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1章 王都要塞ルフォート・フォーマ
7)要塞都市の意味が解りました!
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「これが上から見た国!?」
下から吹く風にスカートと髪の毛を抑えながら、私はあっけにとられるしかなかった。
中央には高いところからでも私の手を広げたくらいはある、美しい緑の葉をたたえた枝を張った巨大な木。
それを中心に放射状の等間隔に6本、たくさんの人が行きかう大きな道があって、その奥にはまた、大小さまざまな白い道と、色とりどりの屋根や緑が見える。
それがぐるっと木の枝の2倍に街並みとして広がり、6つの塔を持った高い壁、それから私の小指を横にした一本分の緑の木々が広がり、その外側に12本の塔を持った、内側の壁よりたぶんだけど少し低いと思われる真っ白な外壁が見える。
上から見てもとにかく大きく、そして全体的に均整がとれていて綺麗というほかにない。
6本の道で分かれた一角だけ、そこだけ異常に緑がひろがり、中央に白くて美しい建物があったので、あれが先ほどまでいたお城なのだろうと分かった。
まぁわかったところで、とんでもないところに行ってたんだなぁとしか感じないわけであるが。
「びっくりしましたか?」
「はい! ものすっごいびっくりしました!」
素直にそう答えると、予想通りの反応が返ってきたのが嬉しかったみたいで、それは良かったと弾む声が聞こえる。
オーネスト様はきっと、すごく朗らかでまっすぐ、面倒見がよくて楽しい性格をしていらっしゃるのだろう。
イケメンで細マッチョで頼りがいがあって性格が良いとかなんですか!
推しですね、今日からわたし、オーネスト様の事ものすごく推しますね。 この世界に来て最初の推し決定ですよ! と、力が入る。
そんな私の心の内を知ってか知らずか、程よく筋肉がついているのが制服の上からでもわかるしなやかな右腕(前足じゃないですよ)を伸ばした。
「あちらの白い建物がルフォート・フォーマ城です。 それから王城の両隣りに政や軍部の機関のある官庁街、そこから右回りに、貴族たちの屋敷の並ぶ貴族街、我々のような一般市民とはあんまり御縁のない高級店や飲食店のある商用街、王立の研究所やより高度な勉学を学ぶことのできる大学のあるアカデミー街ですね。 これが第三階層と言われます。」
ここまで聞いて、うん? と思う。
「オーネスト様。」
「様はいりませんよ、オーネストで結構です。」
「いえ、そんなわけにはいきません。 それよりも今のお話でちょっと不思議だったのですが、今説明してくださったの、貴族とか、高級店とか……一般市民の方や普通のお買い物とかができないってことですか?」
「そうですね、不思議に思われますよね。 では、その謎を解くために今からかなり高度を下げますので、しっかりつかまっていてくださいね。」
空中なのに、蹄が鳴る音が聞こえた。
すると一気に先ほど見た二重にあるうちの内側の外壁にある塔の屋根の隣についた。
同じ急降下でもあっても、何の予備行動もないスカイダイビングに比べればオーネスト様の背中である。
先ほどよりも周りの景色や鳥、きっとオーネスト様の同僚なのだろう、こちらにむかって笑顔で手を振ってくれる騎士様を見つける余裕がある。
そして、先ほどの街並みが第三階層と言われていた理由を私はここで初めて知った。
「うわぁ! なにこれ! どうなってるんですか??」
第三階層を見上げる形になった時になんとなく全体像横からの図がわかった。
が、この町が成り立っている原理が全く分からない。
この国の形、それは。
「アフターヌーンティの時に使うケーキスタンドみたいになってる!」
真ん中の大きな木を主軸にして、3段の層になっているのだ。
外側から支えるものは何もなく、それならば間違いなく中央の木だけでこの「王国」の全住人の衣食住の基盤を支えていることになる。
「アフターヌーンティ? ですか?」
「あ、すみません、わからないですよね。」
首をかしげているオーネスト様に一応謝るが、しかし「アフターヌーンティのケーキスタンド」以上にこの国の構造を表現する語彙力が私にはなかったのだ。
横から見る形になると、高い塔も教会らしき建物も見える。 一番下の階層には畑や田んぼ、たぶん家畜であろう生き物が放牧されている様子も小さくであるが見える。
前世の世界でジオラマのテーマパークがあったが、あれが現物で、生でそこにある感じだ。 しかもそこにこれから自分は住むのだ。
これ、上の階層が落ちてきたりしないのだろうか。
一番上の階層はいいとしても、下の階層はお日様の光がちゃんと当たるのだろうか……内側の方の湿気は?! などといろんなことが頭に浮かんで不思議な顔をしていたようである。
オーネスト様が教えてくれた。
「この城壁がこの形で保たれている本当の理由は実は解明されていません。 下の階層へは、各階層にある騎士団駐屯地の中の各転移門で移動します。 城壁の外に出るのも同じです。 主要な道は見ていただいた3階層と一緒で6本あります。
一番下の階層は、王城の真下の区域から時計回りに、冒険者たちの拠点である冒険者ギルドや宿屋、商店などが2区画にわたり広がり、鍛冶屋や装備品などのアトリエが集う職人街、 そこから2区画にわたり農耕地帯。そして他国から運び込まれる海産物や生鮮食品などの市が広がるマルシェがあります。 他国からの民は、特別な許可証を持たない限り、第2、第3階層へは上がれません。
第二階層はこの国の一般的な民が住んでいます。 王城の真下から、一般市民の住居街と、市場や商店に公園などのある商工街が交互に広がります。 まぁ、第一階層に好んで住む国民もおりますが、基本は皆、第二階層に住んでおりますね。 我々のような庶民は、一般的に下から、交易層、庶民層、貴族層と呼んでいます。」
「は~……大変ですね……」
「住んでみればわかりますが、大変なことはありません。 一、二階層は貴族特権の効力外ですので、えらい人が横柄に、ということもありませんし、三階層へは仕事でもなければ上がりませんからね。」
もちろん、私も仕事と用事のある時しか行きません。
と、笑ってくださるけれど、それはそれで身分とか人に上下があるのめんどくさくていやだなぁ……と思う。
「しかし貴族がいるとはいってもご安心ください、この国は基本、能力主義です。」
オーネスト様が拳を握る。
「昔は確かに貴族がすべての実権を握って、という時代もあったそうですが、今はそんなことはありません。 貴族より高位の官職につく者もおりますし、様々な学問を学ぶアカデミーや、騎士になるための士官学校などは貴族だけでなく能力のあるもの皆が通えます。 金銭的な問題があるものでも、学力が高ければ国から生活費と授業料は出ますからね。 逆に貴族の方が爵位を返上して冒険者になったりすることもあります。 私は交易層の出身ですが、現在はこうして騎士ですしね。 兄も同じく騎士をやっています。 僕より少し上の階級ですが。」
空中防衛部隊は、羽持である鳥人や獣人にしかできない人気の職業なんですよ、僕は鞍なしですけどね、と笑った彼にハッとした。
兄って言った?
そういえば最初にのせてくださった翼ケンタウロス様は鞍が付いてた!
オーネスト様の背中に鞍はない。
……もしかして……
「……オーネスト様は、最初に助けてくださった騎士様ではないのですか?」
「気づかれましたね。 落ちてきたあなたを助けたのは兄のブレイブ・ボルハンです。 空中落下の後なのでそこまで覚えていらっしゃらないと思ったのですが。」
「お話していて違和感はあったんですけど、びっくりする方が先で……そういえばお話の仕方が違いますね。 本当にすみません!」
今の今まで興奮していて全然気づいていませんでした、ごめんなさい、なんて言いませんよ、私大人、外見は可愛い14歳でも、中身は40超えちゃった大人ですから!
ちなみに話し方は変えていません、これが素です、かわい子ちゃんを演じてるわけでも何でもありません。
……いや、ここを掘ると思いだしたくない事を思い出しそうなのでやめときます、私、賢い!
「この国の形がよくわかりました、ありがとうございます、オーネスト様!」
「いえ、寄り道をしてしまって申し訳ありません。 ではこのまま三階層にあるギルドに行って申請をしてしまいましょう。 家も決めなくてはいけませんからね。」
「そうでしたね、忘れてました。 よろしくお願いいたします。」
「えぇ、一気に行きましょう。 もう一度しっかり掴まっていて下さいね。」
カツカツ!
蹄の音が風属性である飛翔魔法の合図なのだと言いながら、彼は貴族層に向かって高く駆け上がった。
下から吹く風にスカートと髪の毛を抑えながら、私はあっけにとられるしかなかった。
中央には高いところからでも私の手を広げたくらいはある、美しい緑の葉をたたえた枝を張った巨大な木。
それを中心に放射状の等間隔に6本、たくさんの人が行きかう大きな道があって、その奥にはまた、大小さまざまな白い道と、色とりどりの屋根や緑が見える。
それがぐるっと木の枝の2倍に街並みとして広がり、6つの塔を持った高い壁、それから私の小指を横にした一本分の緑の木々が広がり、その外側に12本の塔を持った、内側の壁よりたぶんだけど少し低いと思われる真っ白な外壁が見える。
上から見てもとにかく大きく、そして全体的に均整がとれていて綺麗というほかにない。
6本の道で分かれた一角だけ、そこだけ異常に緑がひろがり、中央に白くて美しい建物があったので、あれが先ほどまでいたお城なのだろうと分かった。
まぁわかったところで、とんでもないところに行ってたんだなぁとしか感じないわけであるが。
「びっくりしましたか?」
「はい! ものすっごいびっくりしました!」
素直にそう答えると、予想通りの反応が返ってきたのが嬉しかったみたいで、それは良かったと弾む声が聞こえる。
オーネスト様はきっと、すごく朗らかでまっすぐ、面倒見がよくて楽しい性格をしていらっしゃるのだろう。
イケメンで細マッチョで頼りがいがあって性格が良いとかなんですか!
推しですね、今日からわたし、オーネスト様の事ものすごく推しますね。 この世界に来て最初の推し決定ですよ! と、力が入る。
そんな私の心の内を知ってか知らずか、程よく筋肉がついているのが制服の上からでもわかるしなやかな右腕(前足じゃないですよ)を伸ばした。
「あちらの白い建物がルフォート・フォーマ城です。 それから王城の両隣りに政や軍部の機関のある官庁街、そこから右回りに、貴族たちの屋敷の並ぶ貴族街、我々のような一般市民とはあんまり御縁のない高級店や飲食店のある商用街、王立の研究所やより高度な勉学を学ぶことのできる大学のあるアカデミー街ですね。 これが第三階層と言われます。」
ここまで聞いて、うん? と思う。
「オーネスト様。」
「様はいりませんよ、オーネストで結構です。」
「いえ、そんなわけにはいきません。 それよりも今のお話でちょっと不思議だったのですが、今説明してくださったの、貴族とか、高級店とか……一般市民の方や普通のお買い物とかができないってことですか?」
「そうですね、不思議に思われますよね。 では、その謎を解くために今からかなり高度を下げますので、しっかりつかまっていてくださいね。」
空中なのに、蹄が鳴る音が聞こえた。
すると一気に先ほど見た二重にあるうちの内側の外壁にある塔の屋根の隣についた。
同じ急降下でもあっても、何の予備行動もないスカイダイビングに比べればオーネスト様の背中である。
先ほどよりも周りの景色や鳥、きっとオーネスト様の同僚なのだろう、こちらにむかって笑顔で手を振ってくれる騎士様を見つける余裕がある。
そして、先ほどの街並みが第三階層と言われていた理由を私はここで初めて知った。
「うわぁ! なにこれ! どうなってるんですか??」
第三階層を見上げる形になった時になんとなく全体像横からの図がわかった。
が、この町が成り立っている原理が全く分からない。
この国の形、それは。
「アフターヌーンティの時に使うケーキスタンドみたいになってる!」
真ん中の大きな木を主軸にして、3段の層になっているのだ。
外側から支えるものは何もなく、それならば間違いなく中央の木だけでこの「王国」の全住人の衣食住の基盤を支えていることになる。
「アフターヌーンティ? ですか?」
「あ、すみません、わからないですよね。」
首をかしげているオーネスト様に一応謝るが、しかし「アフターヌーンティのケーキスタンド」以上にこの国の構造を表現する語彙力が私にはなかったのだ。
横から見る形になると、高い塔も教会らしき建物も見える。 一番下の階層には畑や田んぼ、たぶん家畜であろう生き物が放牧されている様子も小さくであるが見える。
前世の世界でジオラマのテーマパークがあったが、あれが現物で、生でそこにある感じだ。 しかもそこにこれから自分は住むのだ。
これ、上の階層が落ちてきたりしないのだろうか。
一番上の階層はいいとしても、下の階層はお日様の光がちゃんと当たるのだろうか……内側の方の湿気は?! などといろんなことが頭に浮かんで不思議な顔をしていたようである。
オーネスト様が教えてくれた。
「この城壁がこの形で保たれている本当の理由は実は解明されていません。 下の階層へは、各階層にある騎士団駐屯地の中の各転移門で移動します。 城壁の外に出るのも同じです。 主要な道は見ていただいた3階層と一緒で6本あります。
一番下の階層は、王城の真下の区域から時計回りに、冒険者たちの拠点である冒険者ギルドや宿屋、商店などが2区画にわたり広がり、鍛冶屋や装備品などのアトリエが集う職人街、 そこから2区画にわたり農耕地帯。そして他国から運び込まれる海産物や生鮮食品などの市が広がるマルシェがあります。 他国からの民は、特別な許可証を持たない限り、第2、第3階層へは上がれません。
第二階層はこの国の一般的な民が住んでいます。 王城の真下から、一般市民の住居街と、市場や商店に公園などのある商工街が交互に広がります。 まぁ、第一階層に好んで住む国民もおりますが、基本は皆、第二階層に住んでおりますね。 我々のような庶民は、一般的に下から、交易層、庶民層、貴族層と呼んでいます。」
「は~……大変ですね……」
「住んでみればわかりますが、大変なことはありません。 一、二階層は貴族特権の効力外ですので、えらい人が横柄に、ということもありませんし、三階層へは仕事でもなければ上がりませんからね。」
もちろん、私も仕事と用事のある時しか行きません。
と、笑ってくださるけれど、それはそれで身分とか人に上下があるのめんどくさくていやだなぁ……と思う。
「しかし貴族がいるとはいってもご安心ください、この国は基本、能力主義です。」
オーネスト様が拳を握る。
「昔は確かに貴族がすべての実権を握って、という時代もあったそうですが、今はそんなことはありません。 貴族より高位の官職につく者もおりますし、様々な学問を学ぶアカデミーや、騎士になるための士官学校などは貴族だけでなく能力のあるもの皆が通えます。 金銭的な問題があるものでも、学力が高ければ国から生活費と授業料は出ますからね。 逆に貴族の方が爵位を返上して冒険者になったりすることもあります。 私は交易層の出身ですが、現在はこうして騎士ですしね。 兄も同じく騎士をやっています。 僕より少し上の階級ですが。」
空中防衛部隊は、羽持である鳥人や獣人にしかできない人気の職業なんですよ、僕は鞍なしですけどね、と笑った彼にハッとした。
兄って言った?
そういえば最初にのせてくださった翼ケンタウロス様は鞍が付いてた!
オーネスト様の背中に鞍はない。
……もしかして……
「……オーネスト様は、最初に助けてくださった騎士様ではないのですか?」
「気づかれましたね。 落ちてきたあなたを助けたのは兄のブレイブ・ボルハンです。 空中落下の後なのでそこまで覚えていらっしゃらないと思ったのですが。」
「お話していて違和感はあったんですけど、びっくりする方が先で……そういえばお話の仕方が違いますね。 本当にすみません!」
今の今まで興奮していて全然気づいていませんでした、ごめんなさい、なんて言いませんよ、私大人、外見は可愛い14歳でも、中身は40超えちゃった大人ですから!
ちなみに話し方は変えていません、これが素です、かわい子ちゃんを演じてるわけでも何でもありません。
……いや、ここを掘ると思いだしたくない事を思い出しそうなのでやめときます、私、賢い!
「この国の形がよくわかりました、ありがとうございます、オーネスト様!」
「いえ、寄り道をしてしまって申し訳ありません。 ではこのまま三階層にあるギルドに行って申請をしてしまいましょう。 家も決めなくてはいけませんからね。」
「そうでしたね、忘れてました。 よろしくお願いいたします。」
「えぇ、一気に行きましょう。 もう一度しっかり掴まっていて下さいね。」
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