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1章 チュートリアル
5話 チンピラに絡まれたときの対処法
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「知ってるか?夜中の悪魔の噂」
「え、なにそれ」
「2週間くらい前から、夜になると現れる冒険者の話だ。凄い数の魔物を連れて森の中に入っていくらしい。時々白い服の人を連れてるって話もある」
「怖。魔物を連れてるって、本物の悪魔なんじゃね?」
「いや、ほとんどいないけどこの世には『テイマー』という職業があって、魔物を手懐けさせられる。でも…」
「でも?」
「テイマーっていう職業はいい噂がないんだ。もともと魔王の作り出した魔物を手懐けるっていう行為自体気味が悪いというか、得体が知れない気持ち悪さというか…とにかくいい印象は無いんだ。それに、その冒険者、昼間に見かけたやつが一人もいないらしい」
「は?てことは最初っから夜中の魔物と戦ってたってことか?無謀すぎだろ」
「まあ、これはたまたま見かけたやつがいなかっただけってこともあるかもしれんが。だからその冒険者は、魔王が何かしらの目的のために送り込んできた悪魔じゃないかって噂がたったんだよ」
「まじかよ。俺もう夜中に外歩けねぇよ」
「わざわざ夜中に歩かなくてもいいだろ」
*
最近、巷で悪魔の噂をよく聞く。カルミアが。昼間俺の代わりに食料の買い出しに行ってくれているのだが、その時に男二人が話しているのを聞いたらしい。
「え、どうしよう。俺もう夜中に外歩けないじゃん」
転移した時と服装を一新したトウジが軽口を叩く。好きな色である黒をベースにした、動きやすく攻撃もそれなりに防いでくれる。
「いや、これどう考えても貴方のことでしょ」
カルミアが冷たい目を向けてくる。
「…このまま変な噂流しっぱなしにしてていいの?」
「まぁ、いつから流れ出したのか知らないけど、今のところ手を出してくるやつはいないし、チンピラとかに襲われにくいしむしろ好都合じゃない?」
「そんなこと言って。いつ襲われるかわかんないよ。面白半分で近づいて来られて一人で対処できる?」
「失敬な。イスで魔物をタコ殴りにしてた初日とは違うぞ。ちゃんと剣も手に入れて、毎夜毎夜森の魔物と戦ってるから。」
そんなトウジの現在のレベルは34。最大は無いが、大体の冒険者が50後半で冒険者を辞め、高くても70後半程度らしい。昼夜問わず経験値が入ってくるのだ。4週間もあればこんなものだ。テイマー最高。初日に凄い凄い言っていた熊も、手間取ることなく倒すことができるようになった。ちなみにイスはカルミアが気に入ったのであげた。
「スキルも順調に手に入ってるし、お金も結構貯まった」
この4週間でお金は70万ギルほど貯まった。こちらも昼夜問わず増える素材だが意外と高値で売れる。スキルの数が大分増えた。重要なものは、素人剣士(筋力、防御力微増加)というスキル。あるとないとでは大違いだ。最初は両手で遠心力を使って振り回していた片手用直剣が、このスキルを手に入れるとあら不思議。ぎこちないが片手で持てるようになった。
他にも素人解体士やら植物マニアやら沢山あるが、ここでの説明はご割愛。
「そういえば、話変わるけど、」
「何?」
「この前、剣士のスキル手に入れたんだけど、剣士ってテイマーとは別の職業のはずなのに何で手にはいったんだろう」
「スキル自体は一定の状況を満たせば手に入るんだけど、自分の職業と違うものは効果が弱くなったり、一部無くなったりするのよ」
「そうなのか。あ、もう一つ。ずっと気になってたんだけど、カルミアが俺を召喚したんだよね」
「うん。そうだけど」
「召喚ってどんな感じなの?俺、召喚されますか?みたいなこと聞かれたんだけど、拒否しても無視し続けても聞かれ続けたし」
「えっと、他世界からの召喚は対象の状況で変わるんだ。話せる状況なら選択肢が設けられるけど、ほとんどは外に出てる時に何かしらの事故でなるべく不自然さがなくなるよう手を加えられるんだ」
なるほど。俺が引きこもりだからああいう形になったのか。まあ、トラックに轢き殺されるよりは全然いいや。
「でも、選択肢がある状況で拒否や無視をすると、召喚対象が選び直されるはずなんだけど…」
「え、てことは…」
「多分、偶然選ばれ続けたってことかな」
「運が良いのか悪いのか…多分悪いな」
何度も選ばれた俺も、その偶然のせいで無能扱いされたこの子も。
*
「お、出てきた。ねぇねぇちょっとそこの人、あんたが噂の悪魔さん?」
夜になり宿を出ると、そこにはガラの悪いチンピラが2人待ち構えていた。
「昼話したと思ったら…タイムリー過ぎるだろ」
「何言ってんだ?とにかくちょっとツラ貸してくんない?ボコボコにして悪魔を倒したって有名になりたいんだよね」
ニコッと笑い、その場を立ち去る。心臓バックバクだけど震えを悟られないよう注意しながら歩く。
ちらと後ろを見てみると、二人が見つめ合い、ニヤッと笑うと、こちらに向かって走ってきた。
(あ、殺される)
そう思った瞬間、今まで出したことのないスピードで逃げた。
「はっや…じゃなくて、逃げるなよ!」
(逃げるよ!追いかけてくるな!)
走るのに必死で声が出ない。後ろから火の玉が飛んでき始めた。
慌てて路地裏に逃げ込んだ。
行き止まりだった。文字通りの袋小路だ。足音が近づいてくる。
(戦うしかないか…)
と思い直剣を構えると、目の前に赤い光が現れた。
*
「残念でした。そこは行き止まりだ。大人しく殴られろ!…ぎゃぁあああ!」
チンピラ二人が勢いよく小路に入ると、いきなり目の前にウルフが飛びかかってきた。
チンピラ一号(ずっと喋ってた方)が腕を噛まれ、悶えていると、今度はスライムが足から全身を飲み込もうと這い寄ってくる。チンピラ二号(火球を飛ばしてきた方)は腰を抜かしたが、力を振り絞り、一号をスライムから引っ張り出し、一目散に逃げていった。
「危なかった。めっちゃ焦ったぁ…」
「それはこっちのセリフよ!昼にあんなに胸張ってたのに、結局私がいなかったら今頃どうなってたか…」
「助かったよ。本当にありがとう」
チンピラが来る直前、カルミアがトウジを召喚で別の場所に移動させ、トウジのいた場所にウルフとスライムを召喚したのだ。…結構チートな気がする。一応欠点はあるらしいが。
本人曰く、
「こう見えても私、王国で2番目に凄い召喚士なんですよ。この速さで遠距離に召喚できる人なんてほとんど居ませんから」
だそうだ。
気を取り直して、今日も狩りに行こう。
「え、なにそれ」
「2週間くらい前から、夜になると現れる冒険者の話だ。凄い数の魔物を連れて森の中に入っていくらしい。時々白い服の人を連れてるって話もある」
「怖。魔物を連れてるって、本物の悪魔なんじゃね?」
「いや、ほとんどいないけどこの世には『テイマー』という職業があって、魔物を手懐けさせられる。でも…」
「でも?」
「テイマーっていう職業はいい噂がないんだ。もともと魔王の作り出した魔物を手懐けるっていう行為自体気味が悪いというか、得体が知れない気持ち悪さというか…とにかくいい印象は無いんだ。それに、その冒険者、昼間に見かけたやつが一人もいないらしい」
「は?てことは最初っから夜中の魔物と戦ってたってことか?無謀すぎだろ」
「まあ、これはたまたま見かけたやつがいなかっただけってこともあるかもしれんが。だからその冒険者は、魔王が何かしらの目的のために送り込んできた悪魔じゃないかって噂がたったんだよ」
「まじかよ。俺もう夜中に外歩けねぇよ」
「わざわざ夜中に歩かなくてもいいだろ」
*
最近、巷で悪魔の噂をよく聞く。カルミアが。昼間俺の代わりに食料の買い出しに行ってくれているのだが、その時に男二人が話しているのを聞いたらしい。
「え、どうしよう。俺もう夜中に外歩けないじゃん」
転移した時と服装を一新したトウジが軽口を叩く。好きな色である黒をベースにした、動きやすく攻撃もそれなりに防いでくれる。
「いや、これどう考えても貴方のことでしょ」
カルミアが冷たい目を向けてくる。
「…このまま変な噂流しっぱなしにしてていいの?」
「まぁ、いつから流れ出したのか知らないけど、今のところ手を出してくるやつはいないし、チンピラとかに襲われにくいしむしろ好都合じゃない?」
「そんなこと言って。いつ襲われるかわかんないよ。面白半分で近づいて来られて一人で対処できる?」
「失敬な。イスで魔物をタコ殴りにしてた初日とは違うぞ。ちゃんと剣も手に入れて、毎夜毎夜森の魔物と戦ってるから。」
そんなトウジの現在のレベルは34。最大は無いが、大体の冒険者が50後半で冒険者を辞め、高くても70後半程度らしい。昼夜問わず経験値が入ってくるのだ。4週間もあればこんなものだ。テイマー最高。初日に凄い凄い言っていた熊も、手間取ることなく倒すことができるようになった。ちなみにイスはカルミアが気に入ったのであげた。
「スキルも順調に手に入ってるし、お金も結構貯まった」
この4週間でお金は70万ギルほど貯まった。こちらも昼夜問わず増える素材だが意外と高値で売れる。スキルの数が大分増えた。重要なものは、素人剣士(筋力、防御力微増加)というスキル。あるとないとでは大違いだ。最初は両手で遠心力を使って振り回していた片手用直剣が、このスキルを手に入れるとあら不思議。ぎこちないが片手で持てるようになった。
他にも素人解体士やら植物マニアやら沢山あるが、ここでの説明はご割愛。
「そういえば、話変わるけど、」
「何?」
「この前、剣士のスキル手に入れたんだけど、剣士ってテイマーとは別の職業のはずなのに何で手にはいったんだろう」
「スキル自体は一定の状況を満たせば手に入るんだけど、自分の職業と違うものは効果が弱くなったり、一部無くなったりするのよ」
「そうなのか。あ、もう一つ。ずっと気になってたんだけど、カルミアが俺を召喚したんだよね」
「うん。そうだけど」
「召喚ってどんな感じなの?俺、召喚されますか?みたいなこと聞かれたんだけど、拒否しても無視し続けても聞かれ続けたし」
「えっと、他世界からの召喚は対象の状況で変わるんだ。話せる状況なら選択肢が設けられるけど、ほとんどは外に出てる時に何かしらの事故でなるべく不自然さがなくなるよう手を加えられるんだ」
なるほど。俺が引きこもりだからああいう形になったのか。まあ、トラックに轢き殺されるよりは全然いいや。
「でも、選択肢がある状況で拒否や無視をすると、召喚対象が選び直されるはずなんだけど…」
「え、てことは…」
「多分、偶然選ばれ続けたってことかな」
「運が良いのか悪いのか…多分悪いな」
何度も選ばれた俺も、その偶然のせいで無能扱いされたこの子も。
*
「お、出てきた。ねぇねぇちょっとそこの人、あんたが噂の悪魔さん?」
夜になり宿を出ると、そこにはガラの悪いチンピラが2人待ち構えていた。
「昼話したと思ったら…タイムリー過ぎるだろ」
「何言ってんだ?とにかくちょっとツラ貸してくんない?ボコボコにして悪魔を倒したって有名になりたいんだよね」
ニコッと笑い、その場を立ち去る。心臓バックバクだけど震えを悟られないよう注意しながら歩く。
ちらと後ろを見てみると、二人が見つめ合い、ニヤッと笑うと、こちらに向かって走ってきた。
(あ、殺される)
そう思った瞬間、今まで出したことのないスピードで逃げた。
「はっや…じゃなくて、逃げるなよ!」
(逃げるよ!追いかけてくるな!)
走るのに必死で声が出ない。後ろから火の玉が飛んでき始めた。
慌てて路地裏に逃げ込んだ。
行き止まりだった。文字通りの袋小路だ。足音が近づいてくる。
(戦うしかないか…)
と思い直剣を構えると、目の前に赤い光が現れた。
*
「残念でした。そこは行き止まりだ。大人しく殴られろ!…ぎゃぁあああ!」
チンピラ二人が勢いよく小路に入ると、いきなり目の前にウルフが飛びかかってきた。
チンピラ一号(ずっと喋ってた方)が腕を噛まれ、悶えていると、今度はスライムが足から全身を飲み込もうと這い寄ってくる。チンピラ二号(火球を飛ばしてきた方)は腰を抜かしたが、力を振り絞り、一号をスライムから引っ張り出し、一目散に逃げていった。
「危なかった。めっちゃ焦ったぁ…」
「それはこっちのセリフよ!昼にあんなに胸張ってたのに、結局私がいなかったら今頃どうなってたか…」
「助かったよ。本当にありがとう」
チンピラが来る直前、カルミアがトウジを召喚で別の場所に移動させ、トウジのいた場所にウルフとスライムを召喚したのだ。…結構チートな気がする。一応欠点はあるらしいが。
本人曰く、
「こう見えても私、王国で2番目に凄い召喚士なんですよ。この速さで遠距離に召喚できる人なんてほとんど居ませんから」
だそうだ。
気を取り直して、今日も狩りに行こう。
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