上 下
8 / 22
狸と狐のピーチとオレンジのキャンディ

ファジーネーブル〖8〗

しおりを挟む
 
まあ、そうだよね。シャーペンの芯くれたり、席替えで隣になったのも、全部グループ絡みで仕組まれたこと。

木津音くんは教科書忘れの常習犯って設定で『見せて』って笑ってた。ぎこちなく、あたふたして舞い上がるような私を、クラスのヒエラルキーの上のグループと馬鹿にして楽しんでいたってことだ。

木津根は立貫になんて本気になるはずがないのに、と。

私はいつの間にか木津音くんの頼みごとを断れなくなっていた。他にも、たくさん、たくさん、あの笑顔に騙されてきたんだな………。

でも私みたいな、こんな女子でも夢を見てしまうものだ。『もしも』なんか、ないのに。私は『もしも』を想って浮かれてた。

木津音くんが、私を好きなら──何も知らなかったあの頃なら嬉しかっただろうな。そして今日、騙されていたことを知って、過去のパンドラの箱も空いて、たくさん、たくさん泣いて、学校辞めて巫女になって、山神さまに嫁いだかもしれない。
  
あと、男子って綺麗な女の子には絶対しない。こんなからかう趣味の悪いゲーム。告白どっきり。必ず企画はカースト上位の女子。私がいくら本気で怒ったとしても、


「あんたみたいな奴に誰が本気で木津根くんが『好きです』て言うと思った?」


綺麗な顔に嘲笑を浮かべ、私を見下し平気な顔をして言い笑う。なんて、残酷なゲームなんだろう。標的になるのは、怒らせても傷つかないと思われてるヘラヘラ振る舞う私のような女子。

勉強は人並みに努力して上の上。でも、今回の中間で、五教科を木津音くんに全部負けて、学年二位になった。

運動は下の上。どんくさいっていわれる。外見は木津音くんに、朝のニュース番組に出てたちょっとふっくらした色白の可愛いアナウンサーに似ていると言われて嬉しかった。きっとお世辞なのだろうけれど、やはり嬉しい。

私は視力が弱いし、立貫家は結婚しないと化粧禁止なので自分の顔なんてよく知らない。今はそんなことどうでもいい。

ただ思うのは、馬鹿にされたくないくらい綺麗になりたかった。綺麗に、なりたかったなあ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る

通りすがりの冒険者
ライト文芸
高校2年の安藤次郎は不良たちにからまれ、逃げ出した先の教会でフランチェスカに出会う。 スペインからやってきた美少女はなんと、あのフランシスコ・ザビエルを先祖に持つ見習いシスター!? ゲーマー&ロック好きのものぐさなフランチェスカが巻き起こす笑って泣けて、時にはラブコメあり、時には海外を舞台に大暴れ! 破天荒で型破りだけど人情味あふれる見習いシスターのドタバタコメディー!

鮮血への一撃

ユキトヒカリ
ライト文芸
ある、ひとりの青年に潜む狂気と顛末を、多角的に考察してゆく物語。

幸せになりたい!

矢野 零時
ライト文芸
理江は、普通に会社に勤めていました。そこで、恋もし、結婚を夢みてました。そう、平凡な幸せを望んでいたのです。でも、辛いことが次から次へと起きてきます。でも、頑張っているのです。この作品、ライト文芸賞に応募しました。なにとぞ、ご一票をお願いいたします。

友人のフリ

月波結
ライト文芸
高校生の奏がすきなのは、腐れ縁・洋の彼女の理央だ。 ある日、奏が理央にキスする。それでもなにも変わらない。後悔する奏。なにも知らない洋。 そこに奏のことをずっとすきだったという美女・聡子が加わり、奏の毎日が少しずつ変化していく。 高校生の淡いすれ違う恋心と青春、傷つきやすい男の子を描きました。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

Black Day Black Days

かの翔吾
ライト文芸
 日々積み重ねられる日常。他の誰かから見れば何でもない日常。  何でもない日常の中にも小さな山や谷はある。  濱崎凛から始まる、何でもない一日を少しずつ切り取っただけの、六つの連作短編。  五人の高校生と一人の教師の細やかな苦悩を、青春と言う言葉だけでは片付けたくない。  ミステリー好きの作者が何気なく綴り始めたこの物語の行方は、未だ作者にも見えていません。    

となりのソータロー

daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。 彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた… という噂を聞く。 そこは、ある事件のあった廃屋だった~

処理中です...