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第十二話-1

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 いつからか、フレデリックの青い瞳に見つめられると、落ち着かない気持ちになった。

 俺達は家族間のことから、昨日の晩餐のことや今日見た夢とか、そんなことまでいろいろ話す間柄だった。友達よりも家族に近く、しかし家族よりもずっと子供らしい秘密も共有していた。

 秘密基地に使っていた領地内の森の洞窟は二人だけのものだったし、たまに湖で魚を釣ったり、暑い日は水浴びしたりして遊んだ。妹とはこういう遊びは出来なかったから、同い年のフレデリックがいて良かったとずっと思っていた。

 フレデリックにはほとんど隠し事が出来ず何もかもを話してしまう事を、さして疑問にも思わないでいたのを今になって不思議に思う。


 俺が初めて夢精した日、メイドが執事を呼んで、そのあと丁寧に男の身体についての説明を受けた。

 下着を濡らすネバネバした精液の感触が気持ち悪くてずっとショックを受けていた俺は、その事も包み隠さずフレデリックに相談してしまった。
 あの時俺達は11歳で、まだまだ子供だった。

 剣の腕も上がってきて俺の身体がようやく年齢なりに育ってきた頃だ。身体の成長と共にそんな事になって、俺は酷く混乱していた。

 しかしフレデリックはこれに関して先輩だったようで、既に知識を持っていた。
 執事と同じく性欲についての話を一通りして、俺を落ち着かせた。内容的には執事とほとんど変わらない事を話したはずなのに、俺の心にはスッとフレデリックの言葉が入ってきた。

『定期的に自慰をするんだ。そうすれば寝ているうちに出したりしなくなる』
『フレッドもしてるのか』
『んー……俺は、そうだな……たまにな』

 困ったように笑うフレデリックに、余計な事を聞いてしまったと俺は焦った。

 でもフレデリックは青い瞳でひたと俺を見つめて、囁いた。
 『自慰のやり方わかるか?』と。
 その頃既に貴族令嬢達を騒がすフレデリックの微笑みには、動揺していた俺も魅了された。

 フレデリックは俺の部屋のソファで、俺を背後から抱き締めながら『自慰』の仕方を教えてくれた。

 俺の手に、フレデリックの手が重なる。
 剥き出しになったペニスを擦り上げる手が心地良くて、しかも真っ昼間で窓からの光に照らされながら、淫靡な自慰に耽った。

 普通だったら拒否してもおかしくない状況だったのに、青い瞳に見つめられて俺は自分から服を脱いだんだ。
 フレデリックが被せてくれたハンカチの中に精液を吐き出し、そのまま覗き込んできた青色にジッと見つめられる。

『ウォルフハルド。……誰に教わったのかだけ、忘れよう?』
『ぁ……え?』
んだ。俺が元に戻すまで、な』

 金属を軽く擦り合わせるような音がして、頭が一瞬痛んだ。


 ――その後は、和やかな茶会がジラール家で開かれて、俺は日暮れまでフレデリックと遊びいつも通り別れた。
 その時は疑問など何ひとつ、持たなかった。







 王宮からの呼び出しは、遠征授業から戻ると既にきていた。

 家から持たされている緊急連絡用の魔道具を使い父に連絡を取ると、すぐに父とアデラが王都のタウンハウスへ転移してきた。
 父の白魔術の能力は俺と並ぶほどなので、二人分の転移などものともしない。本当は母も連れてきたかったようだが、今回はやめておいたらしい。
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