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あくる日のメロンソーダ

グリーンランド〖2〗

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空想の中の君以外なら死んだ方がましなような卑猥な妄想をして、足の間を誇張する恥を手早く処理した。君なら良い、それ以外なら嫌だ。これは恋なのだろうか。
 この君への気持ちもいつかは消えてしまうのか。消えないで欲しい。柔らかな温かなもの。心の中の小さな生命のようなもの。恋は生き物なのかもしれない。この悲しく温かいものが禁忌だとしても、僕は心の中にこの生き物を飼い続けたい。

 普通人間の恋は、『子孫をのこすため』に『発情』する。じゃあ、僕は?僕にとってはどちらも当てはまらない。僕は、ただの高校生だ。

 すこし人と違うのは、お金持ちのお屋敷の使用人の息子でゲイだと言うことだ。悲しいかな、僕は女の子ではなく、あまりにも身分違いの叶うこともない想い。けれど僕の頭の中は四六時中、全てが君のことばかり。

 馬鹿みたいだな。叶うはずもないのに。一瞬、一時にしがみついて。君の面影だけを幸せな思い出だけを記憶に焼き付けて。
   
僕が想いを寄せるひとは、次期当主のご子息リュウカだ。愛情なんか最初からリュウカから僕には無い。簡単に言えば僕はリュウカのお守り兼護衛だ。
 
僕は昔からいつも君と遊ぶときメロンジュースをねだった。メロンジュースは高いのだ。使用人ではこのジュースには手が届かない。
 
この日、サイクリングから帰って、僕はのことを三時頃別荘に着く頃、いつも通りにペットボトルのメロンジュースをねだった。けれど何故か心が震えた。

『どうして?』と不思議そうに訊く君に、

『どうしても』と不思議に僕の涙腺から涙が零れそうになった。

一生懸命笑った。笑っていないと涙が溢れてしまいそうだった。君は僕の腕を掴んで、木陰に僕を連れていき、僕を抱きしめたあと、メロンジュースを一口含み、口移しで僕に飲ませて、

『婚約するんだ。高校卒業したら。内々にだけど。君との思い出を忘れない。さよなら。小さい頃から、ずっと君が好きだった』
 
君は、走り行く。森の中を。木々がざわめく風の中を。君は一度も振り替えることなく、走り去っていった。
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