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《第34話》幸せは自分で決める

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部屋に戻っても、空は燃えるようだった。 窓際のベッドから、奏は、寝転び空を見た。
涼は傍らに座る。


「綺麗だね。夕焼け。 朝日みたい、コテージから、朝日を見に行く君を、
いつも見てたんだ。君は朝が早いから、寝顔も見たことがなくて、起きたらベッドが冷たくて、寂しかった」


 「声を……かけられるようには見えなかったんだね……。 ごめんね。ずっと悩ませて、
それでなくてもホルモンバランスで不安定になるし、俺も、触れも……しないで。 
君に『愛されてる自信』を与えられなかった。父の言葉だよ。
何も、言えなかった。 ただ、君と俺の子供ができたことが嬉しかった。 
父親になって浮かれて………」


「じゃあ、これから、
毎日一緒に寝て、僕が君を起こすよ。 
朝日を二人で見に行こうよ。 
君の寝顔、見たことないんだ。 
僕はあのとき、バカなことをしたと思ってるよ。 この子も失うところだった」 

本当に、バカだったね。
君を傷つけた。 そう言い奏は、声を潤ませ笑ってみせた。 

涼は身体を屈ませ少し強引に口づけた。
奪うように、執拗に絡めた。 
やるせなかった。 急に大人びた奏に置いていかれてしまう気がして、怖かった。 
まるで自分を置いて遠くへ奏が消えてしまうような気がした。 


「……涼、どうにかするから部屋から出てて。ごめんね」 

「こうした方が、早いよ」 

ガウンは、はだけさせられ、
袖だけ通した形になった。ベッドに座らされ、あらわになった奏の身体を、涼は含んだ。 

わざと水分を含む音をたてられるのが恥ずかしい。顔をあげる時、涼は髪をかき揚げた。

見慣れない仕草、
少し強引な涼を見るのは奏は初めてだった。

野性味を帯びた瞳。
早く捕食されたいと、奏は思う。 

「好きにして、涼のやり方で」 

焦らされ、達する手前で止められ、淫らな言葉を言わされ、喘がされた。

涼は奏を口で愛撫しながら、
片手で自らを慰めていた。

弱いところを割り込むように舌先でなぞられ、奏は細い悲鳴に近い声をあげ、吐精した。


奏は涼を見る。口の端から、白が伝っていた。 



「りょ、涼、飲んだの?」 
「うん。だめなの?」 
「……ううん、いいんだ。ごめんね」 
「奏、奏?泣いてるの?ごめん、夢中で。嫌だった?」
「ううん。そんなこと、ないよ」 


そう言い奏は、涼にしがみついた。
何故だか解らない涙。
永遠に解る必要はない。 

奏は今更、涼が双子の兄であることを思った。 モラルは捨てた。 
はずなのに、色々なものが奏を縛る。 
手枷足枷をつけ、がんじがらめにする。 

知らないとはいえ親を誘い抱かれていた。
口づけをせがみ、
淫らに喘ぎ、
身体をくねらせ、
快楽を求めた。 

『力』を使い、
沢山のαを使い捨てにしながら遊び、
また『力』で累々たる死体の山を築いてきた。恥辱にまみれた死に方をさせた。
罪悪感はなかった。 



恋におちた相手は
本当に愛したひとは、
知らずに出会った双子の兄だった。 

「良くあること、だよ。仕方なかったんだ。仕方なかったんだ」 

ポツリと涼にしがみつきながら奏は言った。声は涼の胸で消える。 
涙なんてもう流したくない。 
そう思い、奏は歯をくいしばる。 
涙を幸か不幸かは他人が図るものじゃない、自分が感じるものだ。 

僕はつみびとです。
でも、涼とお腹の子供は関係ない。
許して。堕ちるところまで落ちます。

かみさま…………。
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