺目当てのクズだった。

光がその事でどのくらい傷ついたのかは分からないが、俺のせいでまた光を悲しませてしまったことはすごく悲しかった。 

だけど心のどこかで、光が小林と仲良くならなかったことを喜んでいて、そんな自分も嫌だった。

俺は光と離れるべきなんだろうけど、光がいなきゃ俺は....!!
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