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18.蛇足:逆ハーレムルート
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現実だとこうなると告げられて、愕然としているメアリーにもう1つ追い打ちをかけておきましょうか。
恐らく彼女が本当に狙っていたルートについて。そう、全攻略対象を落とす逆ハーレムルートですわ。
「メアリーさん、あなた、逆ハーレム狙っていらした?」
わたくしの問いにメアリーの体が一瞬強張ります。図星を指されたゆえの反応と判断してよろしいでしょうね。
「それは無理ですわよ。仮に逆ハーレムエンドを迎えたとしても、その後は続きませんわ。まず絶対に王太子妃にはなれませんもの」
ええ、有り得ませんわね。
「なんでよ」
メアリーは不満いっぱいの表情でわたくしを睨みつけます。色々ダメージを受けているはずなのにまだわたくしを睨む精神力がございますのね。ますます欲しい強かな人材ですわ。
「理由は2つ。1つは身分です。王太子妃となれるのは我が国では5大公爵家令嬢もしくは3代以内に王族の降嫁があった侯爵家と定められておりますもの」
これは暗黙の了解ではなく、明確に法律に定められております。ですから、たとえ王族であってもこれを覆すことは出来ません。封建社会といいながら実際には立憲君主国家でございますからね。王であっても法の制約は受けるのです。
「そしてもう1つは、誰の子供を宿すか判らない女を王妃には出来ないからですわ」
王家も貴族も血統を重んじますから、これは当然のことですわね。
「誰の子供って…」
メアリーは呆然としています。そんな理由があるとは思っていなかったようですわ。あら、意外と晩生なのかしら?
けれど、逆ハーレムともなれば全員と肉体関係を持つでしょう。現状は清い関係だったとしてもずっとそれが続くわけございませんし。それに逆ハーレムエンドの距離感であれば、王太子以外とはプラトニックな関係だったとしてもそれを信じる者はいないでしょうから。
真実はどうあれ、そのような疑いを持たれる女性を国母たる王妃には出来ませんもの。だから、王太子と結ばれるならば妃ではなく愛妾とならざるを得ません。
そして我が国では王若しくは王太子の愛妾になるには条件がございます。それは結婚していること。これは愛妾が妊娠しても王家の子供ではなく夫の子供であるとするためですわね。愛妾の子供に王位継承権を持たせないための措置です。
恐らくは逆ハーレムの中で最も身分が低くなるトマスもしくはヘンリーの妻となる可能性が高いでしょう。彼らの卒業後の職次第ですけれど、トマスが騎士となればトマスの妻に、ヘンリーが王宮の文官となればヘンリーの妻に。
どちらもその職につけた場合は出自の身分が低いヘンリーでしょう。養父となる可能性のあるものに権力を持たせないために身分が低いほうが良いという判断ですわ。
ああ、彼らはヒロインを娶ることの報酬として一代限りの男爵位か准男爵位を与えられることになるのでしょうね。流石に王家の胤を平民として育てるのも問題があると思われますので。
そういった、夢の逆ハーレムエンドを迎えたのに彼女が夢見る幸せとは程遠い現実にメアリーが愕然とし、かなり意気消沈しています。
でも、ごめんなさいね、メアリー。あなたが夢想を実現するのを阻止するために止めと参りますわ。
「メアリーさん、あなたが殿下ルートもしくは逆ハーレムルートを諦めていないのは行動から明らかですわ。ですが、そろそろご自身の、そしてご実家の立場を考えませんと、取り返しのつかないことになりましてよ」
実際、メアリーに纏わりつかれて殿下はかなりご立腹でいらっしゃいます。無視を貫かれておりますが、その分メアリーを直接咎めることも出来ず、それがストレスとなっていらっしゃるのです。
そして、身分を無視して振舞うメアリーの言動は殿下につく影を通して国政の上層部に報告されております。彼女の言動は身分社会の根幹を揺るがしかねないものとして捉えられているのです。
たかが男爵家の庶子の行動とはいえ、下位貴族や平民の男子生徒の中には彼女に誑かされている者もいて、彼らもまた身分を蔑ろにするのです。特にわたくしをはじめとする上位貴族令嬢に対してそれが顕著ですわね。これはメアリーがわたくしたちに冤罪を被せようとしているからでもありますが。
「これ以上殿下にまとわりつくようであれば、王家が動きますわ。恐らく男爵家は爵位と領地の剥奪、つまり貴族ではなく平民になります。そのうえで王都から追放され永久出入り禁止という措置が取られるはずですわ」
ゲームのバッドエンドに比べれば遥かに軽い処分ではありますけれどね。けれど、貴族としては屈辱的な重罰でもあります。
メアリーは自分の行動がそれほど咎められるようなものとは思っていなかったようで青ざめております。それでも弱々しい声で『そんな大げさな……』と反論できる当たりやはりかなりの精神力の持ち主ですわね。
「大げさではありませんわよ。たとえ下位貴族の庶子の言動だとしても、あなたは散々身分制度を否定する言動を取っておりますもの。それは国と王家を支える貴族としてあるまじき行動ですし、国の根幹を揺るがす者と危険視されても仕方のないことですわ」
現状はまだ常識のない平民の戯言と大目に見られているだけです。今ならまだ取り返しがつきますのよ。だから、もうこれで仕舞いにいたしましょう。
恐らく彼女が本当に狙っていたルートについて。そう、全攻略対象を落とす逆ハーレムルートですわ。
「メアリーさん、あなた、逆ハーレム狙っていらした?」
わたくしの問いにメアリーの体が一瞬強張ります。図星を指されたゆえの反応と判断してよろしいでしょうね。
「それは無理ですわよ。仮に逆ハーレムエンドを迎えたとしても、その後は続きませんわ。まず絶対に王太子妃にはなれませんもの」
ええ、有り得ませんわね。
「なんでよ」
メアリーは不満いっぱいの表情でわたくしを睨みつけます。色々ダメージを受けているはずなのにまだわたくしを睨む精神力がございますのね。ますます欲しい強かな人材ですわ。
「理由は2つ。1つは身分です。王太子妃となれるのは我が国では5大公爵家令嬢もしくは3代以内に王族の降嫁があった侯爵家と定められておりますもの」
これは暗黙の了解ではなく、明確に法律に定められております。ですから、たとえ王族であってもこれを覆すことは出来ません。封建社会といいながら実際には立憲君主国家でございますからね。王であっても法の制約は受けるのです。
「そしてもう1つは、誰の子供を宿すか判らない女を王妃には出来ないからですわ」
王家も貴族も血統を重んじますから、これは当然のことですわね。
「誰の子供って…」
メアリーは呆然としています。そんな理由があるとは思っていなかったようですわ。あら、意外と晩生なのかしら?
けれど、逆ハーレムともなれば全員と肉体関係を持つでしょう。現状は清い関係だったとしてもずっとそれが続くわけございませんし。それに逆ハーレムエンドの距離感であれば、王太子以外とはプラトニックな関係だったとしてもそれを信じる者はいないでしょうから。
真実はどうあれ、そのような疑いを持たれる女性を国母たる王妃には出来ませんもの。だから、王太子と結ばれるならば妃ではなく愛妾とならざるを得ません。
そして我が国では王若しくは王太子の愛妾になるには条件がございます。それは結婚していること。これは愛妾が妊娠しても王家の子供ではなく夫の子供であるとするためですわね。愛妾の子供に王位継承権を持たせないための措置です。
恐らくは逆ハーレムの中で最も身分が低くなるトマスもしくはヘンリーの妻となる可能性が高いでしょう。彼らの卒業後の職次第ですけれど、トマスが騎士となればトマスの妻に、ヘンリーが王宮の文官となればヘンリーの妻に。
どちらもその職につけた場合は出自の身分が低いヘンリーでしょう。養父となる可能性のあるものに権力を持たせないために身分が低いほうが良いという判断ですわ。
ああ、彼らはヒロインを娶ることの報酬として一代限りの男爵位か准男爵位を与えられることになるのでしょうね。流石に王家の胤を平民として育てるのも問題があると思われますので。
そういった、夢の逆ハーレムエンドを迎えたのに彼女が夢見る幸せとは程遠い現実にメアリーが愕然とし、かなり意気消沈しています。
でも、ごめんなさいね、メアリー。あなたが夢想を実現するのを阻止するために止めと参りますわ。
「メアリーさん、あなたが殿下ルートもしくは逆ハーレムルートを諦めていないのは行動から明らかですわ。ですが、そろそろご自身の、そしてご実家の立場を考えませんと、取り返しのつかないことになりましてよ」
実際、メアリーに纏わりつかれて殿下はかなりご立腹でいらっしゃいます。無視を貫かれておりますが、その分メアリーを直接咎めることも出来ず、それがストレスとなっていらっしゃるのです。
そして、身分を無視して振舞うメアリーの言動は殿下につく影を通して国政の上層部に報告されております。彼女の言動は身分社会の根幹を揺るがしかねないものとして捉えられているのです。
たかが男爵家の庶子の行動とはいえ、下位貴族や平民の男子生徒の中には彼女に誑かされている者もいて、彼らもまた身分を蔑ろにするのです。特にわたくしをはじめとする上位貴族令嬢に対してそれが顕著ですわね。これはメアリーがわたくしたちに冤罪を被せようとしているからでもありますが。
「これ以上殿下にまとわりつくようであれば、王家が動きますわ。恐らく男爵家は爵位と領地の剥奪、つまり貴族ではなく平民になります。そのうえで王都から追放され永久出入り禁止という措置が取られるはずですわ」
ゲームのバッドエンドに比べれば遥かに軽い処分ではありますけれどね。けれど、貴族としては屈辱的な重罰でもあります。
メアリーは自分の行動がそれほど咎められるようなものとは思っていなかったようで青ざめております。それでも弱々しい声で『そんな大げさな……』と反論できる当たりやはりかなりの精神力の持ち主ですわね。
「大げさではありませんわよ。たとえ下位貴族の庶子の言動だとしても、あなたは散々身分制度を否定する言動を取っておりますもの。それは国と王家を支える貴族としてあるまじき行動ですし、国の根幹を揺るがす者と危険視されても仕方のないことですわ」
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