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いつもの君に恋してる《白亜編》

あい、してる。琥太郎!《最終話》

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「白亜~淋しかったよ。寂しくて死んじゃうよ」

「琥太郎………オープンキャンパスじゃなかったの?バックレて帰ってきたの?5日しかたってないよ?『色々見てくるっ!』って言ってたけど………」

「俺に東京は無理だ。あの街は俺には空も、緑も、いい空気もない。それよりさ、腹くくって、親に話した。お前のことっていうよりお前ん家は知ってた。JAの直売所のお野菜、安くて美味しいってチェックしてたぞ」

「琥太郎。一緒に………僕と農業やる?」

声が震える。

「父さん、弁護士だから、たまに案件受けてるよ。検事にはなれなくても、弁護士なら、勉強教えてくれるよ。出来るサポートが欲しいって言ってたから」

「白亜………」

抱き締められると、夏休みの風が緑色に色づく。軽自動車から声をかけられた。

「九条、さんの所の?」

顔面真っ青。田んぼ道で抱き合ってたらそりゃ目立つよね。



ハハハハ。
琥太郎の母さんだった。

「は、はい。九条白亜です」

「可愛い子ねぇ。あの話の子よね?」

それから、簡単に言えば琥太郎がしたカミングアウトの話を、白亜を交えてした。 

「ああっなんて可愛いのっ!!琥太郎は、どうぞどうぞ婿にもらって!『ベニスに死す』みたいね~。美しいわ~」 

………………………………………………………

両家の顔合わせもうまく行き、
マッツが琥太郎に法律を教えてくれるそうだ。

弁護士にはなれなくても、司法書士とか、行政書士とかの勉強法とか。

万事うまく行っている。簿記1級も独学であっという間にとって、税理士の資格も取った。



そして僕と琥太郎は二十歳になり、

身内と仲のいい友達だけの
小さい式もした。


夜になれば────
「好き、こた………ろっ!」
「あい、してるっはく………あっ」


あーやっぱり、琥太郎が好きだな。
ビッグマグナムも絶好調だ!

大好き。
ずーと、大好き!


「あい、してる!琥太郎!!」


琥太郎。僕も愛してるよ。だから、もう、よそ見なんかしないで、
不安になんかさせないで。
君が好きだから、
ずっとずっと、このままでいたいんだ。

だから何度でも言って、
愛してるって。

もし君がビックマグナムじゃなくても、
しおしおの、ぬか漬けのきゅうりでも、僕は構わないんだ。

『この町をでて、いつかかえってくる』

といって君は昔泣いていた。

『白亜のところに帰ってくる』

そう言ったのに。君はこの町に5日いつかで帰ってきた。
可愛い妹もできた。

『おにいちゃんたち、なにやってるの?』
『愛の営み……紅亜くれあは子供なんだからっ早く寝なさいっ』
『なんで、はくあにぃも、こたろうにぃもはだかなの?』
『き、気持ちがたかぶって、暑いからだよ!早くドアを閉めて、お母さんに金平糖でも、もらってきなさい!お母さんきょ、今日、紅亜が好きだからってスーパーでかってきてたぞ』
『わーい!』
突然の訪問客も、可愛らしいものだ。だがせめてノックを覚えてくれ!

──あの子も、いつか恋をする。誰かを見つめるだけの、ちぎれるくらいの悲しい恋じゃないといい。

紅亜。いつか現れる君の王子さまは誰なんだろうね。

『白亜~続きやろ~。俺、今生殺しだよ~』
『はいはい。愛してるよ~……君がいるところが僕の居場所』
『だから……帰ってくるっていっただろ?』

え……?
『さー愛の営み、第4ラウンド!』
琥太郎は笑ってる。泣いたのは、僕の方だった。
『ずっと、一緒にいようね』
『白亜がいればそれでいい』

やさしい恋人の口づけは、
甘く痺れて、溶けそうなくらい、やさしかった。

────────《白亜編・完結》
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