上 下
21 / 156
第一章 幼女エルフの偏屈ルーコ

第20話 お姉ちゃんへの隠し事と大きな違和感

しおりを挟む

 姉との真剣勝負から一月、私はあの魔術の改善点を探る一方で、少しずつ森の外に出るための下見の準備を進めていた。

「うーん……やっぱりお姉ちゃんには内緒にしておかないとまずいよね……」

 書庫の中で一人、うんうんと唸りながら考えを巡らせる。

 いくら下見でその日の内に戻るつもりであっても、森の外に向かおうとしている事が姉に知られれば、絶対に止められるだろう。

あの模擬戦以降、一緒に練習する頻度は減ったから下見をする機会はあるけど、万が一、外に出ようとしている事がお姉さまに知られれば、今まで以上に私から目を離さなくなる……。

 そうなってしまえば下見どころの話ではなくなってしまい、身動きが取れなくなってしまう。

「……それに問題はお姉ちゃんの事だけじゃない。外に出るって事はあの人を惨殺した魔物と鉢合わせるかもしれない」

 今まで何度も他のエルフ達の狩りに同行して魔物を倒してきたが、そこまで手に負えないという魔物には出会わなかった。

 もちろん強いと思う魔物がいなかったわけではなく、何度も危ない目にあったり、苦戦したりはしていたのだが、それは練習のために戦わざる負えなかったからで、逃げる事に専念すれば容易に逃げられた筈だ。

「私はあの人の実力を全部知ってたわけじゃないけど、少なくとも狩りに出ていたエルフ達よりもずっと強かった……」

 当時、あの人がこの集落で一、二を争う使い手だと言われていた事に間違いはない。

 今の姉や長老みたいな規格外の強さとは言わないけど、それでも強かったのは確かだ。

 仮に油断してその辺の魔物に不意打ちを受けたとしても、あの人なら充分に対処出来ただろう。

 そんなあの人が惨殺されたという事はそれだけ強い魔物が確実に存在するという事に他ならない。

「今の私の実力があの人と比べてどうなのかはわからない……でも逃げる事に関してはたぶん私の方がまさってる」

 私との練習では教えなかっただけであの人も強化魔法は使えたと思う。

 だからその点では私とあの人は同じだ。

 けれど、私には姉の魔法から逃れるために編み出した移動方法がある。

 あれを使って逃げる事に専念すれば、たとえ姉からでも逃げる自信がある。

「だから最悪その魔物と出くわしても大丈夫だとして……決行は次の休みの時、準備もあまり大荷物だと気付かれるから最低限で……」

 問題を整理し、頭の中で下見に必要なものを吟味していく。

日帰りとはいえ、万が一に備えて水や保存食を少しは持っていくべきだけど……。

 当日、姉には一日書庫に籠るからと言えばお昼のためと水や食料を持っていっても不自然には思われないだろう。

 ただその場合だと姉が様子を覗きにきたり、お昼を持ってくると言い出すかもしれない。

「……まあ、それは理由をつけて来ないように事前に説得するしかないか」

 ひとまず、大まかな方針は決まった。後は外に出るための道順を確認するために集落周辺の地形が載っている本を取り出し、目を通す。

「あの人もこれを参考にしてたけど、そこまで正確じゃないから進む方向くらいしか決められない……ん?」

 本に目を通しながら頭を悩ませていると、不意に喉の奥に何か引っ掛かったような違和感に襲われる。

なんだろう……この違和感、特におかしいところなんてないのにどうして━━

 今まで読んだ時には感じなかった違和感に思わず首を傾げ、ページを注視する。

「……あ、そっか!これ、あの人が見つかった方向と旅立った方向が逆になってるんだ」

 その後の記憶が衝撃的過ぎて正確に覚えているわけではないが、確かあの人は私が目星をつけた方向と同じところから出発した筈だ。

 にもかかわらず、あの人の死体が発見されたのは出発した方向とは反対にある狩場の近くだった。

 もちろん、魔物がそこまで死体を持ってきた可能性やあの人が出発した方向を私が記憶違いしていた可能性もあるが、どちらも可能性としては低い。

 わざわざ魔物が真反対にある狩場まで死体を運ぶと思えないし、記憶違いにしても外に向かう分かりやすい道はそこだけ。他にも行けない事はないが、敢えて分かりづらい道は選ばないだろう。

「かといって死体を持ち帰ったエルフが嘘を言うわけもないし……うーん……」

 当時は疑問にも思わなかったが、よくよく考えてみればあの人の死には色々不自然な点が多い気がする。

……ここまでくると前に私が立てた推測も間違いだらけだったかもしれない。

 状況の不自然さを考えるとあの人が魔物から逃げた末に力尽きたのではなく、あの場所に死体を運んだという方がしっくりくる。

「っ……!」

 そこに考えが行き着いた瞬間、背筋に冷たいものが落ちたような感覚が走り、思わず持っていた本を取り落としそうになった。

 もし、この推測が正しいとしたら誰かがあの人の死に関わっているという事になる。

 あの死体の有り様からして、その誰かがあの人を殺害したとまでは言わない。しかし、発見された状況と見つけたエルフの話を鑑みれば誰かが死体を運んだという可能性は大いにあり得る。

……もう一つ、可能性としては私達と同じような知能を持った魔物がいるっていうのだけど……それはないだろうし、あったとしてもわざわざ死体を運ぶ意味がないからね。

 そんなほとんど有り得ない可能性よりは第三者が介在していると思った方がいいだろう。

 そうなるとその第三者が誰かという話になるのだが……。

「…………これ以上は考えても仕方ないか。ここで悩んでも答えが出るわけでもないし、もしかしたら私の思い過ごしかもしれないしね」

 他に誰もいない静まりかえった書庫の中に私の独り言がやたらと大きく響いた。


 一通り計画を立て終え、後は直接準備を進めるだけになったところで、参考にしていた本をしまい、軽く掃除してから書庫を後にした。

「さてと、とりあえず今日出来る事はやったし、後は前日に持っていくものを用意するだけだね」

 軽く首を解して肩を回してから伸びをする。

 一先ず予定していた下調べは終わったが、まだ日が高く、家に帰るにもまだ早い。

「思ってたよりも早く終わったけど、どうしよう……」

 普段なら本を読んで過ごすところだけど、掃除して出てきた手前、戻るのも気が進まない。

「うーん……せっかくだから一人で練習でもしようかな」

 休みとはいえ、他にする事もないし、外に向かう以上は少しでも腕を上げておくに越した事はないだろう。

「……そうと決まれば早速あそこに行こっと」

 少し大きな声でそう呟いてから村の外れにあるいつもの空き地に足を運んだ私は、周りに誰の気配もないことを確認してから練習に取り掛かった。

「まずは魔力のある内に……」

 強化魔法を発動させて意識を集中、同時に魔法を発動させようと試みる。

落ち着いて……強化魔法を維持したまま、魔法を……っ!

 魔法を発動させようとした瞬間、強化魔法に回していた魔力の制御が効かなくなり、さらには使おうしていた魔法の制御まで儘ならなくなってしまった。

「っ……やっぱり無理か」

 強化魔法とその他の魔法の併用、これは自分が出来ない側だと気付いてからも挑戦はしていた。

 けれど何度挑戦してみても一向に出来る気配がせず、その上、魔力に余裕がある時でないと反動を抑えきれないため、おいそれと練習も出来ない。

「……こればかりは仕方ないね。今は出来る事を伸ばしていくしかない」

 併用が出来ればやれる事の幅が大きく広がるのだが、無い物ねだりをしてもしょうがない。出来ない事は工夫してどうにかする。

「〝命の原点、理を変える力、全てを絞りかき集める……先はいらない、今ほしい、灯火を燃やせ、賭け進め〟━━」

 全身の魔力を感じながら詠唱と共に集束させ、圧縮。後は解放するだけで『魔力集点コングニッション』が発動出来る状態で止める。

詠唱の速度は上がった……でもやっぱりまだ実戦じゃ使えない。

 いくら詠唱が速くなっても、集中力が必要で動けないという点は改善できていないし、使用時の意識の遅れについてもまだ解決法は思いついていなかった。

「ふぅ……本当なら使いながら改善していきたいけど、他の魔法も練習したいからここまでかな」

 この魔術は全開で使うともちろん魔力切れを起こして倒れるのだが、集束させる魔力の量を抑えてもごっそり削られ、なおかつ効果も大した事がないという欠陥も抱えている。

 そのためこの魔術の練習をするとなると必然的に他の魔法の練習が出来なくなってしまう。

一応、私もエルフだから魔力は多少なりとも多い筈なんだけど……。

 飛び抜けているとは言わないが、私も平均くらいの魔力量はある。

 種族的に魔力量の平均値が高いエルフの中で平均というのは他に比べて多いという事だ。

 それなのに姉と戦っているとすぐに魔力が尽きるし、私の魔力量ではおいそれと使えない規模の魔法が必要になってくる。

まあ、それは私が……というよりはお姉さまの魔力量が異常なんだろうけどね。

 他を知らないのでなんとも言えないが、姉は少なくともこの集落の中では飛び抜けた魔力量を持っているため、そこに差が出てくるのは仕方ないのかもしれない。

「それを考えると、やっぱり防御よりも回避に専念するのが私にはあってる気がする……」

 魔力量に差がある以上、姉の魔法を防御魔法で防ぎ続ければ私が先に削りきられてしまうので、防ぐよりも避ける方が正しい。

 もちろん、回避し続ける事にも魔力は多大に削られるだろうけど、こちらの方がまだ反撃する機会もあると思う。

「……とりあえずお姉さまの魔法を想定して━━〝水よ、礫となりて、撃ち放て〟」

 右手を上に掲げて詠唱し、上空に水の塊を生成する。

後はこれにもう少し魔力を込めてから自分でも分からないよう無差別に……。

 時間を掛けて水の塊に魔力を込めて姉の魔法に近い威力を再現しつつ、放った後、すぐに強化魔法を発動出来るように準備する。

━━『水の礫アキュレット

 大きさがある程度になったところで呪文と共に水の塊を解放し、威力と速度を持った魔法の雨を無差別に降らせる。

「まだお姉さまのには及ばないけど、練習ならこれくらいで……!」

 すぐさま強化魔法を発動させ、最小限の動きで降り注ぐ水の礫を避け続ける。

「まずっ……!?」

 順調に魔法をかわしていたその時、避けた拍子に礫の一つが直撃しそうになった。

「っ……!」

 その場から大きく飛び退き、直撃する寸前のところでなんとか避ける事には成功したものの、追撃のような形でさらに礫が降り注ぐ。

「わっ、とっ!?」

 体勢が崩れたまま避けた事で足がもつれてしまい、さらに飛んできた礫を地面を転がって避ける羽目になってしまった。

 ごろごろと空き地の隅まで転がり、魔法の効果範囲外に出て水の塊がなくなるまでやり過ごす。

「ぅ……どうにか避けられたけど、泥だらけになっちゃった」

 ぎりぎりまで追い込まないと練習の意味がないと思ってたけど、まさか自分の魔法でここまでになるとは……。

「うぺっ……うぅ……口の中がじゃりじゃりする~……」

 立ち上がって泥を払い、転がった拍子に口に入った砂利を吐き出した。

 このやり方で練習をするようになったのは一月前の姉との模擬戦以降で、まだ数回しか出来ておらず、今みたいに避けきれなくなる事が多々あった。

「……今日みたいにごろごろ転がって避けたのは初めてだったけど、毎回かわしきれてない……頑張らないと」

 自分ので撃って自分で避けるという事で負担が掛かっているものの、威力や速さ自体は姉の魔法に及んでいない。

 つまり、ここで自分の魔法を難なくかわせるようにならなければ、姉の魔法を避けながら反撃するなんて不可能だという事だ。

「……よし、もう一回、今度は全部避けきる」

 結局、その日は、時間を掛けて『水の礫』を生成し、避け、失敗したらもう一度、という練習を日が暮れるまで繰り返し、泥だらけになりがら帰路に着く事になるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます

兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

処理中です...