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22話 不可解な行動※
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玄関での性交は、あの夜を思い出す。
エーヴァを泣かせてしまった心痛が、ラーシュに蘇った。
しかしそれでも、アンネの尻に激しく打ち付ける自身の腰の動きを、止めることが出来ない。
「ねえ、……そろそろ、いいでしょう? あ、あぁあん……うなじをぉ、噛んでよ~」
喘ぎながらアンネが強請るが、ラーシュはそれを拒む。
「親の許可が無ければ噛めない」
アンネは19歳で、未成年だった。
未成年と正式な番の契りを交わすには、親の承諾が必要だ。
噛みたくない本当の理由を隠して、ラーシュはそれを盾にしていた。
「あんなの、親じゃないもん! あそこには戻りたくない、もうここが私の家なんだから!」
暴れようとするアンネを馬乗りになって押さえつけ、ラーシュは両手でアンネの胸をまさぐる。
そして陥没した乳首を見つけると、そこに中指を埋め込み、ぐりぐりとほじった。
「あ゛、あ~、あ、は……んふ、イイ!……イイよ、ラーシュ! もっと、そこ、ほじって! あ、あ゛~ああ゛あ゛!」
怒っていたことを忘れ、アンネは刹那の享楽に溺れる。
アンネの喘ぎは、エーヴァとずいぶん異なった。
騒がしいアンネと違い、必死に声を噛み殺そうとしていたエーヴァ。
そんなエーヴァのいいところを不意に突いて刺激して、甲高い声を上げさせるのがラーシュは好きだった。
声を上げた後、エーヴァは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにするから、興奮してたまらなかった。
もっとラーシュのせいで痴態を晒して欲しかった。
縁なし眼鏡を外したエーヴァの可愛い顔を、知っているのはラーシュだけだと思っていたのに。
(あのライオン獣人は、エーヴァの素顔を見たのだろうか。声をひそめるエーヴァから、声を引き出そうと手練手管を使うのだろうか)
自分以外の男に抱かれるエーヴァを想像すると、ラーシュは憤怒でどうにかなりそうだった。
しかしそんなラーシュは今、愛するエーヴァ以外の女を犯し、快楽に耽って肉欲を満たしている。
心と体が乖離しすぎて、脳がおかしくなる感覚に、ずっとラーシュは襲われていた。
(こんなことはしたくない――この雌を早く孕ませろ――)
ラーシュは体を起こして挿入を浅くし、アンネの腰骨を掴んで動きを速めた。
こうすることで、アンネの感じる場所が刺激され、膣の締まりが良くなることをラーシュは知っている。
「ひ、ぎぃ! あ、イク、もうイクから~、そ゛れ、もう! ……ラー、シュ! や゛、めぇ゛……っ」
アンネは達し、それでもラーシュに穿ち続けられ、ビクビクと痙攣しながら失神してしまった。
ぎゅうぎゅうに締め付けられたラーシュは発奮し、アンネの尻肉を波打たせ、力強く腰を叩きつけ始める。
(エーヴァ、エーヴァ、エーヴァ!)
昂ぶりが頂点に達したラーシュは、すでに意識がないアンネの膣中に精液をぶちまけた。
◇◆◇
「ディミトリスさま、調査結果が上がってきました」
家令が、エーヴァの隙をついて、ディミトリスに茶封筒を渡してきた。
何の、と言わないのが、この家令の出来るところだ。
ディミトリスはそれを受け取り、執務室へ向かった。
自室だとエーヴァが訪ねてくる可能性がある。
この封筒の中身が、元恋人ラーシュを密かに調べさせたものだと、知られたくなかった。
執務室に籠り、机の上に茶封筒を置いて、しばらく腕組みをしてそれを睨みつけていたディミトリスだったが、意を決したように手に取り封を開ける。
『該当人物について、以下の通り報告します』
その言葉で始められた調査書は、ラーシュの名前・年齢・住所・職業など、基本的な項目のほか、職場での評価や隣人の話まで、多岐に渡って綴られていた。
ディミトリスはそれを順に目で追い、住所や職業のところでいくらか留まり、職場での評価で完全に止まった。
『運命の番に出会ってから、仕事を休みがちになる。出勤しても覇気がなく、日雇いのような単純労働にしか従事せず、しかも早退が多い。それまではリーダー職についていたが今は外され、上長たちからは心配の声があがっている。給与の額が、以前の半分になっているとの噂もあり』
「典型的な、運命の番に人生を狂わされたパターンだな。どこかで踏みとどまらないと、揃って地獄へ落ちてしまうぞ」
ディミトリスは続けて隣人の話を読む。
『朝から晩まで四六時中、喘ぎ声が聞こえるようになった』
『以前はトナカイ獣人が住んでいたが、最近は見かけない』
『オオカミ獣人は、体調が良くないのか、尻尾の毛が抜けて所々ハゲている。眼窩が落ちくぼみ、眼差しがギラついているので、目を合わせるのが怖い』
顎髭を撫で、ディミトリスは視線を調査書から宙に向ける。
「どういうことだ? ウサギ獣人を朝から晩まで抱く元気はあるのに、本人の体調は良くないだと?」
しばらく考えていたが、結局ディミトリスは納得のいく答えを見つけられなかった。
そして、もうしばらく調査を続けるようにと、指示を出すことにしたのだった。
◇◆◇
「姉ちゃん、いい仕事があるって、何だよ?」
アンネは、1つ年下の弟ビリーを電話で呼びつけた。
たくさんいる弟妹の中で、アンネと父親が同じなのはウサギ獣人のビリーだけだ。
このアパートで運命の番と暮らしていることを、アンネは信用するビリーにだけ教えていた。
「あんたの仕事がない日だけでいいわ。ラーシュがおかしな行動をしていないか、見張って欲しいの」
「その人、姉ちゃんの番だろう? おかしな行動って、例えばどんなの?」
ラーシュは最初から言葉数が少なかった。
アンネが話しかけても黙ったままで、ボーっと虚ろな目をして、呆けていることが多い。
セックスをしていないときは、まるでこの世にいないみたいに存在感が希薄なのが、ラーシュの通常だった。
それがここのところ、思い悩んだような風情で仕事から帰ってきては、そのまま激しくアンネを犯すことがある。
やっと正式に番う気になったのかと思えば、ラーシュは絶対にうなじを噛もうとしない。
ラーシュはその理由を、アンネが未成年だからと言うが、それが嘘だとアンネも気がついている。
アンネは不審に思っていた。
(どうしてそこまで、正式な番になることを拒むの?)
このアパートの部屋に、もう元恋人エーヴァを思い出させるものは無い。
アンネが徹底的にそれらしきものを排除してきたからだ。
だが、どこかでラーシュはまだ、エーヴァのことを想っている節がある。
(運命の番の匂いには逆らえないくせに、諦めが悪いったらないわ)
ラーシュが心の拠り所にしているものが、何かあるのではないか。
アンネはそう睨んでいた。
「ラーシュが仕事帰りに、どこかに立ち寄ってるんじゃないかと思うの」
もしかしたら、エーヴァとの思い出の場所が、近くにあるのかもしれない。
せっかくアンネが消したエーヴァの残り香を、そこでラーシュは取り戻しているのかもしれない。
そう思うと腹が立った。
そこもアンネとの思い出に、塗り替えなくてはならない。
アンネは、ベッド脇のテーブルの引き出しから、クッキー缶を取り出す。
そこから紙幣を3枚ほど掴み、ビリーに見せた。
「ラーシュの行き先を突き止めたら、あと2枚あげるわ。この仕事、引き受けるでしょ?」
アンネが抜けたことで、実家の家計が苦しいことくらい分かっている。
ビリーがそのために、たくさんのアルバイトを掛け持ちしていることも知っている。
運が良ければ、数回でラーシュの尾行は終わるかもしれない。
割のいい仕事だとビリーも思ったのだろう。
「やるよ、姉ちゃん。ただし、今のアルバイトの合間だけだからな。毎日はさすがに無理だ」
「いいわ、それで」
アンネは、ビリーという罠を仕掛け、それにラーシュが引っかかるのを待つのだった。
エーヴァを泣かせてしまった心痛が、ラーシュに蘇った。
しかしそれでも、アンネの尻に激しく打ち付ける自身の腰の動きを、止めることが出来ない。
「ねえ、……そろそろ、いいでしょう? あ、あぁあん……うなじをぉ、噛んでよ~」
喘ぎながらアンネが強請るが、ラーシュはそれを拒む。
「親の許可が無ければ噛めない」
アンネは19歳で、未成年だった。
未成年と正式な番の契りを交わすには、親の承諾が必要だ。
噛みたくない本当の理由を隠して、ラーシュはそれを盾にしていた。
「あんなの、親じゃないもん! あそこには戻りたくない、もうここが私の家なんだから!」
暴れようとするアンネを馬乗りになって押さえつけ、ラーシュは両手でアンネの胸をまさぐる。
そして陥没した乳首を見つけると、そこに中指を埋め込み、ぐりぐりとほじった。
「あ゛、あ~、あ、は……んふ、イイ!……イイよ、ラーシュ! もっと、そこ、ほじって! あ、あ゛~ああ゛あ゛!」
怒っていたことを忘れ、アンネは刹那の享楽に溺れる。
アンネの喘ぎは、エーヴァとずいぶん異なった。
騒がしいアンネと違い、必死に声を噛み殺そうとしていたエーヴァ。
そんなエーヴァのいいところを不意に突いて刺激して、甲高い声を上げさせるのがラーシュは好きだった。
声を上げた後、エーヴァは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにするから、興奮してたまらなかった。
もっとラーシュのせいで痴態を晒して欲しかった。
縁なし眼鏡を外したエーヴァの可愛い顔を、知っているのはラーシュだけだと思っていたのに。
(あのライオン獣人は、エーヴァの素顔を見たのだろうか。声をひそめるエーヴァから、声を引き出そうと手練手管を使うのだろうか)
自分以外の男に抱かれるエーヴァを想像すると、ラーシュは憤怒でどうにかなりそうだった。
しかしそんなラーシュは今、愛するエーヴァ以外の女を犯し、快楽に耽って肉欲を満たしている。
心と体が乖離しすぎて、脳がおかしくなる感覚に、ずっとラーシュは襲われていた。
(こんなことはしたくない――この雌を早く孕ませろ――)
ラーシュは体を起こして挿入を浅くし、アンネの腰骨を掴んで動きを速めた。
こうすることで、アンネの感じる場所が刺激され、膣の締まりが良くなることをラーシュは知っている。
「ひ、ぎぃ! あ、イク、もうイクから~、そ゛れ、もう! ……ラー、シュ! や゛、めぇ゛……っ」
アンネは達し、それでもラーシュに穿ち続けられ、ビクビクと痙攣しながら失神してしまった。
ぎゅうぎゅうに締め付けられたラーシュは発奮し、アンネの尻肉を波打たせ、力強く腰を叩きつけ始める。
(エーヴァ、エーヴァ、エーヴァ!)
昂ぶりが頂点に達したラーシュは、すでに意識がないアンネの膣中に精液をぶちまけた。
◇◆◇
「ディミトリスさま、調査結果が上がってきました」
家令が、エーヴァの隙をついて、ディミトリスに茶封筒を渡してきた。
何の、と言わないのが、この家令の出来るところだ。
ディミトリスはそれを受け取り、執務室へ向かった。
自室だとエーヴァが訪ねてくる可能性がある。
この封筒の中身が、元恋人ラーシュを密かに調べさせたものだと、知られたくなかった。
執務室に籠り、机の上に茶封筒を置いて、しばらく腕組みをしてそれを睨みつけていたディミトリスだったが、意を決したように手に取り封を開ける。
『該当人物について、以下の通り報告します』
その言葉で始められた調査書は、ラーシュの名前・年齢・住所・職業など、基本的な項目のほか、職場での評価や隣人の話まで、多岐に渡って綴られていた。
ディミトリスはそれを順に目で追い、住所や職業のところでいくらか留まり、職場での評価で完全に止まった。
『運命の番に出会ってから、仕事を休みがちになる。出勤しても覇気がなく、日雇いのような単純労働にしか従事せず、しかも早退が多い。それまではリーダー職についていたが今は外され、上長たちからは心配の声があがっている。給与の額が、以前の半分になっているとの噂もあり』
「典型的な、運命の番に人生を狂わされたパターンだな。どこかで踏みとどまらないと、揃って地獄へ落ちてしまうぞ」
ディミトリスは続けて隣人の話を読む。
『朝から晩まで四六時中、喘ぎ声が聞こえるようになった』
『以前はトナカイ獣人が住んでいたが、最近は見かけない』
『オオカミ獣人は、体調が良くないのか、尻尾の毛が抜けて所々ハゲている。眼窩が落ちくぼみ、眼差しがギラついているので、目を合わせるのが怖い』
顎髭を撫で、ディミトリスは視線を調査書から宙に向ける。
「どういうことだ? ウサギ獣人を朝から晩まで抱く元気はあるのに、本人の体調は良くないだと?」
しばらく考えていたが、結局ディミトリスは納得のいく答えを見つけられなかった。
そして、もうしばらく調査を続けるようにと、指示を出すことにしたのだった。
◇◆◇
「姉ちゃん、いい仕事があるって、何だよ?」
アンネは、1つ年下の弟ビリーを電話で呼びつけた。
たくさんいる弟妹の中で、アンネと父親が同じなのはウサギ獣人のビリーだけだ。
このアパートで運命の番と暮らしていることを、アンネは信用するビリーにだけ教えていた。
「あんたの仕事がない日だけでいいわ。ラーシュがおかしな行動をしていないか、見張って欲しいの」
「その人、姉ちゃんの番だろう? おかしな行動って、例えばどんなの?」
ラーシュは最初から言葉数が少なかった。
アンネが話しかけても黙ったままで、ボーっと虚ろな目をして、呆けていることが多い。
セックスをしていないときは、まるでこの世にいないみたいに存在感が希薄なのが、ラーシュの通常だった。
それがここのところ、思い悩んだような風情で仕事から帰ってきては、そのまま激しくアンネを犯すことがある。
やっと正式に番う気になったのかと思えば、ラーシュは絶対にうなじを噛もうとしない。
ラーシュはその理由を、アンネが未成年だからと言うが、それが嘘だとアンネも気がついている。
アンネは不審に思っていた。
(どうしてそこまで、正式な番になることを拒むの?)
このアパートの部屋に、もう元恋人エーヴァを思い出させるものは無い。
アンネが徹底的にそれらしきものを排除してきたからだ。
だが、どこかでラーシュはまだ、エーヴァのことを想っている節がある。
(運命の番の匂いには逆らえないくせに、諦めが悪いったらないわ)
ラーシュが心の拠り所にしているものが、何かあるのではないか。
アンネはそう睨んでいた。
「ラーシュが仕事帰りに、どこかに立ち寄ってるんじゃないかと思うの」
もしかしたら、エーヴァとの思い出の場所が、近くにあるのかもしれない。
せっかくアンネが消したエーヴァの残り香を、そこでラーシュは取り戻しているのかもしれない。
そう思うと腹が立った。
そこもアンネとの思い出に、塗り替えなくてはならない。
アンネは、ベッド脇のテーブルの引き出しから、クッキー缶を取り出す。
そこから紙幣を3枚ほど掴み、ビリーに見せた。
「ラーシュの行き先を突き止めたら、あと2枚あげるわ。この仕事、引き受けるでしょ?」
アンネが抜けたことで、実家の家計が苦しいことくらい分かっている。
ビリーがそのために、たくさんのアルバイトを掛け持ちしていることも知っている。
運が良ければ、数回でラーシュの尾行は終わるかもしれない。
割のいい仕事だとビリーも思ったのだろう。
「やるよ、姉ちゃん。ただし、今のアルバイトの合間だけだからな。毎日はさすがに無理だ」
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