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37 最後の戦いへ※

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 明日はいよいよ最後の決戦だ。

 万全の体勢で挑みたい気持ちはあったけど、どうしても不安が拭えない。寝返りを繰り返していると、セルジュが起き上がり俺の額に優しい口づけを落とした。

「寝られませんか?」
「ん……」

 セルジュは俺の副官扱いだから、俺の警護も兼ねてずっと俺の天幕で寝泊まりさせている。セルジュが常に俺の隣にいてくれたから、俺は今日まで壊れずに生きてこれたんだろうと思った。

 手を伸ばし、セルジュの無精髭を撫でる。愛おしさで胸が苦しくなった。

「……ごめん、セルジュ。疲れてるだろ?」
「いえ。私も変に目が冴えてしまっていて」
「そっか……」

 多分、明日は大勢の人が死ぬ。その中に自分がいないとどうして言えるだろう。俺はセルジュを全力で守る気でいたけど、セルジュはセルジュで俺を守ろうとするから困ったものだった。

「……する?」
「いいのですか? お体に響きませんか?」

 セルジュもしたかったみたいだ。俺は小さく笑うと、「ゆっくりシようよ」とセルジュの雄に手を伸ばした。セルジュが気持ちよさそうな吐息を漏らす。

「ファビアン様、愛してます」
「俺もセルジュを愛してるよ」

 穏やかな口づけを交わしながら互いの服を脱がせ合い、もう何度重ねたか分からない身体を重ねていった。

 セルジュの雄が完全に勃ち上がると、セルジュは俺の後孔を濡らす為に布団の中に潜っていく。ぐちょぐちょと指と舌で解されて、セルジュ専用の穴となったそこは物欲しげにクパクパと息をし始めた。

「セルジュ、挿れてよ」
「はい。――いきますよ」
「うん。……ぅんんっ」

 ズブズブと俺の中に沈んでいくセルジュの雄は今日も熱くて、途端に俺の全身に痺れにも似た快感が走る。

「セルジュ、ん、あ」
「ファビアン様、可愛いです……っ」
「いつまで経っても可愛いかよ……っ! あんっ」

 ぎりぎりまで出ては入っていく長い抽送を繰り返されている内に、俺の雄は勝手にとろとろと白濁した液体を垂らしていった。

 これが最後にならないように、明日は頑張らなくちゃ。

「ぎゅっとして、セルジュ」
「ファビアン様、ファビアン様……っ」

 俺たちはぎゅうう、と抱き締め合うと、やがて俺が蕩け尽くされてセルジュがようやく俺の中に熱を吐き出すまで、離れることはなかったのだった。



 翌日、最後の戦いが始まった。

 ラザノが引き連れてきた暗部の選りすぐりは選りすぐられただけあって、非常に優秀だった。

 これまで俺たちが突破できなかった神殿の高い壁をスルスルと登っていくと、しばらくして中から門が開けられる。

 門の外で待ち構えていた俺たちは神殿の中になだれ込むと、切りかかってくる神兵たちと応戦を始めた。

 さすがは神殿なだけあって、これまでは殆どなかった魔法攻撃が時折飛んでくる。

 だけど、四英傑のひとりで厄災を倒すまでの間に魔法攻撃に慣れていた俺は、魔法攻撃を繰り出す神兵をさっさと倒していった。

「ファビアン様! おひとりで突っ込まないで下さい!」

 俺を追って、乱戦となっている神殿の通路をセルジュが駆けてくる。

「ファビアン様のお側は絶対に離れませんので!」
「俺の背中は頼んだぞ!」
「はい!」

 俺は双剣の英傑で、セルジュは騎士団長だ。二人合わせれば、とんでもなく強い。

 俺たちが剣を振るう度に俺たちの周りから敵兵が消え、気がつけば神殿の最奥に続くと思われる通路に出ていた。

 通路を走り抜け、最奥にある豪奢な扉の前に到着する。

 内側から鍵が掛けられていたので、力任せに扉を切りまくった。

「ひ、ひいいいっ!」

 扉を蹴飛ばし中に踏み入ると、そこにいたのは高そうな神官服を身に纏ったブヨブヨの中年男性。

「お前が教皇か?」
「ひいっ! お、お、お許しを……! 聖女様、お助け下さいませ!」
「オリヴィアを閉じ込めて苦しめてた奴が何言ってんだよ」

 思わず吐き捨てると、教皇らしき男が目を見開いて俺を見つめた。

「聖女様のお名前を呼べるとは……! その銀髪、その腕の痣! まさか剣聖様ですか!」
「そうだよ、文句あるか」
「剣聖様! どうぞ命ばかりはお助けを!」

 教皇は涙と鼻水を撒き散らしながら、俺の足元に平伏す。うわ、こりゃひでえ。

「……いかが致しますか?」

 びいびい泣いている教皇に一瞬で戦意喪失してしまった俺に、同じく呆れ顔のセルジュが尋ねてきた。俺は頭をガリガリ掻きながら、答える。

「うーん。とりあえず聞くこともあるだろうし、拘束しようか」

 セルジュがこくりと頷いた。

「畏まりまし――……ゴフッ」

 明らかにおかしな空気音がして、俺はセルジュを見つめる。

「セルジュ?」
「ファ、ビア……」

 目を見開いたセルジュが、次の瞬間カハッと口から血を吐いた。いつも熱が籠もった茶色い瞳には、困惑が浮かんでいる。は、は、と苦しそうに息をするセルジュ。

「――セルジュ!」
「う、うわああっ!」

 教皇が四つん這いで逃げていくのを尻目に、俺はセルジュの元に駆け寄る。カラン、とセルジュの右手から剣が床に落ちていった。

「セルジュ! どうしたんだよ!」

 ふらついているセルジュを抱きとめると、セルジュの頬に触れる。昨日口づけたばかりのセルジュの口から、またゴフッと赤い血が飛び出してきた。何だよこれ、何だよこれ!

 セルジュの背中に触れると、ぬめりを感じる。……え。

 と、俺の背後でヒイヒイ言っていた教皇が突然「ぎゃんっ」と声を上げた。一瞬振り返ると、教皇の身体が床に倒れて……首が転がっていっている。え、え。

「ファ、ビアン、様……」
「セルジュ! セルジュ!」

 俺は混乱してしまい、涙が勝手に溢れ出してきた。訳が分からない。何が起きたっていうんだよ!

 すると、扉の向こうから聞き覚えのある声が響いてくる。

「――おや、大変申し訳ない。教皇を狙ったつもりが、暗くて間違えて騎士団長様を狙ってしまいましたか」
「は……?」

 セルジュの肩越しに見えたのは、ラザノのニヤニヤした笑顔だった。
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