愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】

楓の過去と流の秘密〖17─②〗

「あの事件からですか？でも、それでもあなたは人の感情を軽んじる人ではなかったはずだ！──ねぇ兄さん、何で？
私のせいですか？
私が全部、あの家庭を、全てを壊したからですか？私を憎んでいるんですか？ 
私の身体はΩでもあるがαでもある。 
忌むべき突然変異でした。
九条の家では死んだことにされています。
私はあれから周囲からの侮蔑にまみれながら、世間からは抹殺され、
研究所で子供を生みました。
 二卵性双生児でした。

一人は死産と言われましたよ。

 あなたは、鷹司の婿に『番』は不必要と『仮死』になる薬を飲んだ。
『番』は片方が死ねば解消と医学書にも書いてあります。
 あなたは自ら『九条』を捨て私のもとを去った。
 私は尊敬する兄をなくし、子供の父親をなくしました。
あなたが『番』を解消するほど、私は存在してはいけないとは自分が一番解っているんです。弟が『番』だなんて、ありえない。
あってはならないことは解っています。 けれど……つらかった…………。 
誰も私の存在を見て見ぬふりをする中、
嫌悪しながらも、
どこか寄りかかれたのは、
兄さんだけでしたから。

 でも、あなたも私を捨てた。
『鷹司』の婿の椅子と、もう弟ではない出来損ないの愛することも出来ない『番』。選択は簡単です。

 ……奏を、最初見るのも嫌でした。義務と責任で育てた。 時間が経つにつれ、
私とあの子は悲しいくらい私に似てきました。 近親婚のせいか、私と同じくαの力とΩの力。そしてΩの身体も受け継ぎました。 しかも特異な力を持っています」

今までも、
これからもあの子は、
たった独り。
ずっと独り。

 恐れられ、
蔑視され、
嫌悪され……。


「 あの子はαの力がかなり強く
Ωの力も強いですが
身体としてはかなり不完全です。
奏のΩの生殖機能では、
出産に耐えられない。 
しかもΩはより強いαに惹かれます。 
多分あの子の併せ持つαの力より強いαはそうはいないでしょう。 
仮に『番』になって身籠っても子供は生めない。奏には子を生む能力がない。
 まあ、見た目の美しさに惹かれ、無理やりなんてしようものなら『圧』を使えますから安心ですが」