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5・はじめまして、赤ちゃん(と、抱っこ)
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「みなさん、紹介しますね。 本日よりこの修道院に見習いとして入られたミーシャさんです。」
院長先生と部屋に入り、そこにいる人たちの視線を感じる中、私はそう紹介されたため、静かに頭を下げた。
「初めてお目にかかります。 本日よりアリア修道院の見習い修道女となりましたミーシャと申します。 何をするにしても不慣れなため、皆様にはご迷惑をおかけするかとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
灰色の修道服の端を摘み、静かにカーテシーをしてから顔を上げ……ると、何故だか皆様から、幼子を見守る時のような、とても微笑ましいものを見ているような視線を浴びているような気がした。
「あ、あの。 何か粗相でも……?」
少し不安になり顔を上げて院長先生を見ると、そちらもまた、微笑ましいものを見た、という顔をしている。
「あの、先生。」
「あぁ、ごめんなさいね。 初日にそうして素直に挨拶をしてくれる子は珍しいのよ。 特に貴方の様な貴族のお嬢さんは。」
「……はぁ……?」
(挨拶は基本でしょう? 素直に挨拶する子が珍しいって、その子達、恥ずかしくないのかしら?)
首をかしげて困惑する私に、にこにこと笑っている院長先生は、では、皆を紹介するわね、と、3人の女性と3人の赤ちゃんの前にわたしを促した。
「皆、ここには私と同じほど勤めてくれている大ベテランだから、何かあったら相談するといいわ。 では右から紹介しますね。 この修道院のもう一人の修道女、シスター・サリアと、彼女に抱っこされているのが『アニー』4か月の女の子よ。」
そう言うと、鳶色の瞳がとても柔らかい印象の修道女が、赤ちゃんを抱いたまま軽く頭を下げて微笑んでくれた。
「はじめましてシスター・サリアよ。 貴方の様ないい子が来て嬉しいわ。 どうぞよろしくね。 私の事は気おわずサリアと呼んで頂戴。 そしてこの子がアニーよ。」
「は、はい。 よろしくお願いします。」
頭を下げてから顔を上げると、そこには赤毛の赤ちゃんの、すやすやと眠る女の赤ちゃんの顔があった。
「……アニー……ちゃん?」
ふっくらした頬に、小さな鼻や唇、握りしめている手。 すべてがとても小さく感じた。
「こんなに、小さいんですね。」
女性の腕の中にすっぽりと収まってしまうくらい小さな体。
生まれて初めて見る赤ちゃんに、私は目を奪われた。
こんな小さいのに、目も、髪も、眉毛も、まつげも、鼻も、鼻の穴も、口も、耳も、指も、小さな爪も。 全部が大人と同じできちんとついていることに驚いたのだ。
(小さいのに、不思議ね!)
「えぇそうね。 でも、もっと小さい赤ちゃんもいるのよ。 サリアの隣にいるのが、この修道院開設の時から働いてくれているお手伝いのダリア。 抱っこしているのはバビー。 6か月の男の子よ。」
「ダリアにバビーよ、よろしくね、ミーシャ。」
「はい、よろしくお願いします。」
貫禄のある大きな体に、焦げ茶色の髪と瞳の女性が抱くのは、柔らかそうな細い細い黒髪に、キラキラとした緑色の瞳の男の子は、先ほどのアニーより二回りは大きな赤ちゃんだ。
「バビー……君。 この子は男の子、なんですね。」
「えぇ、そうよ。 まぁまだこの頃はまだ、こうしているだけじゃよく見わけが付かないけれどね。」
にっこりと笑ってそう言ったダリアに頷くと、次は、と、その隣の女性が笑ってくれた。
「そのとなりにいるのがお料理がとても上手で、5年前から来てくれているダリアの娘のマーナよ。 抱っこしている女の子の赤ちゃんがシンシア、生後3週間。 つい先日ここに来たばかりなの。 ミーシャ、貴方と一緒ね。」
「マーナにシンシアよ。 よろしくね、ミーシャ。」
「よろしくお願いします。」
華奢だと思うほど細身の、黒髪をおさげにした黒い瞳の子の中では年若い(私よりは少し年上くらい)の女性マーナに挨拶をした私は、その腕に抱っこされている金髪の、本当に小さな赤ちゃんに目を奪われた。
「……本当に、小さい……ですね。」
マーナの抱っこする小さな小さな赤ちゃんにびっくりしていると、マーナはにっこりと笑った。
「抱っこしてみる?」
「え!?」
「ほら、静かに。」
急なことで大きな声を出してしまった私に、『しぃ~』とジェスチャーをしながら、そういったマーナは、院長先生の方を見た。
「いいですか? 先生。」
「もちろんよ。 これからミーシャはここで働くのだもの。 いつが初めて、とかはないわ。 ミーシャ、この子はまだ首がしっかりと発達していない赤ちゃんなの。 だからこうして右肘のところで首を、左の腕でお尻と足を優しく支えながら抱っこするのよ。」
院長先生の言葉に、頷いたシスター・サリアが、にこっと笑って私を見た。
「ミーシャ。 貴女は赤ちゃんを抱っこしたことはあるの?」
それには私は思い切り首を振る。
「い、いえ、今まで一度もありません! 見るのも初めてです!」
それにはあら? と、院長先生が首をかしげる。
「小さなころ、弟さんを抱っこさせてもらわなかったの?」
と言われたが、それは無理な話だ。
「弟とは双子ですので。」
「あぁ、それは抱っこ出来ないわね。 じゃあ、初めての抱っこね。 大丈夫、緊張しないで。」
あははと笑ったダリアが、私の背中をトントン、と優しく撫でると、扉の近くの洗面所を指さした。
「じゃあ、赤ちゃんを触る時の最初の約束。 赤ちゃんに触る前にはまずは手を洗うこと。 それから、壁にかけてある綺麗なエプロンを身につけること。 それと、この部屋では大きな声や音を立てず、大きな動きをしないこと。 さ、用意が出来たらここに座りなさい。」
「は、はい。」
勢いに負けるように頷いた私は、言われるがままに扉近くの洗面所で手を洗うと、壁にかけられたとても柔らかなエプロンを身に着け、用意された木の椅子に座った。
「さっ抱っこする時の手の形は、こう、こうよ。」
「こう、ですか?」
「そんなに肩に力を入れないで、もっとゆっくりでいいわ。 あぁ、そう、そんな感じね」
見よう見まねで両手を組むと、それでは駄目だわ、と、バビーを抱っこしているダリアが教えてくれるので、言われるがまま、されるがままに腕の位置を動かす。
「うん、こんなもんでしょ。 じゃあ、抱っこしてみましょう。 さぁ、シンシア。 新しいマザーが来ましたよ、」
そこにそっと、マーナがすやすやと眠る小さな小さな赤ちゃん『シンシア』をゆっくりと乗せてくれた。
ずしり。 感じる重みに声が出た。
「……重い……っ」
普段、重い物を持ったことがなかったため、人一人分の重さにびっくりする。
けれど、それに勝る感覚が湧いてくる。
「……柔らかい……温かい……。」
重さは確かにあるけれど、それよりも吃驚したのは、自分よりもうんと暖かでふにゃふにゃで柔らかな小さな体と、その体からあふれる甘い匂い。
「……可愛い……。」
腕の中ですやすやと眠る小さな赤ちゃんに私はつい、そう口にしてしまった。
「そうだろう、そうだろう。 眠っている赤ちゃんは、こんなに可愛いんだ。 ねぇ、バビー。」
ダリアが自分が抱っこしているバビーを見て、嬉しそうに笑い、それから私に言った。
「ミーシャも昔はこうして生まれて、母親に、父親に。 いろんな人に抱っこされて、名前を呼ばれて大きくなったんだ。 ほら、ミーシャも、名前を呼んであげな。 赤ちゃんの耳はね、もうしっかりと、周りの声を、言葉を聴いているんだよ。」
私の目の前でお手本の様にバビーを抱っこしながら、私にそう笑ってくれたダリアの言葉に、私はもう一度、自分の腕の中の赤ちゃんの顔を見た。
(名前を呼んだら、聞こえているの?)
こんな小さい赤ちゃんの、こんな小さい耳が、私と同じく音を聞いているなんて考えられない。
けれど、私は努めて穏やかに、上での中の赤ちゃんの名前と呼んでみた。
「……シ、シンシア……?」
その名を呼べば、本当に聞こえたのだろうか。
閉じていた瞼がぽかっと開き、キラキラと澄んだ、大きな水色の瞳が現れた。
(綺麗……可愛い……。)
大きな声を出さないように注意しながらその様子をじっと見ていると、シンシアは一つ、ふわぁっと大きく欠伸をし、もう一度私の方をじっと見て。
にっこり。
シンシアが笑ってくれたのだ。
「……笑……った……。」
あまりの儚く感じる、花のような微笑みに、私は胸を鷲掴みにされた気持ちになった。
(……可愛い、本当に、可愛い……。)
ぎゅうっとなる気持ちに私が何とも言い難い気持ちを抱えていると、そっと、私の肩に優しく手が載せられた。
「ミーシャの腕の中が気持ちよかったのよね。 良かったわねシンシア。 ミーシャも、良かったわね。」
顔を上げた私に、院長先生も、3人の女性も、にっこりと私に微笑んでくれていた。
院長先生と部屋に入り、そこにいる人たちの視線を感じる中、私はそう紹介されたため、静かに頭を下げた。
「初めてお目にかかります。 本日よりアリア修道院の見習い修道女となりましたミーシャと申します。 何をするにしても不慣れなため、皆様にはご迷惑をおかけするかとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
灰色の修道服の端を摘み、静かにカーテシーをしてから顔を上げ……ると、何故だか皆様から、幼子を見守る時のような、とても微笑ましいものを見ているような視線を浴びているような気がした。
「あ、あの。 何か粗相でも……?」
少し不安になり顔を上げて院長先生を見ると、そちらもまた、微笑ましいものを見た、という顔をしている。
「あの、先生。」
「あぁ、ごめんなさいね。 初日にそうして素直に挨拶をしてくれる子は珍しいのよ。 特に貴方の様な貴族のお嬢さんは。」
「……はぁ……?」
(挨拶は基本でしょう? 素直に挨拶する子が珍しいって、その子達、恥ずかしくないのかしら?)
首をかしげて困惑する私に、にこにこと笑っている院長先生は、では、皆を紹介するわね、と、3人の女性と3人の赤ちゃんの前にわたしを促した。
「皆、ここには私と同じほど勤めてくれている大ベテランだから、何かあったら相談するといいわ。 では右から紹介しますね。 この修道院のもう一人の修道女、シスター・サリアと、彼女に抱っこされているのが『アニー』4か月の女の子よ。」
そう言うと、鳶色の瞳がとても柔らかい印象の修道女が、赤ちゃんを抱いたまま軽く頭を下げて微笑んでくれた。
「はじめましてシスター・サリアよ。 貴方の様ないい子が来て嬉しいわ。 どうぞよろしくね。 私の事は気おわずサリアと呼んで頂戴。 そしてこの子がアニーよ。」
「は、はい。 よろしくお願いします。」
頭を下げてから顔を上げると、そこには赤毛の赤ちゃんの、すやすやと眠る女の赤ちゃんの顔があった。
「……アニー……ちゃん?」
ふっくらした頬に、小さな鼻や唇、握りしめている手。 すべてがとても小さく感じた。
「こんなに、小さいんですね。」
女性の腕の中にすっぽりと収まってしまうくらい小さな体。
生まれて初めて見る赤ちゃんに、私は目を奪われた。
こんな小さいのに、目も、髪も、眉毛も、まつげも、鼻も、鼻の穴も、口も、耳も、指も、小さな爪も。 全部が大人と同じできちんとついていることに驚いたのだ。
(小さいのに、不思議ね!)
「えぇそうね。 でも、もっと小さい赤ちゃんもいるのよ。 サリアの隣にいるのが、この修道院開設の時から働いてくれているお手伝いのダリア。 抱っこしているのはバビー。 6か月の男の子よ。」
「ダリアにバビーよ、よろしくね、ミーシャ。」
「はい、よろしくお願いします。」
貫禄のある大きな体に、焦げ茶色の髪と瞳の女性が抱くのは、柔らかそうな細い細い黒髪に、キラキラとした緑色の瞳の男の子は、先ほどのアニーより二回りは大きな赤ちゃんだ。
「バビー……君。 この子は男の子、なんですね。」
「えぇ、そうよ。 まぁまだこの頃はまだ、こうしているだけじゃよく見わけが付かないけれどね。」
にっこりと笑ってそう言ったダリアに頷くと、次は、と、その隣の女性が笑ってくれた。
「そのとなりにいるのがお料理がとても上手で、5年前から来てくれているダリアの娘のマーナよ。 抱っこしている女の子の赤ちゃんがシンシア、生後3週間。 つい先日ここに来たばかりなの。 ミーシャ、貴方と一緒ね。」
「マーナにシンシアよ。 よろしくね、ミーシャ。」
「よろしくお願いします。」
華奢だと思うほど細身の、黒髪をおさげにした黒い瞳の子の中では年若い(私よりは少し年上くらい)の女性マーナに挨拶をした私は、その腕に抱っこされている金髪の、本当に小さな赤ちゃんに目を奪われた。
「……本当に、小さい……ですね。」
マーナの抱っこする小さな小さな赤ちゃんにびっくりしていると、マーナはにっこりと笑った。
「抱っこしてみる?」
「え!?」
「ほら、静かに。」
急なことで大きな声を出してしまった私に、『しぃ~』とジェスチャーをしながら、そういったマーナは、院長先生の方を見た。
「いいですか? 先生。」
「もちろんよ。 これからミーシャはここで働くのだもの。 いつが初めて、とかはないわ。 ミーシャ、この子はまだ首がしっかりと発達していない赤ちゃんなの。 だからこうして右肘のところで首を、左の腕でお尻と足を優しく支えながら抱っこするのよ。」
院長先生の言葉に、頷いたシスター・サリアが、にこっと笑って私を見た。
「ミーシャ。 貴女は赤ちゃんを抱っこしたことはあるの?」
それには私は思い切り首を振る。
「い、いえ、今まで一度もありません! 見るのも初めてです!」
それにはあら? と、院長先生が首をかしげる。
「小さなころ、弟さんを抱っこさせてもらわなかったの?」
と言われたが、それは無理な話だ。
「弟とは双子ですので。」
「あぁ、それは抱っこ出来ないわね。 じゃあ、初めての抱っこね。 大丈夫、緊張しないで。」
あははと笑ったダリアが、私の背中をトントン、と優しく撫でると、扉の近くの洗面所を指さした。
「じゃあ、赤ちゃんを触る時の最初の約束。 赤ちゃんに触る前にはまずは手を洗うこと。 それから、壁にかけてある綺麗なエプロンを身につけること。 それと、この部屋では大きな声や音を立てず、大きな動きをしないこと。 さ、用意が出来たらここに座りなさい。」
「は、はい。」
勢いに負けるように頷いた私は、言われるがままに扉近くの洗面所で手を洗うと、壁にかけられたとても柔らかなエプロンを身に着け、用意された木の椅子に座った。
「さっ抱っこする時の手の形は、こう、こうよ。」
「こう、ですか?」
「そんなに肩に力を入れないで、もっとゆっくりでいいわ。 あぁ、そう、そんな感じね」
見よう見まねで両手を組むと、それでは駄目だわ、と、バビーを抱っこしているダリアが教えてくれるので、言われるがまま、されるがままに腕の位置を動かす。
「うん、こんなもんでしょ。 じゃあ、抱っこしてみましょう。 さぁ、シンシア。 新しいマザーが来ましたよ、」
そこにそっと、マーナがすやすやと眠る小さな小さな赤ちゃん『シンシア』をゆっくりと乗せてくれた。
ずしり。 感じる重みに声が出た。
「……重い……っ」
普段、重い物を持ったことがなかったため、人一人分の重さにびっくりする。
けれど、それに勝る感覚が湧いてくる。
「……柔らかい……温かい……。」
重さは確かにあるけれど、それよりも吃驚したのは、自分よりもうんと暖かでふにゃふにゃで柔らかな小さな体と、その体からあふれる甘い匂い。
「……可愛い……。」
腕の中ですやすやと眠る小さな赤ちゃんに私はつい、そう口にしてしまった。
「そうだろう、そうだろう。 眠っている赤ちゃんは、こんなに可愛いんだ。 ねぇ、バビー。」
ダリアが自分が抱っこしているバビーを見て、嬉しそうに笑い、それから私に言った。
「ミーシャも昔はこうして生まれて、母親に、父親に。 いろんな人に抱っこされて、名前を呼ばれて大きくなったんだ。 ほら、ミーシャも、名前を呼んであげな。 赤ちゃんの耳はね、もうしっかりと、周りの声を、言葉を聴いているんだよ。」
私の目の前でお手本の様にバビーを抱っこしながら、私にそう笑ってくれたダリアの言葉に、私はもう一度、自分の腕の中の赤ちゃんの顔を見た。
(名前を呼んだら、聞こえているの?)
こんな小さい赤ちゃんの、こんな小さい耳が、私と同じく音を聞いているなんて考えられない。
けれど、私は努めて穏やかに、上での中の赤ちゃんの名前と呼んでみた。
「……シ、シンシア……?」
その名を呼べば、本当に聞こえたのだろうか。
閉じていた瞼がぽかっと開き、キラキラと澄んだ、大きな水色の瞳が現れた。
(綺麗……可愛い……。)
大きな声を出さないように注意しながらその様子をじっと見ていると、シンシアは一つ、ふわぁっと大きく欠伸をし、もう一度私の方をじっと見て。
にっこり。
シンシアが笑ってくれたのだ。
「……笑……った……。」
あまりの儚く感じる、花のような微笑みに、私は胸を鷲掴みにされた気持ちになった。
(……可愛い、本当に、可愛い……。)
ぎゅうっとなる気持ちに私が何とも言い難い気持ちを抱えていると、そっと、私の肩に優しく手が載せられた。
「ミーシャの腕の中が気持ちよかったのよね。 良かったわねシンシア。 ミーシャも、良かったわね。」
顔を上げた私に、院長先生も、3人の女性も、にっこりと私に微笑んでくれていた。
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