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初恋の味はチョコレート・ケーキ
〖最終話〗第2部───完
しおりを挟む昔は、小さな頃、神様なんていないと思っていた。発作を起こしたり、苦しそうなオミを見ては、
『神様は贔屓ばっかりです』
なんて思っていたけど、今、5円玉のご利益が、何倍にもなって返ってきている。
だから私は朝、お祈りの最後に、神様に心の中で言う。
『小さな頃は、生意気なことばかり言って申し訳ありませんでした』
生まれたばかりのユミを神社に連れていったとき、確かに聴こえた。
『構わぬ。幼子の戯言など気にもとめぬ』
低い、意思のある、けれど透明な声だった。神様が、秘密裏に声をくれたと思った。だから、私はこの許しの言葉を、誰にも話していない。
──────────
仕事が終わり、お風呂上がりの私に、オミが笑いながらアイスクリームを差し出した。あの溶けるようなアイスクリーム。
「たまにはゆっくり休んで。ユミの幼稚園のお遊戯会の動画でも見ない?アイスでも食べながらさ」
私の大切なオミとの赤ちゃん。すくすく元気に育った元気な男の子。ユミは『弓』と書く。神事で使われる『梓弓』にかけた。
オミと大学を出て結婚して、子供を授かって私は家族と、オミとユミとの、しあわせの永遠を、未来を描くようになった。
終わりなきしあわせを願う。ユミ、オミ、私がしあわせの今のための盾になる。終わりなんていらない。
しあわせは、大切な人との1日の積み重ね。後悔がないように毎日を過ごす。
そんな私はアイスを食べながらユミのお遊戯会の動画を見て、オミとキスをした。
やっぱり、チョコレート・ケーキの方がオミの味がする。不満なわけではない、ただ、私はチョコレート・ケーキが好きなのだ。甘く蕩けるチョコレート・ケーキ。
オミの生命のチョコレート・ケーキ。
──────────第2部《完》
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