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2章 ここで生きる準備をしよう

2)マルシェにむかおう!(説明多め)

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「見るべきものは、物価のリサーチ……食品、洗面用具、食器、調理器具、園芸用品。 ご飯はどうせならおいしく食べれたいなぁ……料理機材向こうと一緒かなぁ。 あ、洗濯物は魔法があってもお日様で干すんだね……そうだ、下着と替えの服も買わなきゃ。」

 店舗兼家を出ててくてく歩きながら、街を観察して見ると、洗濯物が干してあるのを見かけた。

 そうか、なんでも魔法で済ますわけじゃないのか。

 お日様に干した後のほこほこの洗濯物は、私もコタロウも好きだったからちょっとうれしいなあと思いながらきょろきょろする。

「こっちは寝るときどうしてるのかな。 知識の泉、画像で検索!」

 ――検索結果です。

 頭の中に浮かんだものは、ピンキリの寝具だが、基本は変わりないみたい。

「ベッドを買うところからだといくらかかるかな……。 もし最初の予算の範囲内だったら家の中でも靴を履いているし、ベッドほしいけど……。 ひとまず予算の優先順位はお店の大型の備品かな。 贅沢品は後回しにしないと。」

 最悪、当分コタロウに間借りでもいいかも……夏になるまでなら。

 いろいろ考えながら、頭の中で整理する。

 昨日王宮で出してもらったティーセットは多分きっとすごく高級品だから論外として、ギルドの家具はすごく実用性重視だった……味気ないくらいに。

 向こうではとても安価で可愛い食器や雑貨を売る店が多くあったけど、こっちはそういう物はないだろうから、厳選しよう。

 食器は味気ないかもしれないけど、まずはつかえればいいとして、余裕が出来たら後で買い替え……いや、最初に気に入ったものを買って長く大事に使うっていうのもありだ! 妥協して買って後で買いなおすよりは、そっちの方がコスパ的にもいいのでは?

 う~ん、と、本気で考える。

 中の人アラフォー女がもし外見ほどに若かったら「これ可愛い! ほしい!」の勢いで買ってたんだろうけど、お金を稼いでそれで生活する大変さを知っている身としては、お金大事!

 とっても大事!

 お金がないとチャンスも逃げる。

 ご飯が美味しければシンプルプレートでも……いやでもお気に入りの食器ってご飯食べるときはとってもテンションが上がるし、癒される。

 気分上昇、プライスレス!

 うわーどうしよう!!

 中の人の年齢の経験の分だけ、とっても考えてしまう。

 どっちも大事なんだよ! これ、大事!

 あぁ、自分の思考が面倒くさい!

「知識の泉! どうしたらいい?!」

 返答はない。

「だよねぇ……」

 世界の知識の書庫アカシックレコードを漁っても、主観的な情報なんか乗ってるわけがないから、さすがに返答はない。

 とりあえず食器や調理器具おもいものは帰り道に買おう!

 秘密兵器があるけどね!

 うふふ、と腕にかけたかわいい買い物籠をなでなでしながら、頭の中には、知識の泉にお願いして展開してもらっている二階層のマルシェ付近の地図を確認しながら目的の店の行く順番を考える。

 各階層の中は警護の厚い王宮の真下の区画が一番人気の住宅区・第一区画から右回りに第二、第三と続き、第六区画まであり奇数は住宅区画、偶数は商業区画になっている。

 そしてやっぱりというか区画の中でも人気のエリアというものはあって「神の木」つまり円の中央に近いほうが人気が高い……ということで、第一区画全般、第三・第五区画の内側は国営住宅でも、家賃に追加料金がかかると言っていた。

 人気物件はこっちでもお金がかかるということみたい。

 外側が人気がないのは、『もし戦争や魔物の襲撃の時は外側から攻められるでしょ?』という理由だそうだ。

 王都要塞ルフォート・フォーマはここ百年ほど外部からの攻撃や侵略もなく平和だが、過去には戦争とかもあったようで、防衛面でも心理面でも、守りの力が強いほうが人気なのは当たり前だなぁと思う。

 私の新居は、ラージュ陛下に言われたとおり、二階層の第二区画、店舗の並ぶ商業区画にあってマルシェまで目と鼻の先に近いその区画の右隣にある。

 昨日聞いたとおり、商業区画には実稼働のある店舗があれば居住は自由らしいが、お金持ちの人は店舗と自宅を別に持っているらしい。 が、そんな不経済なことは私はできません!

 店舗の二階、最高!

 と、ここまでは、昨晩コタロウの天然毛布でうつらうつらしながら、知識の泉から学んだことだ。

 ラージュ陛下に言われたとおり、腕輪の機能やこの町の基礎知識、法律にマナーなど、本当に差し迫って必要な知識を中心に調べていった。

 その基礎知識で100年前の戦争の首謀者が誰かを知る羽目になって、調べなきゃよかったと心から思ったが、しばらくは毎晩、こうして知識を増やそうとは思っている。

 それから、と、左手首にはまっている銀の腕輪を見る。

 この腕輪、かなり便利。

 おうちの鍵にもなる身分証明書、これに尽きる。

 どこに行くにも、何をするにも身分証明を求められる場合にはこれが必要になる。

 もちろん、世界各地の公的なゲート移動の身分確認も全部これで行われる。

 これにキャッシュレス決済機能ついたら本当に完璧っ! 落として拾われて悪用されたらどうしようなどと思ったが、持ち主以外は認証されない不思議機能が付いてるから安全みたいだ。 それでもない間は不便を強いられるから、絶対になくさないように気を付けなきゃいけないんだけど……と思ったら一度付けたらこれ、外れないらしい。

 ならいろいろ安全! と思いきる。

 えらい目にあったけど、キャッシュレス機能、進言してよかった、付与されたら本当に昨日の努力も報われる!

 特にこの肩に食い込む金の重さとかな……早くキャッシュレス機能実装してほしい!

 そうそう、キャッシュレス機能といえば。

 昨日行ったギルド。

 市役所、職業安定所、農地のことや、税金の事、衛生的な事、世界銀行、国営住宅の申し込みなどの一般的に言うお役所を一手に請け負ってるすごい場所。

 検索した限りでも公的なサービスはかなり充実しているし、元の世界よりもよっぽど親切で仕事も早くてフレンドリー……強引なのが玉に瑕っていうか、えらい目にあったけどね(大事なことなので何度も言う)。

 ただし、あそこは一般市民のための生活密着型のギルド。

 もし冒険者になるときには一階層にある冒険者ギルドへの登録が必要で、冒険者たち腕自慢が仕事を請け負うことが可能になる。

 冒険者は信頼度とか、こなした仕事、倒したモンスター、本人の強さでランクが決まり、ランクを上げるための試験もあるらしい。

 慈善活動っていう項目もあったから、戦って強けりゃ偉い! 何しても許される! っていうものじゃないんだってすごいなぁ。

 まぁ平和が一番だし、スローライフをする私には、かかわる必要はないな~。

「街中は騎士様もいるし、自警団もしっかり組織されてる、神様にお願いしたとおり、安心安全清潔なイージーモードスローライフを送ることは、この王都内では苦労しないよ! ありがとう神様!」

 と、感謝の弁を述べながら、私が住む商業区画の中通りに向かう。

 貴族層と言われる三階層のマルシェにはこの国の高級品や、他国の高級特産品が並ぶらしいけど、私一般市民! 二階層の庶民マルシェ、とっても楽しみ!

 鼻歌まじりに、私はマルシェにつながる曲がり角をくるっと曲がった。
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