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我儘なのは、大人の都合〖第22話〗──②
しおりを挟む「神官、巫女?山神さまと母さんの勝手だよ。母さんが死んで、僕の五年は何だったの?独りだったよ、ずっと独りだった。いつもお腹が空いて、寂しくて、寂しくて。外に出たら石か泥を投げられて。皆大人の都合だよ。僕はただの人がよかった。平凡でも穏やかな、普通の暮らしがしたかったよ!でも……」
「でも……?」
ポタポタと音をたてて下を向いた空の着物に涙が落ちた。
「でも………それじゃだめなんだよ。それじゃ、そうにいちゃんに会えない。それに『穢れた巫女の子』じゃなきゃ『忌み子』じゃなきゃ、そうにいちゃんは僕を見つけられなかった。僕は此処に居ないんだよね。違う?僕は、つらかったけど、本当につらかったけど、そうにいちゃんに会えて良かった、そう思ってるよ」
「空、上を向いて」
甘い薄荷の飴を口に含み、口移しで食べさせる。
「美味しいか?」
恥ずかしそうに蒼から顔を背け頷く。首筋にさらりとかかる、乱れた長い髪が益々色香を際立たせる。
「もう一度、こっちを向いて」
ぬるくなった茶を含み、空の口に注ぐ。
「美味しいか?」
コクコクと頷きながら、空は不思議な顔をする。
「そ、そうにいちゃん、どうしたの?」
蒼は、呟くように言った。
「確かに、空が『穢れた巫女の子』で『忌み子』じゃなきゃ、俺は昔も、今も、空を見つけることが出来なかった。空は、空を助けて、孤独を癒してくれる人なら、俺じゃなくても……良かったのかもしれないな。空は、寂しくなかったら、『そうにいちゃん』なんて、いなくてもよかったんだろうな。俺なんて、偶然だ。最初の出会いも、俺は思いやりの心なんて一つも持ち合わせていなかった。善意じゃなかった……施しですらなかったよ」
「どうして?何で急にそんなこと言うの?そうにいちゃんを責めてる訳じゃない!僕は、確かに独りが寂しかった。いつも心細かった。でも、そうにいちゃんに会えた。そうにいちゃんに会えたことが僕の人生の中で一番幸せなこと。そう思ってるんだよ!」
──風に当たってくる。そう言い蒼は、スッと狗耳と尾を出し、窓から風とともに駆けた。
「そうにいちゃん!」
背中に、で聞く空の透明な叫びは、冬の風のよう刺さるように痛かった。
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