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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。

五話

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 目覚めた時には、全く腰が立たなくなっていた。折角縄も鎖もないというのに、これでは逃げようにも身体がついていかない。

 上等で真っ白なシーツは新しいものに替えられていた。誰が替えに来たのか考えたくもなかったが、俺の身体もまた精液だの汗だのの痕跡は全く残っていない。洗ったのはルーファスか、使用人か。……まあどちらにせよ、もう過ぎた事だ。考えても仕方ない。

 うつ伏せになって寝ていた身体を起こすと、ビキリと痛む腰に呻いてベッドに逆戻りする。その拍子に腫れた乳首がシーツに擦れて、ジンジンと痛んだ。仕方なく身体を横に倒して周囲を見回すと、俺のだと言われたあの簡素な部屋の中だと判った。

 窓から明るい日差しと涼しい風が入り込んでくる。まだ朝方だろうか。
 騎士団に囚われて王都に着いたのが夕暮れ近く、さらにルーファスの屋敷に連れて来られて突然押し倒されたのは日が落ちて間もなくの頃だった。それから時間の感覚が薄くなるほど犯されて、気を失って……今は次の日の朝か。

 俺は腹の減り具合でも時間が計れる。最後に食ったのは昨日の昼飯だ。さんざん無茶されて体力を消耗すれば、腹も減るだろう。

「オイ!メシをよこせ、腹が減った!」

 大声を張り上げると腰に響くが、ドアを出て人を呼ぶことが出来ないのでこうするしかない。すぐにパタパタと部屋の外で足音がして、メイドが一人、ワゴンを押して入ってきた。

 ワゴンの上には、蓋のされたスープ鍋が置かれている。その横には白くて柔らかそうなパンが籠に山盛りになっていた。メイドが深めの皿にスープをよそると、肉と野菜のごろごろ入った豪華なスープだと判る。俺は気合いで身体を起こして、ベッドから脚を下ろした。

「どうかそのままで。今テーブルをお持ちします」
「あ?ベッドで食えって?」
「はい。ザザ様のお召し物は用意されておりませんので」

 ベッドに簡易テーブルがくっつけられ、その上にスープとパンが給仕される。腰の痛みで忘れていたが、確かに俺は全裸だった。股間のモノをぶらぶらさせながらメイドの前で椅子につくのは確かにナシだろう。少なくとも俺の中ではナシだ。メイドはずっと無表情なので気にしないのかも知れないが。

 それから俺はスープを3杯お代りして鍋を空にし、籠のパンも食べ尽くしてようやく一息ついた。こんな豪華で美味いメシを食ったのはいつぶりだろうか。臭みのない上等な肉がスパイスでじっくり煮込まれていて、その味の染みた根菜がまた最高だった。パンはいつもの硬くて水分も油分も少ない黒パンではなく、ふんわりと柔らかくて外側がサクサクとした白いパンだった。軽くていくらでも食べられてしまう。いつもならスープに浸してパンを柔らかくして食うが、そんな事をしなくてもパンだけ囓って充分過ぎるほど美味かった。

 膨れた腹を擦っていると食後の茶が置かれる。薬草のような不思議な匂いがしたが、出されたモノは毒でない限り平らげるのが礼儀と思い、一気飲みをする。
 
「食事は終わりましたか、ザザ」

 ノックと同時に扉が開き、ルーファスが部屋に入ってきた。貴族の礼儀としてはたぶんソレだめなやつだろう。まあ俺は貴族じゃねぇから全く気にしないが。

「約束通り、薬と下着を持ってきてみました。……あ、君は食器を下げて貰えるかい」

 メイドは静かに頭を下げて、ワゴンと共に退出していった。ルーファスはいい笑顔で俺の前に黒いレースの下着と軟膏のような塗り薬を差し出してくる。

 ……そう、繊細なつくりのレースの下着だ。

 あの、女が乳を押さえるための下着。しかも総レースだから貴族の女が身につけるものではないか?レースだけでは乳首が丸見えなんだが、コレはこういうモノなのか、特注なのか悩むところだ。
 俺の引き攣った顔を目の前にしながら、ルーファスは笑顔のまま言った。

「さあ、まずは腫れてしまった乳首に軟膏を塗りましょう」


 


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