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研究所とドクター〖14─③〗
しおりを挟むドクターとの行為に、身体は反応し、悦んで、ドクターを感じて吐精する。吐精して、身体の快感をまざまざと感じ、快楽に屈する。段々と理性が戻る。罪悪感で真っ黒になりながら奏は泣いた。
穢い身体だ──奏は思う。
それからは、ざわざわと行為のあと、ドクターに触れられた肌が不快感。
普段ならドクターとの行為の後は、快感を得て興奮し、多幸感しかないはずなのに、今、真っ黒な気分だ。
『ドクター、もう僕に触らないで。お願い』
奏は泣きながら訴える。
ドクターは少し考える顔をして淡く笑い言う。
『涼くんを亡くして不安定になっているね。忘れさせてあげるよ。
思考出来ないくらいに。いつものことだよ。悩まなくていい』
一度離れたドクターの身体が、奏の中に押し入ってくる。
ドクターは息を乱しながら、
奏の身体を揺さぶり、自らも動く。
繋がりから体液が漏れ、
聴きたくもない猥雑な、交わりの音がする。
『やめてっ!嫌なんだ、もうやめて、お願いだから。涼、僕を助けて』
涼、ごめん。涼、好きだったよ。僕を許さないで、だけど忘れないで。
僕は独りで地獄へいくよ。
君は天国の庭でドングリを拾って。
『奏、愛しているよ。人間の記憶なんてすぐ風化する』
耳元で囁かれる『愛してる』の声。ドクターの抽挿が激しくなる。静かな部屋に響く卑猥な、体液が擦れてたてる水音。
『あっあぁ、やめてっ!いやだぁっ!!助けて、涼、助けて!』
このまま気が違えてしまえばどれほど楽か。涼、愛なんて解らないけど愛してたって言っていい?これほどまでに自分が求める人は、自分が殺した。
涼は自分のせいで死んだ。
悲しみや苦しみの混沌とした絶望の中、奏の身体の中に、ドクターの白濁を吐き出され、体内の熱い感覚に躾られたように奏の身体はもう一度、簡単に達した。
吐精しながらも、奏は不感のように何も感じなかった。
簡単に足を開く穢い身体。 胸の中の腐った精神。
自分を取り巻く歪んだ世界。
涼だけが、綺麗だった。 感覚が白くぼやけて消えていった。
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