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3章 生活の基盤をしっかりたてよう!

4)ポーションを作ろう!

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 勢いで組み立てた、しっかりした作りのガラスの実験器具のようなもののつなげ方が正しいかを知識の泉で再確認する。

 間違っていたところを直し、コルク栓を閉じたり、別の設備を接続したりして、ようやく正しい接続と設置ができたところで、シルフィードの力を借りて、中に気流を作る。

 カラカラと、1番大きなガラスの容器の上に付いている小さなファンが音を鳴らし始めたのを確認して、その隣に用意していた蒸留器の下にある小さめの竈にサラマンドラが火をつけた。

『フィラン、準備できたよぉ。』

「え!? ちょっと待ってて、こっちの準備ができてない! そのままの状態を保っててね。」

『え~、フィラン、お仕事遅い~。 そんなにスキル高いのに~。』

「過信評価しすぎ!」

 むかつきました、いまのは大変頭に来ました。

 薬研を用意して、乾燥されて種類別に山にしてある薬草の中から、知識の泉を検索し、『錬金薬術辞典 基本編』の一番最初の項目である『下級の体力ポーション』作成中である。

「まずは一個作ってみようね。 デオリ草20g、ネコネの種1g、不純物の入っていない清らかな水100ml、クインアントの蜜5gに、乾燥アプフィルを40g……」

 今回はきっちり作るために、薬研に薬草や乾燥果実をいれ、丁寧に砕いていく。

 これは、なかなか手のひらと肩が痛い。 前の体だったら五十肩が耐えられない、そして今は力がなくてきちんと挽けない……。

「……この力仕事はどうしたらいいんだろう……」

 これを延々と続けていたら、手にまめができて、ベロンと皮がむけるのは必至。

 皮がむけた手で薬研を使うのとかは本当に避けたい!

 そして確実に明日は全身筋肉痛!

「知識の泉検索! 薬研じゃない薬草の粉砕方法!」

 ――検索結果です。 石臼を使う、乳鉢を使う等ありますが、もっとも簡単な方法は調薬用粉砕機器が王都のギルドで金貨4枚で販売されています。

「高い……買えなくはないけど、支給金の残り全部を使うわけにはいかない……いつかお金がたまったら買おう……。 しかしやっぱり手段はないか、薬研で頑張るか……」

 ――精霊に力を借りる方法としては、密閉されたガラス容器に粉砕前の材料を入れ、風の精霊に粉砕をしてもらうという方法もあるようです。

「それだ!」

 薬研を置いて、大きめの硝子の密閉容器は確かここに……と台所のほうに向かった。

「あった!」

 薬を入れて保存するための大きめの容器をひっぱりだすと、先ほどまで薬研で砕いていた物を丁寧に入れていく。

「シルフィード! この中で風で薬草を粉砕してほしいです。」

『わかった!』

 ふわっとガラス容器に近づくと、両手でそっとその容器に触れる。

 んっ! と、シルフィードが力を入れると、つむじ風が起きてあっという間に粉々になる。

「最高!」

 ふたを開けて粉砕された薬草に触ってみれば、薬研でゴリゴリやるよりも何倍もサラサラの粉々に粉砕されたものが下にたまっている。

 薬研でやってたらすっごい時間がかかるところでした。 シルフィード最高、一瞬! あっという間に粉々!

 もう一回言います、最高!

「よし、それじゃあこれを中に入れて……お水とはちみつを入れて……蒸留器にかけて抽出しよう!」

 蒸留器にかければ、青臭い匂いがしてくる。

 あぁ、草の匂い……新しい畳の匂いに似ているとおもう、そして嫌いじゃない。 

 一人分を作っているからと、一本、ポーション用の容器を取り出す。

 抽出容器から出てきた薬液は、新しい畳の部屋に柑橘系の香りのポプリを置いたような……まぁまぁいい香りなのだが、出てきた汁はドロドロの青汁。

「だいぶ色がやばい……。」

 直接にポーション用の瓶に注ぎ終わると、蓋をする前のそれをぎゅっと両手で握る。

「で、最後は……錬金調薬スキル『神の祝福』と『神の恩恵』!」

『あ、わすれていたわ。 わたくしたちの可愛いフィランへ『七精霊のお気に入り』、フィランの作る体力ポーションへ『アルフヘイムの気まぐれ』の加護を付与。』

 私のスキル連動とアルフヘイムから飛ばされた光が私とポーションを包むのはほぼ同時だった。

「ま!」

 深緑色の、飲ませる気ゼロに近い青汁は、爽やかで甘酸っぱい香りの不透明な青い色に変わった。

 おめでとう、初ポーション完成!

 ……じゃなくてっ!

「まってっ!  アルフヘイムさっきのやつなに? ポーションおかしくなっちゃう奴?」

『その言い方は大変に失礼ですわ。 わたくし達からの心からの加護を与えるのを忘れてたいたから、たった今付与しただけですのに。』

 ふん! と顔を背けて、だけど視線だけは私に向けて、目も眩むほどまぶしい日の黄金の子は私の方を見る。

『体力ポーションは太陽のポーションって言われていますのよ。 お日様の光をたっぷり浴びた薬草や素材を基本として作るからですの。 だからわたくしの加護が付くとおまけの付与が付きますの。 対照的に、魔力ポーションは月の加護。 月の光を浴びて育つ薬草を使うからですわ。 ですから、ヴィゾウニルと、わたくし、アルフヘイムの加護を持つフィランのポーションはとっても特別になるんですのよ。 わかりまして?』

「はい、ご教授ありがとうございます!」

 虹色の、穏やかで静かな月の精霊・ヴィゾヴニルが薄く微笑み、見るも豪華な日の精霊・アルフヘイムが自慢げに笑っているのに頭を下げる。

 この二人、他の子達と圧倒的に違う神々しさで、そこにいるだけでも気持ち的に恐れ多いんだけれども、特にアルフヘイムのほうは、こう、私の偏った気持ちがその姿にも表れちゃうんだろうか……名前をあげたあたりから、こう、縦巻きロールの高貴なお嬢様(天然で役になりれない可愛くて気高い自称悪役令嬢)っぽいんだよなぁ、かわいいなぁ。

『フィラン、何故、そんなにやにやしながらわたくしを見ていますの?』

「いや、かわいいなぁって思って……。 あ、ヴィゾウニルはね、かっこいいの、めっちゃかっこいいの、こう、貴公子って感じ。」

『わ、わけのわからないことを言っていないで、早く蓋をしてしまいなさい、せっかく加護を与えたのに劣化しますわよ!』

「わ、それはだめ!」

 慌ててふたを閉めてから、くるっと蓋を止めた部分を指でなぞる。

「えっと、こうしてから……錬金調薬スキル『薬効封印』」

 指でなぞった部分に薄い膜ができ、私の名前が文様化されて接続面に固定される。

 スキルの『薬効封印』は、完成したときのポーションを作った人や組織の記名と同時に、薬効などの補償から、粗悪品やまがい品を作った時の責任をしっかりと持たせるためのもの、らしい。

「やっと一本出来上がり~。」

『私たちの加護とフィランのスキルでとんでもないものができあがっているな……。』

「え? そうなの?」

 銀色というか、不思議な虹色が揺れる貴公子・月の精霊ヴィゾウニルが困ったように笑っているので、慌ててポーションをいろんな角度から見てみるが、何が変わってるのかわからず、そういえば、とギルドからもらった体力ポーションを取り出して比べてみる。

「……瓶が違う? 後、私のはきらきらしてる?」

『瓶は関係ない。』

「だよね。」

 だって私のポーション瓶は市販品だもん。

 ポーション瓶は市販の物を使ったり、所属ギルドや自分で作ってもらったりもするらしい。

 形でどこ製のポーションってわかったりするみたいだから、私もちょっと今度相談してみたいと思っているんだけど、その差じゃないとすれば。

「きらきら?」

『加護だな。』

「加護かぁ。 どれくらい普通のポーションと違うんだろう。 ――知識の泉、検索! 普通のポーションと私のポーションの違い!」

 ――検索できません。 マスターのポーションが鑑定後であれば、知識の泉の中にあるポーション各種と比較することはできます。

「鑑定、鑑定かぁ……。」

 う~ん、と腕組みして頭を悩ませる。

「神様に鑑定スキル、貰えばよかったなぁ。」

『誰か、知り合った人で鑑定スキル持っている人、居ないの?』

 ……鑑定スキル持ちの知り合いって言ったら……

「ラージュ陛下。」

『それはやめましょう。』

 アルムヘイムと2人、顔を見合わせて頷きあう。

 下級の体力ポーション鑑定してくださいって、お城に行ったら絶対不敬じゃないだろうか…。

「……あ、ギルドの人が見てくれるって言ってたかも!」

『じゃあ明日みてもらおう。 他にもポーションを作って一緒に見てもらえばいい。』

「そうか! そうだね、うん。 そうしよう!」

 ウンウンうなずいて、私は次のポーション作りに取り掛かる。

 教科書代わりにもなっている知識の泉を検索して、今度は魔力ポーションを作る用意をしはじめた。
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