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番外編
俺の有能な護衛騎士がおはようからおやすみまで溺愛してくる①
しおりを挟む【ママ~。ママ~おなかすいたよ~】
「誰がママだ。……ん?もしかしてレフのこと?」
幼ドラゴンの声が聞こえるのはヴォリス大公領では俺とレフだけ。となるとママは二分の一の確率になるわけだが?
【ママはせいれいのこだよ~。赤い頭の子がそうだって】
赤い髪と言えば最近ドラゴンと仲良くなったレンに違いないけど。何てことを教えてるんだよ。
幼ドラゴンは『まま~♪』が気に入ったらしく連呼しながらバルコニーに頭を乗っけてくる。ベッドからずりずりと降りて窓を開けてやると、ふすーっとドラゴンの鼻息が入ってきた。何でかミントみたいな匂いがする。ケモノ臭くなくてよかった。
「薬草でも食べたのか」
【けんこうにいいから やさいもたべなさいって】
「ドラゴンに健康を語るやつは誰だ」
【赤いののよこに たまにいる すこしおおきいの】
「アダムだな。意外と面倒見がいいなあの騎士達は。……それはそれとして、おい、あの、舐め……る、な!!」
べろーっ、と大きな舌が俺の腹から胸までを唾液でべちょべちょにする。今度は脇に移動してフンフンと腕の下の匂いを嗅がれて、それから背中をまたべろーっと舐められる。髪まで幼ドラゴンの唾液でビシャビシャになった。
元から着崩れていた前合わせの夜着が、濡れて張り付いて酷い有様だ。ローションプレイのAV動画みたいなことになっている。
「閣下!」
「あー、レフー。お風呂、お風呂をわかして」
「はい、すぐに」
「あと用意できたら運びに来て」
「……勿論です」
くんくん鼻先を押しつけてくる幼ドラゴンには『べちょべちょにするのやめて』と言って軽く叱っておいた。変にハーブの匂いがするせいで薬に漬けられてる感じがある。唾液で汚いって気持ちがないのが幸いか。濡れて張り付いてる服を脱ぐべきかこのままでいるべきか悩んで、もう放っておいた。全部レフに任せて置けば良いだろう。
昨夜、レフと二人でベッドに入ったのは夜も更けてからだった。
今日一日を休暇とするため、前日に仕事を多めに頑張ったんだよね。
一応、週休二日もしくは一日と半分は確保することを執事のアーノルドと約束した。これは大公領にふれを出して領民全員に守らせ浸透させようとしている、労働基準だ。法律はまだないので制度から作らないと。
で、そんな命令を出した手前俺自身が休みを取らないわけにはいかず、今日がその休み一日目。
昨夜は……――ええと、少し激しめに身体を酷使されたので、俺は昼過ぎまでベッドでごろごろしていた。そこに遊ぼー、とドラゴンがやってきたところだ。
レフが風呂の準備をしてくれてるけど、……濡れてるからちょっと冷えてきたな。くしゃみ出そう。
【せいれいのこ 唇あおいよ】
「ちょっとさむくて」
【火ふくよ】
「ふかないで、ここではふかないで。俺丸焦げになるでしょ」
【火ー】
ひえっ、と首を竦めた俺の真横に、青白い炎の塊が生まれた。くるくると回りながら熱を発していて、周囲の温度が上がった気がする。その炎が床にふわりと近づくと、床の濡れた場所が乾いていくように見えた。
あれ、結構な熱じゃないかなそれ?
【せいれいのこ かわかすよー】
「いやいやいやいや熱いから、たぶん凄く熱いよそれ!!」
【だいじょーぶ いっしゅんだから】
「一瞬で人間は茹だっちゃうの!!熱を入れたタンパク質は元に戻らないの!目玉焼きは二度と生卵に戻らないのーーー!」
逃げようと身体を引いたところで、濡れた床が滑って床に倒れる。ふわっと通り過ぎた火の塊が、次の瞬間風船のようにパンッと割れた。仰向けになって見た視界に、大剣を構えたレフの姿がある。
「二度と出すな」
【せいれいのこが さむそうで】
「二度と、やるな」
【はあい】
念押しに二回同じ言葉をくり返して、レフは剣を置いた。そしてすぐさま俺を抱き上げて、奥の浴室へと向かう。足早に、というかむしろ走ってる。そんなに焦ったレフを見るのは滅多になくて、貴重だ。
「遅くなって申し訳ありません。身体が冷えてしまいましたね」
「これから風呂に入るから大丈夫」
「……何か掛ける物を渡しておくべきでした。いや、着替えが先だったか」
「レフ、そんなに悩まなくていいから」
「己の欲のために閣下に寒い思いをさせたのですから、戒めなくては」
「……おのれのよく?」
首を傾げる俺をそっと大理石の台の上にのせて、レフは温かい湯を俺の身体にかけた。少しぬるめの湯は、冷えた夜着越しに身体の上を滑っていく。太腿に絡みついていた裾がポタポタと湯を滴らせて、もう絞れるくらいびしょ濡れだ。
レフは俺の足元に跪いて、濡れるのも構わず腰に抱きついてきた。膝に柔らかな金髪が乗っかってきてくすぐったい。
「布が透けています」
「……えっ」
「閣下の豊かな胸筋も、その段差も、滑らかな腹筋も……へその窪みまで透けて、よく見えます」
「うっ……」
レフが視線だけで俺の身体を撫でていく。実際に触れられてるわけでもないのに、ヒク、と腹筋が震えてしまった。俺の膝の上でレフが目を細め、唇の端をつり上げた。
「閣下の乳首が勃っているのも良く見えます」
「た、……っそれは、寒いから……」
「薄い布を押し上げて震えているのが、堪らない」
「……レフッ!」
恥ずかしくなって相手の肩を押したら、逆にそれを上回る力で押し込まれてレフが抱きついてきた。布越しに臍に舌を入れられ、ジタバタと暴れる。濡れて張り付く布の上を舌が這い、腹筋の上に昇ってきた。そのままさっき指摘された乳首の尖りにぱくりと食い付かれて、ちゅうっと強く吸われる。
「んっ、……ぁ、ぁっ……ンッ……レフ、……あ、あっ」
触れてくるのも布越しで、左右の胸を持ち上げるように揉まれてきゅっともう片方の乳首まで摘ままれた。ビク、と震えると一気に羞恥が襲ってくる。レフがそんなところ触るまで、男の俺の胸は性感帯じゃなかったのに。
「レフ、……レフ!こ、コマンドを……」
「はい閣下」
「……コマンドで止められたい?それとも、このままコマンドで触れたい?」
折角プレイなんだから楽しみたい気持ちもある。だから『touch』コマンドで楽しもうかどうしようか。
本当ならレフの気持ちを読んで俺が判断しないといけないんだけど、レフからは……なんだか『どっちでもいい』みたいな空気しか感じないんだよな。俺がDom一年生だからこうなの?
「命令する閣下は気高くお美しいので、見惚れる恍惚に浸ることが出来ます」
「……う……ん?」
「ですが快楽に弱い閣下も大変可愛らしく、泣き顔など拝見してしまうと食べてしまいたくなるほどで」
「……え、っと……」
「どちらも同じようにお慕いし、全力で愛しておりますのでどちらを選ばれても問題ありません」
「……はい」
ほんとうにどっちでも良かったのか。
ところで最近レフがよく喋るので、戸惑う事が多い。語彙力の全てを使って俺のことを褒めたりえっちなことを言ったりするのでもう。ダメだ聞いていられない!!という事が多々あるんだよ。
「触るなら、ちゃんと触って。脱がしてから」
「はい」
「――レフ。いっぱい、口づけて」
‡
広い浴室は湯気のせいか汗ばむくらい温かい。
「ん、ぁ、……ん、くっ……はぁ、はぁっ……」
レフが俺の足を湯で温めて、マッサージしながらそこに口づけてくる。力加減も絶妙で、痛いと気持ち良いの間くらいを常に微調節されていた。強すぎてビクッと俺の身体が跳ねると、宥めるようなキスが落ちてくる。もちろん、足先にだ。
足の指も舐められて、脹脛にもレフの舌が這い、もう何度も掠れた悲鳴を上げた。だって、足責めに弱いのは知ってるくせに、執拗に舐めてくるからだ。
「レフ、レフ、もうだめっ……足、やだぁっ」
「揉んでいるだけですが」
「うそ、絶対ちがう、……っん、く、……ぁんっ」
裏側を這ってきたレフの大きな手が、太腿の一番大きな筋肉に触れてそこをきゅむっと揉んだ。鼻にかかった甘い声が漏れてしまって、カアッと顔に血が上る。だけどレフはやめてくれなくて、俺の弱いところをきゅむきゅむと一番いい強さで揉み上げてきた。
びくん、ひく、ひく、と身体が跳ねて俺は身悶えた。性交の時と同じような声が引っ切りなしに上がって、仰け反って快感を堪える。
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第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
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