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番外編
俺の有能な護衛騎士がおはようからおやすみまで溺愛してくる③【了】
しおりを挟む給餌行動、ってのがあるよな。動物の本能で。
レフの食事の世話ってまさにこんな感じがする。
スプーンでひとさじずつ、俺の口に運んで飲み込むまでジッと見て待ってる。はじめはそれがちょっと気まずかったけど、レフの視線は急かしもしないし、少し楽しそうに見えるくらいだったからすぐ慣れた。
だから今日も、昼ご飯のリゾットをふうふう冷まして口に運んでもらっている。
「トマト味が良いと仰いましたが、何処でそんなものをお召し上がりに?」
「元の俺。……こっちのリゾットってチーズとかミルクとか成分が多くて全体的にカルボナーラ?風だよな。ちょっと胃に重いというか」
「異世界の食事でしたか」
「そう。で、コメがあるなら炊きたてご飯も食べたい」
「……閣下の仰る通り炊いてはみましたが、あまりご想像の通りにはならず」
「確かにちょっとコメの種類が違うからな……うーん」
少なめに作って貰ったリゾットを今日は完食して昼食を終えた。
俺わりと頑張ったのでは!?野菜中心とはいえ一皿食べきったのは久しぶりだ。
『お前のソレは、断食だよルシェール……』
数日前にドラゴン輸送で大公領にやってきたイヴォンが、俺の顎を掴んで覗き込みながらそう言った。キラッキラなお兄ちゃんが吐息が触れそうなほど近くで凝視してくるからびっくりだ。双子の距離ってこういうもん?オジサン若い子の文化は判んないな。
イヴォン曰く、精霊の子というのは日々穢れを溜めながらそれをゆっくり浄化しているらしい。しかし許容量をオーバーして日々の浄化では間に合わなかった分がどうしても出る。それを一気に浄化するため、瞑想したり断食したり穢れの多い食べ物から遠ざかったりするんだってさ。
穢れ。まあ、仏教で言ったら殺生とかかな。
俺がいま胃に響くっていうんで遠ざけている食べ物は、ほとんど穢れ成分の多い物らしい。だから断食中とか言われたんだね。野菜とドラゴン製のエナジードリンクは範囲外らしいけど。魔獣討伐の後、殺生はしまくったし血みどろになったから相当穢れを溜めたんだろうな俺。思えばあの頃からレフの作る物しか食べられなくなったんだった。そこからじわじわと量が減って、ベジタリアンみたいな食事に。
理由が判ったからまだいいけれど、相変わらず肉は食べられない。レフはそろそろ料理のレパートリーがなくなったりしないだろうか。毎日同じ食べ物でもいいよ。転生前オジサンはカレーを作ったら三日は食べてたし、おでんをひと鍋作ったら一週間食べてたからね。
「……閣下?」
「あ、うん。……レフは食事まだ?」
「はい。今から一度席を外します」
「持ってきてここで食べよう」
「……」
「俺がアーンしてやろうねー」
にこにこと満面の笑みでそう言うと、レフは一瞬言葉に詰まり、『判りました』と小さくため息をついてから部屋を出て行った。ほどなくしてシチューみたいなものを入れた器とパンを乗せたトレーを持ってくる。
俺はいそいそとレフの腰掛けたソファに寄っていって、隣に座った。スプーンを持って器の中をかき回すと、シチューが結構水っぽいのが判る。零さないように運ぶのって結構難しいな。
と、考えていたらレフが俺を膝の上に抱え上げてしまった。膝の上で背を支えられながらの横座り。ちょっと顔を上げるだけでレフのイケメンな顔が目の前だ。スプーンとシチューの器を手に取って、慎重にレフの口元に運ぶ。
「くち、あけて」
「……」
レフの大きな口がくわっと開くと、真っ白い歯が覗いてドキリとした。俺のスプーンを口に入れ、乗っていたシチューだけを口内に残し咀嚼して、喉がごくりと動く。
もうひと匙、もう一回、とせっせとシチューを運んだ。その度にレフの口に視線が釘付けになる。この口にあんな激しいキスをされたんだ、とか。俺の身体を余すところなく舐めたり吸ったり、弄り回して泣かす舌はこれなんだ、とか。綺麗な歯並びの白い歯は部分的に少し尖っていて、牙の片鱗があるのかなとか。
考えているうちにぼうっとしてしまって、レフの手が俺の手首を掴んだ。
「閣下、零れます」
「あっごめん」
シチューの具はほとんど掬ってしまったから、レフは斜めになって零れかけた器をぐいっとあおって全て飲み干してしまった。早い。食事は良く噛んで食べようよ。シチューだけどさ。
トレーに残っていたパンも大きな口にポイッとして三口くらいで食べてしまったので、もう食事が終わってしまった。早いよ。遊ぶ間がないじゃないか。
「閣下?」
「うーん、ちょっとしか遊べなかった……」
残念がる俺の手を取って、レフはシチューの飛んだ俺の指にぺろりと舌を這わせてきた。指の間を濡れた舌がぬるぬると滑っていくと、なんか背筋をゾワッとしたものが走る。俺は慌てて手を引いて、俺の食事についてきた果物の器を引き寄せる。
桃だかプラムだか謎な果物をひとつ取って、ぎゅ、とレフの口に押しつけてやった。これでもくらえ。
「……」
一瞬動きを止めたレフが、次の瞬間口を開いて僅かに牙を覗かせながらガブリと果物に噛み付いた。柔らかそうな薄い皮に白い牙が刺さって、ぶつりと裂き、瑞々しい果肉にズブズブ埋まっていく。
あ、と思った時にはレフの口は離れ、俺の手に半分囓られた果物だけが残る。グイッと強く腰を引き寄せられて甘い匂いがふわりと近づいた。
「ん、ぅ、ん、ふ、ッ……ぅ、んっ」
甘酸っぱい果実の香りと共に口付けられて、まだ少し冷たい果肉が俺の口の中に押し込まれる。あぐ、と噛むと果汁が滲み出して、今度はそれをレフの舌が混ぜ、唾液と共に吸われた。
なにこれ、なにこれ。こんなえっちなキスで給餌はありなの?
口の端からぼたぼた果汁が零れているし服にも滴ってしまうし、あー果汁は洗濯で落ちにくいのでー!
「ありがとうございます。普段の食事より刺激的でした」
「はぁ……はぁ……」
待て待て、なんか思ってたんと違う。抗議したいけど呼吸が整わないし身体はすっかり骨抜きだ。
「ベッドにお運びしてもよろしいですか」
「うん……」
呼吸を整えるくらいしか出来ない俺がレフの膝でぐったりしていると、そのままベッドに運ばれた。濡れた布でベタベタだった果汁を拭いてもらって、ついでのように着替え……るのかと思ったら服を脱がされただけだった。
「……ルシェール様」
「ああ、うん。……いいよ」
遅い昼食を食べたところだったけど、またここからベッドの住民だ。今日一度も部屋から出てないけど。
爛れてるなあ……と思いつつ、今は新婚さんというか、蜜月なんだからいっか、とも思う。
「――レフ、たくさん触って」
※
パチュ、バチュ、と濡れた音が響いている。激しい突き上げに肌のぶつかる音も相まって、ヤバめのAV動画みたいなかんじだった。
「っ、んぁ、ぁっ、あっ、レフ、レフッ……ひ、ぁっ」
甘ったるい嬌声を上げているのはルシェール……もとい現代オジサンである俺だ。いつもは俺の身体を労って後ろからしてくれたり、あんまりアクロバティックにならないようしてくれるのに。
レフは、正常位で俺の足を大きく開かせたまま、ガンガンに突いてきていた。膝がもう胸についてしまいそう。折り畳まれるこの姿勢、知ってる。『エロ同人みたいに!』でおなじみの。男性向エロによく使われる種付けプレス……だよね。
ルシェールの身体が柔らかくてよかったぁ~。
そんなことで喜んでいる場合ではないんだけど。
「ッ、ぁ、ふ、ぁ、あっ、あうっ、あんっ、あぁっ!!」
大きな手に膝を掴まれ、ぐいぐい押されながら奥を穿たれる。こうしていると俺の穴にずっぷりとハマるレフの逸物が良く見えた。
見えるからこそ判る。レフのそのでっかいの、まだ根元まで入らないんだね~、と。
突き上げられるたび、ゴッ、ゴッ、と一番奥に当たるような感じがする。これ以上は入らないだろうと思うのに、レフは根気よくその行き止まりに亀頭を押しつけ、ぐりぐりと揺らす。
「ンッ、ぁ、……や、ぁ、だっ、そこ、もうっ……はいらないぃっ」
「入ります」
「うそ、……も、いっぱ、ぃ……っん、ぁ」
「入る。……受け入れてください」
じわぁっとした快感が尾てい骨から背中に向かって走って、ぶるっと身体が震える。宣言通りレフのモノは少しずつ、奥に埋まり始めた。
あ、あ、それ駄目なヤツ。結腸抜きって痛いんでしょう?泣いちゃうくらいヤバいんだよね?
「レフ、やぁ、やだぁっ、こわい……っ」
「ルシェ、こわくない」
「レフ、……ンンッ、ぁ、ふぁっ……んっ」
ちゅ、ちゅ、と唇を吸われる。レフが屈んだせいでぐぐっと奥まで亀頭がめり込んできて、苦しい悲鳴が漏れた。圧倒的に体格の良いレフに押さえ込まれると、潰されちゃうんじゃないかとちょっと思う。
「ルー、シェ」
「うん、……ん、……」
「俺を受け入れて、ルシェ」
「う、ぅ……ずるぃ、……レフ、そんなの……」
ダメって言えないヤツじゃないのそれ。
泣きそうになりながら、ぐすぐす鼻をならしつつ、俺はコクンと頷いてレフを見上げた。ふ、と笑って和らいだ青い瞳が、次の瞬間欲の色に染まる。くしゃっと俺の頭を撫でてくれた手が首の後ろに回ってきて、覆い被さる姿勢のまま口付けられた。
「ん、ぅ、――ッ!!」
くぷん、と結腸を抜かれて太い亀頭がそこに入ってくる。バチバチ目の前で火花が散るような快感が走り、声がもう出なかった。浅く結腸の入口で出入りするレフは、それ以上は進まず穴に馴染ませるだけだ。こっちは泣き過ぎてべしょべしょだっていうのに。
しかもこんなに頑張ってもまだ三分の一くらいレフのモノが根元残ってるんですよねぇ!どういうことなの!
ゆさゆさと結腸口で揺らされて、そのまま白濁を飲まされた。胎の内側に暴れ狂う強い熱を感じる。ああもしかして濃いアレかなーとか頭の端では思っているけど、もう口にも出せないんだってば。
はぁ、はぁ、と息を乱しながらぼうっと天蓋を眺めていたら、助け起こされてまた膝に乗せられた。
「無理を強いました。申し訳ありません」
「ゆるさん」
「閣下……」
「許さんからさっきのもう一回」
「さっき……?」
「『俺』っていうの」
「そちらでしたか」
だってレフの!いつもの丁寧な言葉じゃなくて『俺』って!
キュンキュンし過ぎて穴がキツキツになったと思う。こういう言葉遣いのレフをたくさん知ってるのかと思うとNormal三騎士が羨ましすぎてハゲそう。
「それで、それで気軽に喋って」
「……無茶を仰る」
「じゃあお願いした時だけ敬語禁止」
「……」
「レフ、あとな。その、そろそろ抜いて欲しい」
黙ってしまったレフの膝の上で、ついモジモジと言い淀んでしまった。尻にレフの手が掛って、ズルズルッと上に持ち上げてくれる。太い性器は抜こうと思ってもなかなか外れなくて、膝立ちになった俺がレフの頭を抱き締めて腰を上げた。
ぬぷん、と一番太い亀頭が抜ける時には敏感な内壁が相当刺激された後で、『んぁっ』と声が漏れてしまった。しかもレフの頭を抱き締めながら仰け反ったりして、その――。
その刹那、いきなり締まっていたドアが勢いよく開いた。
「ルシェール!一日部屋から出てこないと聞いたが具合でも悪……!」
イヴォンだった。
威勢良く入ってきたはいいが俺は裸だしレフの上に乗っかってるし、何より部屋の中が濃厚な情事の匂いで満たされていた。
スーパー受様であるイヴォンが気付かないはずない。そんな受呼称ないって?今オジサンが作りました。
「……だから言っただろうが」
呆れた顔でドアの影から現れたテオドールが、硬直したイヴォンを抱き上げてさっさと連れて行ってしまう。
俺の骨抜きにされたとろっとろのイキ顔をお兄ちゃんにガン見されてしまった。社会的に死んだような気がする。
「今日一日は休みなんだろ? 明日またくるわ」
パタン、と扉が閉まってからようやく、「今のイヴォンの飛び込み方、竜騎士借りに来たテオドールそっくりじゃない?」と思い当たった。あの二人も付き合い長いみたいだから、似ちゃうんだろうね。阿吽の呼吸とかなのかな。
「兄ちゃん心配性だから」
「そうですね」
「レフ、言葉」
「……そうだな」
良い。それめちゃくちゃ良い。好き。
レフはもの凄く不本意そうに敬語をやめてくれて、でも許しが出ればすぐさま戻してしまいそうだった。まあ今はそれでいいかと思うことにした。
今のうちだけ護衛騎士じゃなくて、レフのターンなんだよ。
「レフ、なんか喋って」
「……。陛下に嫉妬するのを許してくれないか」
「どうして?心配することないのに」
「流石に血の繋がりより強いものはない。……俺では、敵わない」
あれ、レフでも不安に思う事あるんだ。普段顔に出さないからってないわけじゃないんだな。少し念入りにケアしないといけないところか。
「あるよ。血よりつよいもの」
「……?」
「俺の伴侶で、パートナーでしょう、レフは。それにドラゴンの体液の効果で勝手に俺を造り替えておいて」
「……ッ!!」
「俺が気付かないとでも? 本当に可愛いな、レフ。ヤった後に疲労感どころかツヤツヤに元気になってたらそれは判るよ。……竜の血の恩恵、プレバージョンって感じかな。ありがとう、レフ。古の盟約は血より濃いねきっと」
おいでー、と手を広げたらレフが思い詰めたような表情で押し倒してきた。
その頬を両手で包み込み、すりすりと撫でる。腰を浮かせ、わざと尻がレフの股間に当たるよう擦り付けた。
ギラリと光ったレフの瞳からは、融解するように理性が失せていく。俺が自分で煽ったとはいえ、ちょっとその時だけは血の気が引いた。
それから夜半過ぎまで抱き潰されて、野性的な魅力に溢れたレフも堪能してしまった。
俺の身体を少し丈夫にさせるとセックスも無限に出来て凄いね。いや、無限はちょっとなあ、だけど。穴がガバガバになったり腰が痛くて立ち上がれないよりはいいかな。なにしろレフの逸物はドラゴン級なので。
――結局レフからの『おやすみ』が聞けたのは、東の空が明るくなり始めた頃だった。
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第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
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