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34 未来を夢みる※

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 前線へやってきて、八ヶ月が経った。

 ようやくヒロイム王国全土から集められた兵が砦に集結した為、いよいよ明日は砦を出、聖国マイズへと進軍していくことになる。

 実は少し前まで、軍の総司令官であるロイクが前線に来て号令をかけるのではという噂もあった。

 俺はロイクに会いたくなくて、あいつが来ませんようにと毎日祈り続けた。アルバンを殺すように命じたかもしれないロイクの顔を見た瞬間、殴りかかってしまう自信しかなかったからだ。そしてそれは、自殺行為に等しい。

 俺とロイクの間にあった事実を知るのは、俺たち以外にはセルジュのみ。周りは皆、ご立派な勇者で王太子のロイクの味方をするに決まっている。

 俺がロイクに逆らってもセルジュは当然俺の味方をするだろうから、俺とセルジュが引き離されている間にセルジュに手を下されてしまう危険は避けなければならなかった。

 幸い、俺の祈りが通じたのか、ロイクは前線まで来ることはなかった。どうやらオリヴィアの体調がよくないらしい。

 オリヴィアは、妊娠し安定期に入ったにも関わらず、悪阻が酷くて寝込んでいるんだとか。彼女の元を離れるのは忍びないと、ロイクは俺に全軍出撃の号令をかけるように伝書で依頼してきやがった。

「本当あいつ、俺を都合よく使うよな」
「会わずに済んでよかったと思いましょう」

 苦笑するセルジュの渋い顔は、俺の腕の中にある。俺はセルジュの顔を見て、汗だくの頬を緩ませた。そうだ、今はあいつのことは忘れたい。眼の前にいるのはセルジュなんだから。

 俺は今、胡座を掻いて座っているセルジュに向き合って腰を上下に動かしている真っ最中だった。

 敵国に入ったら、次はいつゆっくりと休めるか分かったもんじゃない。絶対今夜は抱かれるんだと主張する俺の我儘に応えて、セルジュは晩飯後すぐから俺を抱いてくれていた。

「まあなー。セルジュを見て『もしやこいつ』とか思われるのも嫌だもんな……んっ」

 と、俺の胸に腕を回したセルジュが、俺の胸の突起をちゅぷりと口に含む。

 しばらく吸った後、舌先で転がしながら、セルジュは俺を上目遣いの熱が込められた目で見た。セルジュが俺を見る目は、いつだって火傷しそうなくらいに熱い。

「……ファビアン様を前にして、何も想っていない顔など今更できません。ファビアン様に執着しているあの方なら、私をひと目見て私の想いを見抜く可能性は高いですしね」
「セルジュ……」

 セルジュの両腕が俺の膝裏に通されたかと思うと、両手で俺のケツを鷲掴みにして、いきなり持ち上げた。宙吊り状態になった俺を、膝立ちしたセルジュが下からガンガン突き始める。

 あまりの快感に、俺はしがみつくだけで精一杯だった。

「んはっ! あっ、やば、ひんっ、セルジュ、セルジュ……!」
「私はっ、ファビアン様のお側をっ、何があろうと離れませんっ!」

 ハッハッと荒い息は繰り返しているものの、俺を持つ腕は震えもしない。さすがは騎士団長だ。

「あっ、激し、んんっ、――はあっ!」
「ファビアン様、愛しております……!」

 ぐちょぐちょと卑猥な音が天幕内に鳴り響く中、俺はセルジュの唇に自分のそれを重ねた。すぐにセルジュの口が開いて、俺から伸ばされた舌を食む。

「んふ……っんん……っ」

 気持ちよくて脳みそが蕩けていって、俺は思ったままの言葉をうわ言のように呟いていった。

「セルジュ、好き、俺も好き、愛してる……っ」

 すると、セルジュがハッと息を呑む。グズ、と鼻を鳴らすと、これまでよりも早く俺を突き始めた。

「ああ、このセルジュ、もういつ死んでも悔いはございません……っ」
「死ぬなってば」
「はは……そうでしたね」

 セルジュの溢れ出した涙を唇で掬うと、塩っぱい。

 愛されてるなあ。多幸感が俺の中に満ちていった。

 勿論、アルバンを二度も失ったすぐには、俺の心にセルジュを愛すだけの余裕は残されていなかった。だけどセルジュはあの日の誓いの通り、少しずつ俺の心の空虚を献身的な愛で埋めていってくれたのだ。

 アルバンを愛していた俺を丸ごとそのまま愛してくれたセルジュを、いつしか俺は大切な恋人として愛するようになっていた。

 セルジュに揺さぶられながら、俺は二人の未来を語る。

「なあ、この戦いが終わったらさ、王都のアルバンの墓参りに行きたい」
「お供します」

 セルジュの即答に、俺は喜びの笑い声と共に嬌声を漏らした。

「ん……っ、そうしたらさ、騎士団の特別顧問は辞職するんだ」
「では私も辞職します」

 しちゃうんだ。

「そうしたら、今度こそ故郷に戻って、両親と昔の仲間の墓を立てるんだ」
「勿論お供します。まさか置いていこうなんて考えてないですよね?」
「へへ……嬉しいな。……あっ、あっ、あっ!」

 その頃には、ロイクにも可愛い子供が生まれているだろう。だから今度こそ、きっと俺への執着は終わりを迎える筈だ。

 下からの熱杭の突き上げに、俺はどんどん高みへと登っていく。

「俺、自由になってセルジュと笑顔で暮らすんだ……っ」
「ファビアン様、お供します……!」

 セルジュは俺の龍の痣が巻き付く二の腕を力強く掴むと、俺がイクと同時に俺の中に熱を放ったのだった。

 ――そして翌日、俺たちは聖国マイズへと進軍した。
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