氷雨と猫と君〖完結〗

華周夏

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〖第12話〗

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 メイク落としシートを頬に滑らせる、お泊まり用ではない日常の物。こんなものが常備されてるとは、頻繁に泊まりで彼女が来るわけだと思えた。

 不思議な気がした。私に子供がいれば、結婚が早ければこのくらいの子がいても良いかもしれない。直樹が酔った目でしていた彼女と同じくらいの年齢。大学生くらいだろうか。

 人生は夢でできている、努力すれば夢は叶うと信じている魔法にかかっている年齢。羨ましいな。

 馬鹿にするわけではなく、ぼんやりとあの大学時代を思い出した。気のせいかもしれないが、何だかこの部屋は独特の匂いがする。

「美雨さん。シートもう一枚使う? これ、どうせもう捨てる奴だからどんどん使っちゃってくれたら助かるんだ」

 許可なく使い捨てられる私物、使ってる私も罪悪感が生まれてきた。メイク落としシートの女性はどんな女性なんだろう。

 ぼんやりそんなことを考え、シートを頬に滑らせる。そんな私の気持ちを読んだように彼は言った。

「そのメイク落としシートのひとは、先週別れたんだ。相手、年上のひとだった。そこそこ好きだったのに、『ごめん』って『俺を男として見れない』って言われた時、傷ついたのはプライドだけの自分が、一番嫌悪感あった。メイク綺麗に落とさないと肌荒れってのするんでしょ? お姉さん、目の周りメイク残ってる。大丈夫? まだ真っ黒だよ。中々取れないけど強く擦らないで。きっと化粧品、高い奴だからだね。シート有り余ってるからいっぱい使って。俺は流石に遣わないしさ。あのさ、朝ごはん、ホットケーキでいい?」

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