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〖第67話〗
しおりを挟む「どうしたの?」
「なんでもないのよ」
クローゼットを取り敢えず空にして真波は、合否判定を私に出していく。靴や鞄もどんどん仕分けていく。お気に入りで、これから着るか着ないか。冠婚葬祭用の服は体型が変わった時用のストックを一着。真波は、
『これ使う?』
『これは、要らないかな』
顔を上げず作業を続ける。延々と続く作業。
「感慨深いわね。自分の好きな人が私の似合う服を判別してるなんて。少しだけ、何か、いいわね」
私の服やアイテムを見て、
「これ、毎年どう片付けてたの?」
「本当はリサイクルショップに出したかったけど、近くにないから、地域のバザーに」
「美雨さん!勿体ないよ!バザーが悪いとは言わないよ。けど、美雨さんの服とか、バックとか、状態いいし、流行りだし、ハイブランドだし。アプリで売ったらおはぎとだいふくのご馳走どころかポイントにかえて、コンビニで豪遊出来るよ!やってみたかったんでしょ?夜遅くまで働いてた時期があったって。この前一緒にお風呂に入ってて言ってたこと、引っかかってた。コンビニの灯りが遠くに見えたって。利用させてもらってるって感じだったって。対等な関係ではなかったって………」
係長時代、報連相も解らない何も出来ない、しようともしないくせに権利ばかり振りかざす部下と、上司のパワハラの板挟みで会社をやめようかと思っていた。直樹とは知り合う前だった。
毎日終電で帰れたらいい方。電車がない時は歩いた。ひたすら。一時間かかった。まだここに住む前の頃だ。
「メイクは崩れて、隈が出てた社畜の女には、男の店員も女の店員も冷たかったわ。ぞんざいに扱われて。おでんの注文もろくに聴いてくれなかった。悔しくて悔しくて、手袋もしていない手に、おでんだけが温かくて。その頃まだおはぎとだいふくもいなかった。涙が込み上げてきて、家に着く頃は、おでんも皆、冷めていてね。蒟蒻だけがあったかくって、玄関で膝をついて、座り込んでおでんを食べたの」
ここまでくるのに、時間がかかった。どう乗り越えたかなんて覚えていない。毎日が必死で、生きるのが精一杯だった。ただ、今の私のブレーンの部下は私が一から育てた部下だ。右も左も解らないひよこたちも、今は軍鶏になった。
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