12 / 27
狸と狐のピーチとオレンジのキャンディ
ファジーネーブル〖7〗
しおりを挟む弱肉強食だ。この世の中喰うか喰われるか。気を許したら、傷つくのは自分だ。だから誰にも心を許しちゃいけない。あとで哀しい思いをしたくないなら。
木津根くんが好きだった。
好きな人だったけれど、今、この状況下で真実を知り、一気に冷めた。
あの狐だったなんて。二回も好きになるなんて馬鹿みたいだ。
そして、私はそっと昼休み狸に戻り、『体育館倉庫』を探りに行く。あざとい隠しカメラ。私はクラスのカースト上位の人たち──木津根くんたち──の、ただのお遊びの道具だった。きっと私が木津根くんと少しでも仲が良いのが気に入らないんだろう。
きっと、作り上げられた告白劇に巻き込まれる。私は気づけば木津根くんに夢中だったんだと思う。卑屈になって、肉まんなんかを頬張らなくなった。普通の女の子のように『美味しい』そう言って笑ってた。
何か話すのにも、段々とクラスにいるときのように饒舌には話せなくて、横顔を見つめることしかできなくなっていった。
恋をしてたんだな。不相応にも。
綺麗な鼻梁。少し薄めの唇。切れ長の瞳。クラスのキラキラ男子がこんな私に話しかけて、優しい言葉をかけて女の子扱いをしてくれたのも、どれだけ嬉しかったかなんて、きっと誰にも解らない。
私みたいな子にしか、コンプレックスを卑屈さを隠して笑う、心のなかで泣くような子。そんな子しか解らない。きっと解らない。
毎日、木津根くんと過ごせる、美味しい飴をくれる短い時間が楽しみで、早く放課後になればいいと思って、私は一時限目を受けながら思っていた。
釣り合わないとは、解ってた。充分承知だ。ただ、私も夢を見ていたかった。
いつも明るくて、周りの人に頼りにされる彼のことが好きだったから、正直『今』みたいなことをする悪趣味なクラスの連中には、腹が立つ。そして、面白がって私に『嘘の告白ゲームの告白係』をする木津音くんにも、哀しくて辛くて、腹が立つ。今までの優しい振る舞いは全部、嘘。伏線だった。私だってプライドはある、けれどこの扱いはひどいよ。そう思い、口唇を噛んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
あなたを追いかけて【完結】
華周夏
BL
小さい頃カルガモの群れを見て、ずっと、一緒に居ようと誓ったアキと祥介。アキと祥ちゃんはずっと一緒。
いつしか秋彦、祥介と呼ぶようになっても。
けれど、秋彦はいつも教室の羊だった。祥介には言えない。
言いたくない。秋彦のプライド。
そんなある日、同じ図書委員の下級生、谷崎と秋彦が出会う……。
宵闇の山梔子(くちなし)〖完結〗
華周夏
現代文学
寂しいと僕が泣くと、甘い香りの花。白い花びらのような手を伸ばすようように僕を慰めてくれる。
青年と、甘い山梔子(くちなし)の精との幻想的な切ない恋物語。
まるで、真夏だけ許された御伽噺。
ジキタリスの花〖完結〗
華周夏
青春
物心ついた時から、いじめられてきた庇ってくれる人なんて誰もいない。誰にも──言えない。そんな僕を見つけてくれたのは、欲しかった言葉をくれたのは、光宏先輩、あなたでした。相模明彦、彼の淡く切ない初恋……。
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
だからその声で抱きしめて〖完結〗
華周夏
BL
音大にて、朱鷺(トキ)は知らない男性と憧れの美人ピアノ講師の情事を目撃してしまい、その男に口止めされるが朱鷺の記憶からはその一連の事は抜け落ちる。朱鷺は強いストレスがかかると、その記憶だけを部分的に失ってしまう解離に近い性質をもっていた。そしてある日、教会で歌っているとき、その男と知らずに再会する。それぞれの過去の傷と闇、記憶が絡まった心の傷が絡みあうラブストーリー。
《深谷朱鷺》コンプレックスだらけの音大生。声楽を専攻している。珍しいカウンターテナーの歌声を持つ。巻くほどの自分の癖っ毛が嫌い。瞳は茶色で大きい。
《瀬川雅之》女たらしと、親友の鷹に言われる。眼鏡の黒髪イケメン。常に2、3人の人をキープ。新進気鋭の人気ピアニスト。鷹とは家がお隣さん。鷹と共に音楽一家。父は国際的ピアニスト。母は父の無名時代のパトロンの娘。
《芦崎鷹》瀬川の親友。幼い頃から天才バイオリニストとして有名指揮者の父と演奏旅行にまわる。朱鷺と知り合い、弟のように可愛がる。母は声楽家。
妖精の園
華周夏
ファンタジー
私はおばあちゃんと二人暮らし。金色の髪はこの世には、存在しない色。私の、髪の色。みんな邪悪だという。でも私には内緒の唄が歌える。植物に唄う大地の唄。花と会話したりもする。でも、私にはおばあちゃんだけ。お母さんもお父さんもいない。おばあちゃんがいなくなったら、私はどうしたらいいの?だから私は迷いの森を行く。お伽噺の中のおばあちゃんが語った妖精の国を目指して。
少しだけHなところも。。
ドキドキ度数は『*』マークで。
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
俺は生まれつき魔力が多い。
魔力が多い子供を産むのは命がけだという。
父も兄弟も、お腹の子を諦めるよう母を説得したらしい。
それでも母は俺を庇った。
そして…母の命と引き換えに俺が生まれた、というわけである。
こうして生を受けた俺を待っていたのは、家族からの精神的な虐待だった。
父親からは居ないものとして扱われ、兄たちには敵意を向けられ…。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていたのである。
後に、ある人物の悪意の介在せいだったと分かったのだが。その時の俺には分からなかった。
1人ぼっちの部屋には、時折兄弟が来た。
「お母様を返してよ」
言葉の中身はよくわからなかったが、自分に向けられる敵意と憎しみは感じた。
ただ悲しかった。辛かった。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
物ごごろがつき1人で歩けるようになると、俺はひとりで部屋から出て
屋敷の中をうろついた。
だれか俺に優しくしてくれる人がいるかもしれないと思ったのだ。
召使やらに話しかけてみたが、みな俺をいないものとして扱った。
それでも、みんなの会話を聞いたりやりとりを見たりして、俺は言葉を覚えた。
そして遂に自分のおかれた厳しい状況を…理解してしまったのである。
母の元侍女だという女の人が、教えてくれたのだ。
俺は「いらない子」なのだと。
(ぼくはかあさまをころしてうまれたんだ。
だから、みんなぼくのことがきらいなんだ。
だから、みんなぼくのことをにくんでいるんだ。
ぼくは「いらないこ」だった。
ぼくがあいされることはないんだ。)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望しサフィ心は砕けはじめた。
そしてそんなサフィを救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったのである。
「いやいや、俺が悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺は今の家族を捨て、新たな家族と仲間を選んだのだ。
★注意★
ご都合主義です。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。みんな主人公は激甘です。みんな幸せになります。
ひたすら主人公かわいいです。
苦手な方はそっ閉じを!
憎まれ3男の無双!
初投稿です。細かな矛盾などはお許しを…
感想など、コメント頂ければ作者モチベが上がりますw
あなたが笑う、それがしあわせ〖読み切り〗
華周夏
現代文学
私とあなたは結婚して二年目。同棲して三年目、私は『この人だ』と思った。一緒に暮らし始めてからの約束、夕飯は一週間ごと交代で作ること。土日は一緒に作ること──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる